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はじめる前から負けている 初出:2020年3月21日


「すきです」
 周囲の喧騒に隠すように小さく告げると、菓子を摘まみかけていた手がぴたりと止まった。
 一度ぱちりとした目がすぐに元のように細められる。じ、と値踏みをされている気配。
 やがて小首を傾げた彼が口を開いた。
「……知ってるけど」
「でしたか」
 だろうとは思っていたけれど。
 にこりとした私に、乱歩さんは表情に呆れを滲ませる。
「ていうかそれ、言わないつもりだったろ」
「驚かせたい欲が勝(まさ)ってしまって」
 成功しましたか。
 笑顔のまま問えば、とうとうため息をつかれてしまった。
「子供か、お前は」
「たまに言われますが、心外ですね」
 今回ばかりは。
 おもに国木田君に言われたりもするが、あれは故意なのだから別にいいのだ。
 まぁ愛の告白としては動機も場所も間違いだらけなのだろうけれど。
「ふーん、じゃあ」
 乱歩さんのきれいな手が飴玉を一つ拾い上げる。
 指で呼ばれるので身を屈めれば、包装を解かれたそれが私の唇へと押しつけられた。
「んむ?」
「素直に言えた佳い子にはご褒美だな」
 乱歩さんがにやりと笑う。
 飴玉。社長の出張土産。彼にしてはずいぶん大事に消費していたそれは確か最後の一つで。
 気づいてしまえば招き入れるしかなかった。
「……だから子供じゃないんですけど」
 頬が熱い気がする。
 なんだか悔しくて、本当に子供のように口を尖らせてしまえば、乱歩さんがからからと笑った。

 あぁ本当にどうしようもない。
 そもそも悔しいなんて思うのはいったいいつぶりだろう。あるいは彼に会うまでは、もしかしたら。

 私はいっそ清々しいくらいの諦念とともに、口の中の甘すぎるそれを舌で転がしたのだった。



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マヨちゃんの双璧デュアルがほしくて突発的に書いたものでした。結局そのときは来てくれず、後日天井ありのガチャで入手しました……。
喋り(説明し)すぎると違和感だし、しなければ読み手に伝わらないし、史上最も書くのが難しいCPなのではないでしょうか……大変でした。下手したら無言で隣に座っているだけで完結してしまう……。
でも乱歩さん相手だと太宰さんは絶対的に立場が下なのが楽しいですね……。
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