1、見下ろす/見上げる 初出:2018年5月1日
「太宰」
室内に足を踏み入れた途端、腰を抱かれて引き寄せられる。
顎をすくわれたと思うと唇が重なった。
「……ん、ふふ」
「なんだ」
何度か触れ合い、離れるとつい笑ってしまう。
眼前で眉間に皺が寄せられるのが見えた。
「いやぁこうして仰のくのは新鮮だなぁって思っただけさ」
にこにこと笑うと訝しげな視線が返ってくる。
私は上背がある方だから、普段は女性はおろか男ですら見下ろすことの方が多い。
加えて私は今まで女性としかおつき合いをしたことがないので当然口づけも下を向くのがほとんどだった。
それがこうして自分より背の高い国木田君と口づけするために上を向いている。そう考えるとなんだか面白かった。
「それに、こうして立ったままするのも珍しいよね。部屋の中で」
「……そうだな。座るか」
目の前の唇を指でなぞる。
性急さを揶揄されたと思ったのか、目元を仄かに赤くした国木田君に腕を引かれた。
畳の上に腰を下ろすのを追って、私も膝をつく。
私としては繕う余裕もなく求められているのを感じられて悪くなかったのだけれど。
「ん、国木田君」
「……おい、太宰」
今度は私から唇を合わせる。
すぐに物足りなくなって、国木田君の膝の上に乗り上げた。
頭を抱えて上から覆い被さるように深く食らいつくと、国木田君に慌てたようにシャツの背を引かれる。
「こ、れでは……」
「ふふ、さっきと逆だね。ん、だって、とおい……っ」
確かに二人で座り込んでしまえば、頭の高さはほとんど変わらない。けれど密着度が低くて不満だった。
舌を絡ませ、擦り合わせる気持ちよさに、少しずつ意識が酩酊していく。
「……なら」
「わ」
あっさり国木田君に床に引き倒されてしまう。
のしかかってくるのを、私は目をぱちぱちさせて見上げた。
「こうすればいいだろう。そこから見ていろ」
「……うん」
欲を孕んだ低い声に、背筋が甘く痺れる。
私は国木田君の首に腕を回すと、口づけの続きをねだったのだった。
了
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お題が苦手なのでそれっぽいものが書けたらそれっぽいタイトルをつけています。スタートから甘くてちょっとびっくりしちゃった……。
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