嵐の壁外調査
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これはまだトロスト区が襲撃される前の話である。
その日、調査兵団は巨人がわんさかいるウォール・マリアに壁外調査に出ていた。
途中まで順調ではあったが、昼を過ぎた頃から雲行きが怪しくなり今まさに暴風雨の真っ只中。撤退命令は出たものの、陣形は崩れ全員は帰還できないだろうとされた。
調査兵団第二分隊隊長のマーラ・イェーガーは自分の分隊数名を引き連れ森の中を馬で走っていた。
第二分隊は三つの班に分かれ行動をしており、マーラが今指揮する班以外はどこにいるか分からない状態。
森と言うこともあり、いつ巨人が出て来るか分からない恐怖がある。
「くそ、朝はあんなに快晴だったのに!」
「嵐が来るなんて……ミケ分隊長の鼻でも分からなかったんだから、本当イレギュラーよ。この嵐は」
先頭を行くマーラの後ろを走る兵士が、そんな会話をしていた。
とりあえず森を抜けて本隊に合流しなければならない。
その時であった。
「っ、四時の方向に巨人出現!」
目をギョロっとさせた筋肉質の巨人が、マーラ達の後ろから顔を出した。
それを皮切りに、あらゆる方向から巨人が出現したのである。
「巨人に囲まれた! 分隊長!」
「このまま走る! 着いてきて!」
マーラは手綱を握り直し馬を走らせた。
「伏せて!」
巨人の手が頭上を掠める。
班員の恐怖に震えた声が聴こえた。
「分隊長! 立体機動に移りましょう!」
その声に、誰もが頷いた。しかしマーラは即座にそれを却下した。
「それは駄目! この暴風の中、立体機動なんかやったら風に流される! 巨人に殺されるオチしかない!」
風を読み、立体機動装置を自由自在に操れるというなら可能だろうがこの嵐だ。
少しの間違いが死を確実に呼ぶ。それは他の仲間の命を危険に晒すことにもつながるのだ。
「でも――」
「私はこの分隊、皆の命を預かってる。そんな死ぬ可能性の高いことをさせるわけにはいかない。とにかく信じて私の後を着いてきて!」
巨人の間を馬で駆け抜け、一列になって走った。
「アルマ!」
それは最後尾にいた子の名前だった。
嵐の音が凄まじかったが、マーラの耳には確かに聞こえたのである。
振り返ると、アルマが巨人に掴まれているのが見えた。
「ルリ、この班の指揮を一時任せる」
「えっ、分隊長!?」
すぐ後ろを走っていたルリという子にマーラはそう伝えると、馬を引き返させた。
「いやぁあああああ!!」
「アルマ!」
全速力で駆け抜けるマーラの馬は、兵団の馬の中でもトップクラスに速い。
暴風雨の中、マーラはアンカーを木に刺して立体機動に移った。
流されそうになったが、微調整を瞬時に行い風の流れと合わせアルマを捕らえる巨人の背後に回った。
(死なせるわけにはいかない!)
アンカーを今度は巨人の項に刺し、一気に加速した。
項をそぎ落とすと、巨人の手は緩みアルマが滑り落ちる。
マーラはすかさず近寄り、空中でアルマを抱えて降りた。
馬を指笛で呼ぶと、すぐさま馬は二人の許にやってきた。
「良い子、ヘクトル」
アルマを自分の後ろに乗せると、丁度アルマの馬も近くに来たので手綱を持って一緒に駆けだした。
「痛い……痛いよ……」
うわ言のように痛みを訴えるアルマ。無理もない。巨人に掴まれたのだ。
「肋骨折れてるかもしれないけど、生きていればいつか治る! 何とかなる、生きていれば……」
励ましの言葉を掛けつつ、マーラはひたすら馬を走らせた。
その日、調査兵団は巨人がわんさかいるウォール・マリアに壁外調査に出ていた。
途中まで順調ではあったが、昼を過ぎた頃から雲行きが怪しくなり今まさに暴風雨の真っ只中。撤退命令は出たものの、陣形は崩れ全員は帰還できないだろうとされた。
調査兵団第二分隊隊長のマーラ・イェーガーは自分の分隊数名を引き連れ森の中を馬で走っていた。
第二分隊は三つの班に分かれ行動をしており、マーラが今指揮する班以外はどこにいるか分からない状態。
森と言うこともあり、いつ巨人が出て来るか分からない恐怖がある。
「くそ、朝はあんなに快晴だったのに!」
「嵐が来るなんて……ミケ分隊長の鼻でも分からなかったんだから、本当イレギュラーよ。この嵐は」
先頭を行くマーラの後ろを走る兵士が、そんな会話をしていた。
とりあえず森を抜けて本隊に合流しなければならない。
その時であった。
「っ、四時の方向に巨人出現!」
目をギョロっとさせた筋肉質の巨人が、マーラ達の後ろから顔を出した。
それを皮切りに、あらゆる方向から巨人が出現したのである。
「巨人に囲まれた! 分隊長!」
「このまま走る! 着いてきて!」
マーラは手綱を握り直し馬を走らせた。
「伏せて!」
巨人の手が頭上を掠める。
班員の恐怖に震えた声が聴こえた。
「分隊長! 立体機動に移りましょう!」
その声に、誰もが頷いた。しかしマーラは即座にそれを却下した。
「それは駄目! この暴風の中、立体機動なんかやったら風に流される! 巨人に殺されるオチしかない!」
風を読み、立体機動装置を自由自在に操れるというなら可能だろうがこの嵐だ。
少しの間違いが死を確実に呼ぶ。それは他の仲間の命を危険に晒すことにもつながるのだ。
「でも――」
「私はこの分隊、皆の命を預かってる。そんな死ぬ可能性の高いことをさせるわけにはいかない。とにかく信じて私の後を着いてきて!」
巨人の間を馬で駆け抜け、一列になって走った。
「アルマ!」
それは最後尾にいた子の名前だった。
嵐の音が凄まじかったが、マーラの耳には確かに聞こえたのである。
振り返ると、アルマが巨人に掴まれているのが見えた。
「ルリ、この班の指揮を一時任せる」
「えっ、分隊長!?」
すぐ後ろを走っていたルリという子にマーラはそう伝えると、馬を引き返させた。
「いやぁあああああ!!」
「アルマ!」
全速力で駆け抜けるマーラの馬は、兵団の馬の中でもトップクラスに速い。
暴風雨の中、マーラはアンカーを木に刺して立体機動に移った。
流されそうになったが、微調整を瞬時に行い風の流れと合わせアルマを捕らえる巨人の背後に回った。
(死なせるわけにはいかない!)
アンカーを今度は巨人の項に刺し、一気に加速した。
項をそぎ落とすと、巨人の手は緩みアルマが滑り落ちる。
マーラはすかさず近寄り、空中でアルマを抱えて降りた。
馬を指笛で呼ぶと、すぐさま馬は二人の許にやってきた。
「良い子、ヘクトル」
アルマを自分の後ろに乗せると、丁度アルマの馬も近くに来たので手綱を持って一緒に駆けだした。
「痛い……痛いよ……」
うわ言のように痛みを訴えるアルマ。無理もない。巨人に掴まれたのだ。
「肋骨折れてるかもしれないけど、生きていればいつか治る! 何とかなる、生きていれば……」
励ましの言葉を掛けつつ、マーラはひたすら馬を走らせた。
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