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side story 1
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なんだろ、この甘い香り。
アタシの大好きな香りだ。
そういえば、ロズレイドの手のお花からはいつもこんな匂いがするんだよね。
他の仲間たちも、みーんないい匂いがする。
なのになんで?みんなの姿が見えない。
暗い闇を、かき分けてもかき分けても沈み込んでいくような、そんな感覚。
怖い。
アタシが好きなのはこんな暗い森じゃない。
アタシが望むのはーー
ブスッ
「痛ッ!!?」
頬への強刺激で起きた。
目の前には愛するロズレイドがいて、心配そうな顔で自分を覗き込んでいる。
よろよろと起き上がり、痛む頬と後ろ頭を押さえる。どうやら失神していたらしい。
「ロズレイドッ……無事だったのね!!もう、どっか行っちゃったかと思った……」
「………悪いな」
「!?」
慌てて声がした方を見ると、書斎の隅にある椅子に、足を組んで座る青年の姿があった。
「に、人間……?」
黒髪の青年が、黒いシャツに黒のスキニーパンツに黒靴を纏い、袖口から出る手にまで黒い手袋をはめている。こんな黒ずくめの怪しい男がこんな所で何をしているのか……ものすごく気になる。
「アンタ、こんな所で何してる」
「イヤ、こっちが聞きたいんですけど!?」
「………」
青年は静かに椅子から立ち、こちらに近づいてきた。あ、近くで見ると結構イケメンかも。
「…俺は、ある案件でこの建物の調査をしてる。……アンタは」
「ア、アタシは……お、おばけとか、こういう場所が苦手で…克服しようと思って来た…の」
改めて言葉にするとなんとなく恥ずかしい動機に思えてきて、語尾がもごもごと小さくなる。
「……で、その結果がこれか」
青年が向けた視線の先には、無残な光景が広がっていた。
無数の葉が書庫に突き刺さり、本の背表紙もひどく切り裂かれている。
「これ、もしかしてさっきの…!」
「……気をつけろ。俺じゃなかったら本物の"ホラー"になってたかもな」
「え……」
どういうこと?さっきの黒い影はやっぱりこの青年で、ロズレイドが放った技を全て避けたってこと?……まさか。
"マジカルリーフ"の効果は、"必ず命中する"ことだ。
通常なら避けきれない追尾式の攻撃で、さらに相手が人間となると、恐らく、回避などありえない。
……というか、ポケモンの、しかもこんな攻撃的な技を人間に対して使ったのは初めてで、正直なんとも言えないんだけど。とにかく、不可抗力とはいえ、ポケモンに危険な事をさせてしまった。トレーナーとしてあるまじき行為だ。
「あのっ、ほんとにごめんなさい!!とても危険な目に合わせてしまって……アタシ、トレーナーとして失格だわ…」
「………」
傍に寄り添ってくれているロズレイドにも、ごめんね、と小さく謝ると、彼女はすまして、気にするなというように花束の手を振った。青年はそれを黙って見ながら、静かに答えた。
「……いや、こっちも驚かせたのは確かだ。それより、俺は用が済んだからここを出るが、アンタはど」「出ます!今すぐ出ますッ!」
スタスタと部屋を出ていく青年の後を慌てて追う。
部屋を出る際、電気のスイッチがあることに気づき、ふと違和感を感じた。まぁいっか、と切ろうとした時、青年がそれを制した。
「それはそのままでいい。"アイツ"が勝手に消す。ここにいる"奴ら"は光を好まないからな」
「……ねぇ、"アイツ"とか、"奴ら"ってなんなの?ここに、誰かいるってこと……?てか、なんで電気なんかついて……そうよ、来た時は真っ暗だったのに……!!」
「……説明したほうがいいか?」
「……イイデス……」
これ以上失神するわけにはいかない。今はとにかく、早くここから出たい。
