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『真夏の帰り道』


「暑いですね……」
「暑い……」

 ジリジリと焼けるような日差しの下、マクロとマシロは並んで商店街をダラダラと歩く。
 珍しく、何が理由でなのかはわからないが、ヒメリの代わりに買い出しに行ってきた二人は仲良く買物袋を持って店に帰る途中。

 「アイスでも買いましょうか」

 閃いたようにマクロが口にする。
 この内からも外からも熱に侵される現状を手っ取り早く抑えるには、冷たい甘味が最適だと思った。

「あいす?買う、いい?」
「いいですよ、これ僕たちのお金じゃありませんし」

 マシロからすれば自分たちのお金ではないのだから使っていいのかと聞いたつもりだった。
 勝手に使うとレイがうるさい。

「いざとなれば泣いて誤魔化しますから大丈夫ですよ」

 愛想笑いだけではなく涙まで使いこなすマクロ10歳。

「レイ、ごまかせる?」
「レイさんじゃなくて、アカネさんとヒメリさんが庇ってくれますから」

 単純で騙されやすくていい、とマクロはその歳には似合わない笑みを浮かべる。

「アイス二つください」

 目に入った駄菓子屋に入り、店にいたおばあさんに手早く注文する。

「マクロ、五つ」

 するとマシロはマクロの腕を掴み、小さく首を横に振る。

「え?そんなに食べるんですか?」
「違う。ヒメリ、レイ、アカネ」
「そんなに買ったら、レイさんに怒られますよ」
「どうせ、レイ怒る」

 それもそうか、何本になろうが一緒だ。とマクロはアイスをもう三本頼んだ。

「早く帰らないと溶けちゃいますね」
「急ぐ」

 アイスの入った袋も持ち、二人は駆け出す。
 照り付ける日差しを浴び、汗が次から次へと止まることなく流れてくる。
 涼しむために買ったアイスのために、こんなに暑い思いしながら走ってる自分たちはどうかしてると、そう思いつつも何故だか笑みがこぼれた。
 アイスが溶ける前に、店に着く頃には自分たちのほうが溶けているんじゃないかと少し心配をする。
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