moment

『雨の降る日』


 私は雨が好きだ。
 日の苦手な私には明るい空を覆い尽くす灰色とそこから零れ落ちる雫の冷たさが心地よかった。
 傘の上を跳ねる雨音のリズムに合わせて心も弾む。

 ノマドは雨が苦手だ。
 濡れるのが好きじゃないノマドには逃げ場のない雨粒の群れが檻のようで退屈そうだった。
 どんよりと空を覆う雨雲を見つめては唇を尖らせる。

 私は雨が好きだ。

「ノマド、傘入れてあげる」
「ありがとう、レイチェル」

 ひとつ傘の下、愛しのあなたを私の隣に招くことができるから。
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