部屋を出ると、先程までとは打って変わって、なぜか廊下の電気がぺかぺかと付いていた。階段を降り、広間に出ても、各照明に明かりが灯り、館内全体が照らされている。真っ暗な怖さはないが、荒廃した物たちの細部が露わになり、変な不気味さがある。
青年のほぼ真後ろをついて歩き、後ろにはロズレイドに歩いてもらってガードを固め、なんとか出口までたどり着いた。
館の外に出たことで、さっきまでの重苦しい空気から解放され、大きく息を吐いた。
結局、ひたすら恐怖に晒されただけの時間だったが、今まで怖くて館の中に入れず、周囲を徘徊していたことに比べたら、大きな進歩だ。
なんといっても、この謎多き青年のおかげである。
「あの……ほんとにありがとう!アナタのおかげで助かったよ」
「……アンタは、トレーナーか?」
「そうよ。アタシってこんなだけど、これでもいちおうハクタイのジムリーダーやってるの」
「ジムリーダー?……なら、今のチャンピオンと接触することはあるか?」
今までほとんど感情を露わにしなかった青年が、少し興味のありげな反応を見せた。自分が実はジムリーダーだったということよりも、チャンピオンとのつながりに食いついている感じがちょっと残念だけど。
「シロナさんのことだよね?うーんと、今度の大きな会議があるから、そこで会うかな……え、もしかしてファンとか?」
「……いや」
「あはは!しょーがないなぁ〜サイン頼んであげ「いい。それよりそいつに伝えといてくれ」
途中で遮った彼の表情は険しく、とてもファンなどと呼べるものではなかった。
「アンタらトレーナーは今後、痛い目を見ることになる。そうなる前に対策を講じろ。そして……"プレート"を守れ。"奴ら"には渡すな、と」
彼はそう言い放つと、静かに去って行った。
話が全く見えないためか頭がぼーっとしてしまい、聞き返そうと我に帰った時、その姿はとっくに消えていた。
「えーと、なんだったの……?」
とりあえず、帰ったら今日の出来事を整理して、今度の定例会議で報告しなければならない。
館の謎、謎の青年、謎の伝言。
謎だらけなことで頭がいっぱいで、彼女は気づかなかった。
自分の背後にある洋館の窓から漏れていた明かりが、
すべて、消えていたことに。
アタシの大好きな香りだ。
そういえば、ロズレイドの手のお花からはいつもこんな匂いがするんだよね。
他の仲間たちも、みーんないい匂いがする。
なのになんで?みんなの姿が見えない。
暗い闇を、かき分けてもかき分けても沈み込んでいくような、そんな感覚。
怖い。
アタシが好きなのはこんな暗い森じゃない。
アタシが望むのはーー
ブスッ
「痛ッ!!?」
頬への強刺激で起きた。
目の前には愛するロズレイドがいて、心配そうな顔で自分を覗き込んでいる。
よろよろと起き上がり、痛む頬と後ろ頭を押さえる。どうやら失神していたらしい。
「ロズレイドッ……無事だったのね!!もう、どっか行っちゃったかと思った……」
「………悪いな」
「!?」
慌てて声がした方を見ると、書斎の隅にある椅子に、足を組んで座る青年の姿があった。
「に、人間……?」
黒髪の青年が、黒いシャツに黒のスキニーパンツに黒靴を纏い、袖口から出る手にまで黒い手袋をはめている。こんな黒ずくめの怪しい男がこんな所で何をしているのか……ものすごく気になる。
「アンタ、こんな所で何してる」
「イヤ、こっちが聞きたいんですけど!?」
「………」
青年は静かに椅子から立ち、こちらに近づいてきた。あ、近くで見ると結構イケメンかも。
「…俺は、ある案件でこの建物の調査をしてる。……アンタは」
「ア、アタシは……お、おばけとか、こういう場所が苦手で…克服しようと思って来た…の」
改めて言葉にするとなんとなく恥ずかしい動機に思えてきて、語尾がもごもごと小さくなる。
「……で、その結果がこれか」
青年が向けた視線の先には、無残な光景が広がっていた。
無数の葉が書庫に突き刺さり、本の背表紙もひどく切り裂かれている。
「これ、もしかしてさっきの…!」
「……気をつけろ。俺じゃなかったら本物の"ホラー"になってたかもな」
