ゼロの欲しい物
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「ゼロさーん」
夢子は大きな白い球体に飛びついた。
ダークマター族特有のひんやりとした肌は、夏の蒸し暑さにはとても心地よい。
ゼロは突然飛びついてきた少女に驚きもせず、そのままにさせた。そして一つしかない目を閉じて、静かに少女の温もりを感じていた。
それは泣く子も黙るダークマター族の親玉らしからぬ行為であった。
ゼロはかつてポップスター侵略を企てたが、カービィによって撃退された。
光に溢れるポップスターは、ダークマター一族にはとても魅力的な惑星だった。
ゼロは一度は侵略に失敗したものの、初めて味わった屈辱やカービィに対する復讐心も手伝って、再びポップスターを己の闇の中に呑み込んでしまおうと考えたのである。
だが、二度目の侵略計画は早々に打ち切られる事となった。
それは、たった今ゼロに抱きついている少女の存在のためである。
再びポップスターにやって来たゼロは、一先ず手ごろな存在に憑依しようと標的を探した。
そして目に付いた少女…夢子に憑依しようと、黒い雲のような手を伸ばした時…思わず視線を奪われたのである。
いかにもポップスターの住人らしい平和ボケしてどこか腑抜けた顔。
毎日が楽しくて希望に満ちたキラキラと輝く瞳。
それはダークマター族には持ち合わせていない物だった。
少女はグーイと共にいた。二人は一緒に走り回り、疲れると木陰で昼寝した。
少女の腕に抱かれたグーイは安心しきってぐっすりと眠り、とても満たされた表情をしていた。
その時ゼロはグーイを憎いと感じた。
ダークマター族でありながら暗黒の世界から逃げだしたグーイの事を、ゼロは一族の恥さらしだと嘲った。
ゼロはグーイが持つ善意の心など理解できなかった。何故ならダークマター族にとっての心の充実とは闇の中にしか存在しないのである。
すべてを闇の中に呑み込んでしまう事…それが唯一心を満たす事のはずであった。
しかしグーイは少女に体を預けて、心から安らぎを感じているように見えた。
グーイはゼロが持っていない物を持っていたし、ゼロが感じない物を感じていた。
ゼロはグーイが持っている善意の心の理由を知りたいと考えた。
そして、自分もそれを欲しいと思ってしまった。
すぐにゼロの計画は打ち切られた。
集められた一族は解散され、それぞれが宇宙の彼方へと去って行った。
ゼロは何となくポップスターに留まり、何となくポップスターに住居を構えた。
カービィや住人達とも和解し、誰もゼロを恐れなくなった。
ゼロはかつての悪行をあっさりと許してしまうポップスターの住人達に、やはり平和ボケしていると思いつつも…何故だか心が満たされているように感じた。
虚無のような心に少しずつ満ちてゆく、光の煌めきや揺らめき。喜びや安らぎの気持ち。
今ではグーイが持つ善意の心を理解できるように感じ始めていた。
---
初め、ゼロは夢子と親しくなりたいと思いながらも、どのように接すればいいのか分からなかった。
夢子と仲の良いグーイは、ゼロと夢子が打ち解けられるようにと二人を誘っては様々な場所へと出かけた。
その甲斐もあり二人は今ではすっかり打ち解けて、こうして寄り添ってゆっくりとした時間を過ごせるようになっていた。
「毎日暑くて嫌になっちゃうよ」
「夏は嫌いなのか?」
「ううん、海に行ったり川で水遊びしたり…スイカ食べたり、むしろ好きだよ。でも暑いのは苦手」
「だから毎日のように此処へ来るのか?」
「そうだよ。ゼロさんのお家ってひんやりして気持ちいいんだもん」
「では好きなだけ居るといい」
ゼロの言葉に夢子は嬉しそうに笑った。
ゼロの言葉には少しも媚びたところが無い。
その無機質だと思う位にあっさりとした声や話し方を、夢子は気に入っていた。
「私、ゼロさんが好きだよ」
「家が涼しいからか?」
「それもあるけど、一緒に居ると落ち着くから…」
そこで夢子は言葉を止めて、目を閉じてゼロの体を抱きしめた。
目一杯に両手を広げても、ゼロの大きな体には手が回らない。
それでも好きという気持ちを伝えようと抱きしめた。
ゼロは自分にも手が存在したら良かったと思った。
それは黒い雲のような、全てを闇の中に飲み込むための手ではなく…小さな体で自分を抱きしめてくれる少女を抱きしめ返せるような手だった。
ゼロは背中に張り付いたままの少女の寝息を感じて目を細めた。
喜びや愛しさという気持ちがゼロの心の中に満ちた。
「私も夢子が好きだ」
ゼロは目を閉じて、安らぎの中で眠りに就いた。
