計画
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夢子の心は驚きと喜びに満ちていた。
まさかジェドとこうして行為をするなんて……。
夢子とジェドが肌を重ねたのはこれが初めての事だった。恋人として付き合うようになってからも、二人の触れ合いはキスと抱擁くらいなものだった。
夢子はユタから来たというジェドの事を、婚前の性行為を禁じるような敬虔なクリスチャンだと考えていた。しかし、今夜の彼は随分と熱心で情熱的だった。
夢子は自分の肌に触れた。肌は所々に赤く腫れていて、そこに押しつけられたジェドの唇や指先の感触を思い出した。
荒々しく乱暴な抱き方だった。普段の彼とは別人のようだった。
力任せで身勝手な抱き方……。それでも、夢子の心は満たされていた。
ジェドが欲望をぶつける度に、夢子は自分が愛されているのだと実感した。
ジェドの長い指先、執拗な愛撫、押し付けられた唇、熱い舌先。
そんな感覚が身体の至るところに残っていて、表面にも、内側にも、全身に彼の名残りを感じた。
「良かったわ。」
夢子がそう言うと、隣で寝ていたジェドは微笑んだ。どこか悪戯じみた微笑みだった。
「本当よ。今までで1番。」夢子は本心からそう言ったが、ジェドは冗談めかして笑った。
「俺も良かったよ。今までで1番ね。」
夢子が怒った表情をすると、ジェドは目を細めた。そして夢子の髪の毛に手を伸ばした。さらさらとした黒髪がジェドの指からこぼれ落ちた。その感触を楽しむように、ジェドは夢子の頭を何度か撫でた。
「本当だよ。夢子はいつも可愛いけど、さっきは声も表情も全てが可愛くて興奮した。」
ジェドは甘く優しい声で囁いた。そして赤くなった夢子の頬に触れた。
「本当に良かった。最後に思い出が作れて……。」
「最後に?」
夢子は聞き返した。
「言ってなかったけど、俺はこの街を出るつもりなんだ。」
「それは……どうして?」
ジェドはこの街に来る前も各地を転々としていた。けれど、今は仕事も順調で、職場も私生活も何の問題も無さそうだった。
それに、自分がいるのに……。夢子はそう思った。遊びの関係では無かった。少なくとも、夢子は真剣に交際をしていた。
「前から決めてたんだ。一つのところに留まるのは俺の生き方じゃ無いからね。」
「でも、それじゃあ……私は……私はどうしたらいいの?」
ジェドは夢子を見つめた。その視線は冷静だった。まるで夢子を値踏みするかのように、彼女の言葉や表情を見ていた。
「俺と一緒に来てほしい。」
ジェドはベッドに寝そべったままで、そう言った。まるでプロポーズのような言葉だった。しかしこれがプロポーズだとしたら、もっと直接的な言葉があるはずだと夢子は思った。
跪いて、輝くダイヤモンドの指輪を捧げられる事は求めていなかった。
必要なのはただ一言の言葉だけ……。
結婚。
夢子は結婚はまだ早いと考えていた。しかし驚くことに今この瞬間は、その誓約を心の底から望んでいるのだった。
結婚をして、子育てをして、家族仲良く暮らす。そんなごく普通の幸せを望んでいた。
しかしジェドの口からその言葉は出なかった。彼はただ自分に着いて来るのを望んでいる。なんのけじめも責任も無く、夢子が側にいる事を望んでいた。ただ都合の良い相手のように。
夢子は迷った。ジェドの事は好きだ。
しかし、家や仕事や友人を捨てて、ひとりの男に着いて行く勇気は無かった。
「ごめんなさい。」
たった一言だが、この一言で全てが決まった。二人の道は別れたのだ。
「残念だけど仕方がない。」
ジェドはベッドから起き上がって、床に散らばった衣服を集め始めた。この家に来た時と同じように、白い襟付きのシャツとスラックスを身につけた。
「私たちはこれで終わり?」
「そうなるだろうね。」
ジェドの声色はいつも通り優しく穏やかなのに、どこか素っ気なく響いた。
つい一時間前には世界中の誰よりも一番近くにいたのに、今は他人のようによそよそしく、二人の間の空気は寒々としていた。
夢子の肌の上に残ったジェドの名残りも薄れつつあった。
夢子はただ離れていこうとしているジェドを見つめるだけだった。
縋り付いたり、泣いたり、そんな行動は起こせなかった。
自分がジェドを心から欲していないのだと、別れの瞬間になって気付いてしまったのだ。
その時、電話のコール音が鳴った。夢子は受話器を取った。電話は勤め先の新聞社からだった。
大事件が起こったらしい。朝刊に間に合うように、すぐに出社するようにとの命令だった。
ジェドは夢子が電話をしている様子を、じっと見つめていた。彼女の表情や、声色。
驚きと恐怖で青ざめる顔。乱れる吐息が漏れる唇。全てを見逃さないように。
夢子は受話器を置いて、不安からため息をついた。
「今すぐ会社へ来いって。また、例の事件みたい。」
「まさか、またゴースト事件?」
夢子は頷いた。
「何度も刺されたみたい。被害者は、同僚よ。受付の子……知ってるでしょう?」
ジェドは深刻そうに頷いた。驚いた表情だった。
「もちろん知ってるよ。あの金髪の……あの子が殺されたの?」
「そうみたい。」
話しながらも、夢子は衣服を身につけ、髪の毛をブラシで整えた。
