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遊園地に行こう!
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俺の手に握られているのは、二枚の割引券。
自分の教室から少しばかり遠い8組へと、これからの展開を予想しながら足を進める。
「期待するな期待するな期待するな……」
移動中、他人に聞こえないようにしながら俺は、念仏のように唱え続ける。
それは決して頭がおかしくなったからとかではなくて。
これから会いに行く相手が、いつも俺の心を抉るからだ。
「失礼しまーす!」
教室に着くと、軽いノリで挨拶をして中に入る。
そして、窓際にある彼女の席へと向かった。
「名無しちゃん、やっほー」
そう言って声をかけると、こっちを向いて満面の笑みを浮かべながら、
「なんだ、佐助かよ」
と、まるで正反対のことをサラリと言ってのけた。
その微笑みに、ちょっとでも期待した俺が馬鹿だった!
ここまで唱えてきたのが、なんだか馬鹿馬鹿しい。
俺ってば学習してないな……。
「それで、どうかした?」
「あぁ、あのね」
手に持った券を見て、気づかれないように溜息を吐いた。
きっといい返事はもらえないだろう、こういうのには興味のない子だから。
既に期待はしてないけど、いざ断られるかと思うと悲しくなってきた。
「これ、遊園地の割引券。良かったら、明日一緒に行かない?」
来るだろう返事に身構えつつも、いつもの調子で話を切り出した。
一枚割引券を渡すと、名無しちゃんは暫くの間それを無言で見ていた。
「……私とか?二人きりでか?」
漸く口を開いたが、いい返事はもらえなさそうな感じだ。
「そ、二人きりー!」
「へぇー。……いいよ」
「だよねー……ん?今いいって言った!?いいの!?」
予想外の返事来た!!
「嫌なのか?そっちから誘ってきたくせに」
「いや、そうじゃないけど!」
嫌なわけがない。
嫌いな相手に割引券をあげるほど俺はいい人じゃないから。
それよりも、予想以上にあっさり返事がもらえたことに驚きだ。
断られると思って心の準備をしてなかったから、今きっとかなり情けない顔をしてるんだろう。
「佐助?おーい、佐助!」
「へ?あぁ、どうしたの?」
「それはこっちの台詞だ。さっきからボーっとして」
そんなにボーっとしてただろうか。だって……
「さすがに、直球ドストレートはキツイでしょ……」
「は?野球のこと考えてたのか?」
「……そういうことにしておく」
本当は違うけど、名無しちゃんがあまりにもボケるので突っ込む気がしなかった。
まぁとにかく、明日はとびきりオシャレしなきゃね!