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『赤色ゆたんぽ』


「今日はなんだか寒いなあ」

 自室のベッドの上、布団に毛布に包まりながらもアカネはその小さな体をぶるぶると震わせる。
 秋も深まってきたのか、暖かな昼間に比べ朝夕はめっきり冷え込んでしまう。

「……レイの部屋で寝よう」

 呟くと同時にアカネは早速行動に移る。

「レイー?」

 隣の部屋、レイの部屋の扉を静かに開けながらひっそりと声をかける。
 返事はなく、レイはもうベッドに入っていたが寝ているのか無視しているのかはよくわからない。
 アカネはそろりとレイのそばまで寄る。

「今日寒いしね、一緒に寝てあげようかと思って来てあげたよ」

 何故か上から目線でしゃべりながら、アカネはそっとレイの顔を覗き込む。
 瞼は閉じている。寝たフリしてるのか本当に寝ているのか……、と様子を窺っていると静かな寝息が聞こえることに気付く。
 しめしめとアカネはベッドの中にするりと潜り込んだ。レイが起きていたらきっと一緒に寝ることは拒まれるだろう。

「……アカネ?」
「あれ起きちゃった?」

 アカネがベッドに潜り込んだ途端にレイがうっすらと目を開けた。
 「これはいつもみたいに追い出されちゃうかな」と思いつつ、アカネはそうならないためにシーツをぎゅっと握り締め押し出されないように力を込める。
 そんなアカネへと、レイの手がぬっと伸びてくる。

「ふわっ?」

 ベッドから押し出されるかと思っていた手に、逆に引き寄せられる。
 そのままレイの手はアカネの頭を自分の方へ招くように抱え込み、あっという間にアカネの顔はレイの胸元に押し付けられていた。
 突然のレイらしからぬ行動にアカネは思わず動揺する。

「ちょっ、レ、レイ?な、何?どうしたの、デレ期?」
「……さむい」

 動揺する頭の上からぽつりとそれだけ聞こえた。
 落ち着かない気持ちのままアカネはレイの顔をちらりと見上げる。
 さっきまでうっすらと開いていた瞼はもう閉じられていて、すぐにまた寝息が聞こえてきた。
 寝惚けてんのかと思いながらも、アカネはどぎまぎする。

 ――落ち着け。落ち着けぼく。

 これくらいのことで何をこんなにドキドキしてるんだよ、いつもぼくのほうがレイにベタベタしてるじゃんか。
 ぼくのが年上なのに、レイのほうが年下なのに、二つも年の違う相手にドキドキするなんて。

 ちがう、これはあれだ。
 普段こんなことしないようなレイだから、驚いてるだけ。
 このドキドキはそういうドキドキ。

 体中が暑いのは、レイと布団の中があったかいから――

「レイのばか。何勝手に先寝ちゃってるの」

 頭上で規則正しい寝息を立てるレイを、アカネは睨みつける。
 抜け出してみようとするも、レイの腕は眠っているにも関わらず意外と力がこもっていて身動きが取れない。
 どうしようもなくなったアカネはレイの胸に顔を押し付けた。

「卑怯だ」
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