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まっぷたつに折れ、海上に緊急着陸した飛行機はオイルが海に流れ、配線がむき出しで火花が散っている。


海面には、シートに括り付けられ息絶えた者や、辛うじて息をしている者、波打ち際まで流された者がいる中、1隻のボートがその悲惨な現場に乗り込んだ。


LA消防の118分署の隊長 ボビーは部下のヘンとバックを引連れ、燃料が漏れている海の上を進んでいた。


「翼の上に12~15名、水中に最低30名、沈むまでどれくらいあると思います？」


「うねりの周期次第だが、あの様子じゃ持ちこたえられて4、5回だ。あまり時間が無い。」


今まで見た事がない現状に、唖然とする隊員たちは飛行機のそばまで到着すると、周囲を見ながら乗り込み始める。


「これだけの人数、どこに避難させる？」


「全員救出して、海岸に運ぶ。機体は持って4分だ」


「ボビー、」


「なんだ」


「この飛行機に、医師は乗ってた？」


「乗客の情報は聞いていないが、どうした」


「機内にいる乗客全員に、簡易的な治療とトリアージがされてる」


ヘンの言葉に、ボビーとバックが動きを止めると、乗客の腕にはRed（赤）のRや、Green（緑）のGなど、簡易的な文字が書かれていた。


誰もが、これは一体だれが、思う中で男性の呻き声と、女性の黙って、という怒鳴り声が聞こえ、近くにいたヘンが駆け寄れば、そこには横に倒れた男性と、頭から血を流し首に指を置く女性の姿が。


「大丈夫ですか？」


『あぁ、ようやく来てくれた、大丈夫よ』


「大丈夫なわけあるか！シートベルトが食いこんで動けないんだぞ！！」


『うるさい！黙って！

……この人、騒げるくらいの元気はまだある。触診だけだけど、頭に異常はなさそう。見ての通り、ベルトがくい込んでて、恐らくお腹周りは皮が剥がれてるかも。』


「分かった。……貴方、医者？」


『えぇ、まぁね。

それと、トイレ。見た方がいいかも。私の知る限りじゃ、あと2人はいる。』


「わかった。

さぁ、ここはあたしたちに任せて、貴方も怪我人よ。早くボートに乗って」


『そうさせてもらう。ありがとう』



簡単に状況を伝えた女性は、煤をつけ服に血が着いているにも関わらず、笑顔を見せると助けに入った救急隊と一緒に去っていった。


「────それじゃあ、今外してあげますから。

1、2、3でいきますよ。1、」


ヘンがベルトを外し、男性の呻き声を背に、ボートに飛び乗った女性は苦笑いを浮かべると、改めて海上に広がる悲惨な現場にため息をついた。