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東南

「あー、部誌書き終わったー。終わった終わった!」
「おつかれさん。そろそろ帰ろうか」
「うん。帰ろう」
練習後、部員たちが帰宅した後の部室には部誌を書いていた南とそれを待つ東方しかいなかった。もう二人とも着替え終わっていたから、あとは伴爺に部誌を提出して帰るだけだった。
東方がラケットバッグを担いだところで南が「あっ」と声を上げる。
「ちょっと待ってて」
そう言って、自分のロッカーを開けるとボーダー柄のポーチを取り出した。しかし、手が滑って取り落としてしまう。チャックが開いていたのか、日焼け止めとリップクリームとハンドクリーム、そして二つほど薄めの包みと筒状のものが入った個包装の何かがぶちまけられてしまう。日焼け止めとクリーム類は女子の嗜みであるからともかくとして、包みは家で見たことがあった。母親や妹が生理のときに使っているからトイレに置いてある。
「あっ、ごめん!」
どこか慌てた様子で南はぶちまけたものを拾う。自然と東方も手伝っていた。一番に手に取ったのは小包装の何かだった。なんとなく、気まずい空気になった。
「……こ、これ、何?」
謝ればいいのに、口から出てきたのはまさかの質問だった。
「えっと……タンポン。生理のときに使うやつ……」
南も何故か律儀に答えてくれる。
「へえ……南、こういうの使うんだ……」
「うん。中に入れて使うんだけど、ナプキンも薄いやつでいいから便利なんだ。あんまり大きいと練習中、ゴワゴワして気になるし。便利だよ。多分、タカちゃんも使ってると思う」
「そうなのかな……。家では見たことないから。じゃあ、南。今、中にタンポン入れてるのか」
「……バカ」
散々自分で答えておきながら、南は今更恥ずかしくなってきたようだ。頬を赤らめながら、東方の手にあるタンポンを奪い取って、ポーチにしまった。
「帰ろうか」
「ああ」
妙な空気のまま、再び切り出すと南も頷いて、ポーチをラケットバッグにしまうと担いだ。
部誌を片手に前を歩く南の下半身をなんとなく見つめる。あの中に何か異物が入っているのだと考えると無性に興奮した。


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