おわり
夢子は大きな白い球体に飛びついた。
ダークマター族特有のひんやりとした肌は、夏の蒸し暑さにはとても心地よい。
ゼロは突然飛びついてきた少女に驚きもせず、そのままにさせた。そして一つしかない目を閉じて、静かに少女の温もりを感じていた。
それは泣く子も黙るダークマター族の親玉らしからぬ行為であった。
ゼロはかつてポップスター侵略を企てたが、カービィによって撃退された。
光に溢れるポップスターは、ダークマター一族にはとても魅力的な惑星だった。
ゼロは一度は侵略に失敗したものの、初めて味わった屈辱やカービィに対する復讐心も手伝って、再びポップスターを己の闇の中に呑み込んでしまおうと考えたのである。
だが、二度目の侵略計画は早々に打ち切られる事となった。
それは、たった今ゼロに抱きついている少女の存在のためである。
再びポップスターにやって来たゼロは、一先ず手ごろな存在に憑依しようと標的を探した。
そして目に付いた少女…夢子に憑依しようと、黒い雲のような手を伸ばした時…思わず視線を奪われたのである。
いかにもポップスターの住人らしい平和ボケしてどこか腑抜けた顔。
毎日が楽しくて希望に満ちたキラキラと輝く瞳。
それはダークマター族には持ち合わせていない物だった。
少女はグーイと共にいた。二人は一緒に走り回り、疲れると木陰で昼寝した。
少女の腕に抱かれたグーイは安心しきってぐっすりと眠り、とても満たされた表情をしていた。
その時ゼロはグーイを憎いと感じた。
ダークマター族でありながら暗黒の世界から逃げだしたグーイの事を、ゼロは一族の恥さらしだと嘲った。
ゼロはグーイが持つ善意の心など理解できなかった。何故ならダークマター族にとっての心の充実とは闇の中にしか存在しないのである。
すべてを闇の中に呑み込んでしまう事…それが唯一心を満たす事のはずであった。
しかしグーイは少女に体を預けて、心から安らぎを感じているように見えた。
グーイはゼロが持っていない物を持っていたし、ゼロが感じない物を感じていた。
ゼロはグーイが持っている善意の心の理由を知りたいと考えた。
そして、自分もそれを欲しいと思ってしまった。
すぐにゼロの計画は打ち切られた。
集められた一族は解散され、それぞれが宇宙の彼方へと去って行った。
ゼロは何となくポップスターに留まり、何となくポップスターに住居を構えた。
カービィや住人達とも和解し、誰もゼロを恐れなくなった。
ゼロはかつての悪行をあっさりと許してしまうポップスターの住人達に、やはり平和ボケしていると思いつつも…何故だか心が満たされているように感じた。
虚無のような心に少しずつ満ちてゆく、光の煌めきや揺らめき。喜びや安らぎの気持ち。
今ではグーイが持つ善意の心を理解できるように感じ始めていた。
---
初め、ゼロは夢子と親しくなりたいと思いながらも、どのように接すればいいのか分からなかった。
夢子と仲の良いグーイは、ゼロと夢子が打ち解けられるようにと二人を誘っては様々な場所へと出かけた。
その甲斐もあり二人は今ではすっかり打ち解けて、こうして寄り添ってゆっくりとした時間を過ごせるようになっていた。
「毎日暑くて嫌になっちゃうよ」
「夏は嫌いなのか?」
「ううん、海に行ったり川で水遊びしたり…スイカ食べたり、むしろ好きだよ。でも暑いのは苦手」
「だから毎日のように此処へ来るのか?」
「そうだよ。ゼロさんのお家ってひんやりして気持ちいいんだもん」
「では好きなだけ居るといい」
ゼロの言葉に夢子は嬉しそうに笑った。
ゼロの言葉には少しも媚びたところが無い。
その無機質だと思う位にあっさりとした声や話し方を、夢子は気に入っていた。
「私、ゼロさんが好きだよ」
「家が涼しいからか?」
「それもあるけど、一緒に居ると落ち着くから…」
そこで夢子は言葉を止めて、目を閉じてゼロの体を抱きしめた。
目一杯に両手を広げても、ゼロの大きな体には手が回らない。
それでも好きという気持ちを伝えようと抱きしめた。
ゼロは自分にも手が存在したら良かったと思った。
それは黒い雲のような、全てを闇の中に飲み込むための手ではなく…小さな体で自分を抱きしめてくれる少女を抱きしめ返せるような手だった。
ゼロは背中に張り付いたままの少女の寝息を感じて目を細めた。
喜びや愛しさという気持ちがゼロの心の中に満ちた。
「私も夢子が好きだ」
ゼロは目を閉じて、安らぎの中で眠りに就いた。
おわり
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