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7、煙を吹きかける 初出:2018年10月14日


「おい、こんなところでなにをしている」
 青空に向かって紫煙を吐き出したところで、後ろから声がかけられた。
 国木田君だ。
 私は振り返ることなく、指に挟んだ煙草をひらひらと振ってみせる。
「休憩~」
「煙草休憩は休憩とは言わんわ、阿呆」
「いて」
 つかつかと距離を詰めてきたと思うと、紙束で頭を叩かれた。
「……なにこれ」
「仕事の資料だ。お前が会議もなにもかもを放っぽって屋上でサボっているから、わざわざ持ってきてやったんだろうが」
 まるで「取れ」と言わんばかりに頭上に鎮座したままのそれに私は首を傾げる。国木田君が顰め面を浮かべた。
 数秒見つめ合ったが、どけてはくれなそうなので仕方なく手を伸ばした。
「やれやれ、しょーがないなぁ。見せて」
「しょうがなくはないっ! 貴様……常々思うがその仕事態度はどうかと……」
「はいはい、これ持っててね」
 私は説教モードに入りそうになった国木田君の口に、吸いかけの煙草を押し込んでしまう。
 資料を捲った。
「……俺は煙草置きではないぞ」
 と、ため息とともに呆れたような声がして、目を瞬かせる。
 顔を上げると、渋い顔をした国木田君がそれでも煙草を銜えたままでいた。
「君、煙草吸えたの。意外」
「……ん? あぁ。まぁ。な」
 すぐに手に移し取るか、咳き込んで大騒ぎすると思ったのに。
 驚く私に国木田君は肩を竦める。証明するかのように一口吸い、空に向かって細く煙を吐き出した。
 強がっているのではなく、ずいぶんと慣れた仕草だ。
「今は吸ってないよね。いつ吸ってたの? なんでやめたの?」
「……資料」
「はーい。読んでるよ」
 矢継ぎ早の質問に、国木田君は眉間の皺を深くする。
 説教防止の煙草が効かなかったのだから仕方ない。私は資料をぱらぱらと読み進めていく。
「……太宰」
「ん?」
 傍らで少し考えているような気配。
 名前を呼ばれて顔を上げた途端、視界が白く濁った。
「……っ!? ごほ、けほっ」
「お前が今日の仕事を真面目にこなせば教えてやらんこともない」
 顔に煙草の煙を吹きかけられたのだ。
 不意打ちに、さすがに咳き込む私の手からひょいと資料が奪い取られていく。
「行くぞ。読み終わったろう」
「……んん。もー……」
 きっちり最後の頁まで見たのを確認していたらしい。
 国木田君が踵を返すのに、私は口を尖らせた。
「……ねぇ君、意味分かってやってる?」
「なんの話だ。早く来い」
 国木田君が振り返る。
 その顔が明らかに面白がっているのが面白くなくて、私は頬を擦った。
 少し赤くなっている気がする。悔しい。
「おい、灰皿」
「……はいはーい」
 屋上の出入り口で、煙草を持て余した国木田君が催促の声を上げた。
 その、煙草を挟む指先まで急に意識してしまいそうになって、私はわざと間延びした声を出しつつポケットを探る。
 ゆっくりと歩いて、存分に国木田君を待たせてやったのだった。



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元ヤンきだくんを推しているので、未成年のうちに煙草くらい吸ったことあるしお酒も飲んだことあるし喧嘩ばっかりしてたでしょう!? みたいなテンションで書いたやつ。煙草は嫌いなんですけど煙草吸ってる仕草は好きです。
国木田君の過去話ほしいですね……永遠に言ってそうですね……。
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