「え……」
どういうこと?さっきの黒い影はやっぱりこの青年で、ロズレイドが放った技を全て避けたってこと?……まさか。
"マジカルリーフ"の効果は、"必ず命中する"ことだ。
通常なら避けきれない追尾式の攻撃で、さらに相手が人間となると、恐らく、回避などありえない。
……というか、ポケモンの、しかもこんな攻撃的な技を人間に対して使ったのは初めてで、正直なんとも言えないんだけど。とにかく、不可抗力とはいえ、ポケモンに危険な事をさせてしまった。トレーナーとしてあるまじき行為だ。
「あのっ、ほんとにごめんなさい!!とても危険な目に合わせてしまって……アタシ、トレーナーとして失格だわ…」
「………」
傍に寄り添ってくれているロズレイドにも、ごめんね、と小さく謝ると、彼女はすまして、気にするなというように花束の手を振った。青年はそれを黙って見ながら、静かに答えた。
「……いや、こっちも驚かせたのは確かだ。それより、俺は用が済んだからここを出るが、アンタはど」「出ます!今すぐ出ますッ!」
スタスタと部屋を出ていく青年の後を慌てて追う。
部屋を出る際、電気のスイッチがあることに気づき、ふと違和感を感じた。まぁいっか、と切ろうとした時、青年がそれを制した。
「それはそのままでいい。"アイツ"が勝手に消す。ここにいる"奴ら"は光を好まないからな」
「……ねぇ、"アイツ"とか、"奴ら"ってなんなの?ここに、誰かいるってこと……?てか、なんで電気なんかついて……そうよ、来た時は真っ暗だったのに……!!」
「……説明したほうがいいか?」
「……イイデス……」
これ以上失神するわけにはいかない。今はとにかく、早くここから出たい。
部屋を出ると、先程までとは打って変わって、なぜか廊下の電気がぺかぺかと付いていた。階段を降り、広間に出ても、各照明に明かりが灯り、館内全体が照らされている。真っ暗な怖さはないが、荒廃した物たちの細部が露わになり、変な不気味さがある。
青年のほぼ真後ろをついて歩き、後ろにはロズレイドに歩いてもらってガードを固め、なんとか出口までたどり着いた。
館の外に出たことで、さっきまでの重苦しい空気から解放され、大きく息を吐いた。
結局、ひたすら恐怖に晒されただけの時間だったが、今まで怖くて館の中に入れず、周囲を徘徊していたことに比べたら、大きな進歩だ。
なんといっても、この謎多き青年のおかげである。
「あの……ほんとにありがとう!アナタのおかげで助かったよ」
「……アンタは、トレーナーか?」
「そうよ。アタシってこんなだけど、これでもいちおうハクタイのジムリーダーやってるの」
「ジムリーダー?……なら、今のチャンピオンと接触することはあるか?」
今までほとんど感情を露わにしなかった青年が、少し興味のありげな反応を見せた。自分が実はジムリーダーだったということよりも、チャンピオンとのつながりに食いついている感じがちょっと残念だけど。
「シロナさんのことだよね?うーんと、今度の大きな会議があるから、そこで会うかな……え、もしかしてファンとか?」
「……いや」
「あはは!しょーがないなぁ〜サイン頼んであげ「いい。それよりそいつに伝えといてくれ」
途中で遮った彼の表情は険しく、とてもファンなどと呼べるものではなかった。
「アンタらトレーナーは今後、痛い目を見ることになる。そうなる前に対策を講じろ。そして……"プレート"を守れ。"奴ら"には渡すな、と」
彼はそう言い放つと、静かに去って行った。
話が全く見えないためか頭がぼーっとしてしまい、聞き返そうと我に帰った時、その姿はとっくに消えていた。
「えーと、なんだったの……?」
とりあえず、帰ったら今日の出来事を整理して、今度の定例会議で報告しなければならない。
館の謎、謎の青年、謎の伝言。
謎だらけなことで頭がいっぱいで、彼女は気づかなかった。
自分の背後にある洋館の窓から漏れていた明かりが、
すべて、消えていたことに。