ジェドは机から車のキーを取り上げた。
「車を出すよ。一緒に行こう。」
夢子は頷いた。
まさかジェドとこうして行為をするなんて……。
夢子とジェドが肌を重ねたのはこれが初めての事だった。恋人として付き合うようになってからも、二人の触れ合いはキスと抱擁くらいなものだった。
夢子はユタから来たというジェドの事を、婚前の性行為を禁じるような敬虔なクリスチャンだと考えていた。しかし、今夜の彼は随分と熱心で情熱的だった。
夢子は自分の肌に触れた。肌は所々に赤く腫れていて、そこに押しつけられたジェドの唇や指先の感触を思い出した。
荒々しく乱暴な抱き方だった。普段の彼とは別人のようだった。
力任せで身勝手な抱き方……。それでも、夢子の心は満たされていた。
ジェドが欲望をぶつける度に、夢子は自分が愛されているのだと実感した。
ジェドの長い指先、執拗な愛撫、押し付けられた唇、熱い舌先。
そんな感覚が身体の至るところに残っていて、表面にも、内側にも、全身に彼の名残りを感じた。
「良かったわ。」
夢子がそう言うと、隣で寝ていたジェドは微笑んだ。どこか悪戯じみた微笑みだった。
「本当よ。今までで1番。」夢子は本心からそう言ったが、ジェドは冗談めかして笑った。
「俺も良かったよ。今までで1番ね。」
夢子が怒った表情をすると、ジェドは目を細めた。そして夢子の髪の毛に手を伸ばした。さらさらとした黒髪がジェドの指からこぼれ落ちた。その感触を楽しむように、ジェドは夢子の頭を何度か撫でた。
「本当だよ。夢子はいつも可愛いけど、さっきは声も表情も全てが可愛くて興奮した。」
ジェドは甘く優しい声で囁いた。そして赤くなった夢子の頬に触れた。
「本当に良かった。最後に思い出が作れて……。」
「最後に?」
夢子は聞き返した。
「言ってなかったけど、俺はこの街を出るつもりなんだ。」
「それは……どうして?」
ジェドはこの街に来る前も各地を転々としていた。けれど、今は仕事も順調で、職場も私生活も何の問題も無さそうだった。
それに、自分がいるのに……。夢子はそう思った。遊びの関係では無かった。少なくとも、夢子は真剣に交際をしていた。
「前から決めてたんだ。一つのところに留まるのは俺の生き方じゃ無いからね。」
「でも、それじゃあ……私は……私はどうしたらいいの?」
ジェドは夢子を見つめた。その視線は冷静だった。まるで夢子を値踏みするかのように、彼女の言葉や表情を見ていた。
「俺と一緒に来てほしい。」
ジェドはベッドに寝そべったままで、そう言った。まるでプロポーズのような言葉だった。しかしこれがプロポーズだとしたら、もっと直接的な言葉があるはずだと夢子は思った。
跪いて、輝くダイヤモンドの指輪を捧げられる事は求めていなかった。
必要なのはただ一言の言葉だけ……。
結婚。
夢子は結婚はまだ早いと考えていた。しかし驚くことに今この瞬間は、その誓約を心の底から望んでいるのだった。
結婚をして、子育てをして、家族仲良く暮らす。そんなごく普通の幸せを望んでいた。
しかしジェドの口からその言葉は出なかった。彼はただ自分に着いて来るのを望んでいる。なんのけじめも責任も無く、夢子が側にいる事を望んでいた。ただ都合の良い相手のように。
夢子は迷った。ジェドの事は好きだ。
しかし、家や仕事や友人を捨てて、ひとりの男に着いて行く勇気は無かった。
「ごめんなさい。」
たった一言だが、この一言で全てが決まった。二人の道は別れたのだ。
「残念だけど仕方がない。」
ジェドはベッドから起き上がって、床に散らばった衣服を集め始めた。この家に来た時と同じように、白い襟付きのシャツとスラックスを身につけた。
「私たちはこれで終わり?」
「そうなるだろうね。」
ジェドの声色はいつも通り優しく穏やかなのに、どこか素っ気なく響いた。
つい一時間前には世界中の誰よりも一番近くにいたのに、今は他人のようによそよそしく、二人の間の空気は寒々としていた。
夢子の肌の上に残ったジェドの名残りも薄れつつあった。
夢子はただ離れていこうとしているジェドを見つめるだけだった。
縋り付いたり、泣いたり、そんな行動は起こせなかった。
自分がジェドを心から欲していないのだと、別れの瞬間になって気付いてしまったのだ。
その時、電話のコール音が鳴った。夢子は受話器を取った。電話は勤め先の新聞社からだった。
大事件が起こったらしい。朝刊に間に合うように、すぐに出社するようにとの命令だった。
ジェドは夢子が電話をしている様子を、じっと見つめていた。彼女の表情や、声色。
驚きと恐怖で青ざめる顔。乱れる吐息が漏れる唇。全てを見逃さないように。
夢子は受話器を置いて、不安からため息をついた。
「今すぐ会社へ来いって。また、例の事件みたい。」
「まさか、またゴースト事件?」
夢子は頷いた。
「何度も刺されたみたい。被害者は、同僚よ。受付の子……知ってるでしょう?」
ジェドは深刻そうに頷いた。驚いた表情だった。
「もちろん知ってるよ。あの金髪の……あの子が殺されたの?」
「そうみたい。」
話しながらも、夢子は衣服を身につけ、髪の毛をブラシで整えた。
ジェドは机から車のキーを取り上げた。
「車を出すよ。一緒に行こう。」
夢子は頷いた。