3、人を殺す 初出:2018年5月9日
「そういえばお前、最近おとなしいな」
「なんのこと?」
ふと思い立ってパソコンの画面から顔を上げると、太宰はだらけた様子でメモ帳に落書きをしていた。
きょとんとしてこちらを見る。
サボりが見つかったことへの気まずさは微塵もないらしい。
俺は眉間に皺が寄るのを感じつつも口を開いた。
「お前の悪癖だ。少し前ならやれ入水だ首吊りだと騒いでいたではないか」
このところそういった素振りがない。
いや、こいつの自殺未遂は迷惑なだけなので、されない方がいいに決まっている。いるのだが、なにもないならないで裏があるのではと妙に警戒してしまうのも事実だった。
「だって最近とっても忙しいじゃないか。ポートマフィアだの外国の異能力者だの。悲しいことに自殺に割く時間が取れなくてねぇ」
「取らんでいいわ阿呆」
やれやれと肩を竦める様子は本当に残念そうで俺はげんなりする。
不測の事態は勘弁してもらいたいが、それで太宰の自殺が抑止されるなら……と思っていたときだ。
「……それに」
ぽつりと太宰が言葉を続けるのに顔を上げる。
ぞっとした。
「自殺未遂を起こしたら国木田君が怒るでしょう。怒られるの好きじゃないのだよね、私」
声も口調も心底不服そうだ。だがその表情は異常なほど平時のもので言葉が継げない。
まるでその気がないのは俺でも分かった。
唐突に理解する。
──あぁ、人を殺すというのはこういう感覚なのか。
了
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国木田君のために「自分」すら捨ててしまった太宰さん。
ぞろりと怖い思いをしてほしいなぁと書いたけど力量不足だなぁと思っていました。でも今読み返すとわりとよい気もしますね。
それよりも私はこのあたりの更新の速さが怖い……。
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