Age of Ultron

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────私が、ここにある食べ物全てが好物だってこと、あなた知ってたの?


食卓に並べられた料理を見渡して、真っ直ぐと見つめて聞いてきたそれを、俺は頭の中でゆっくりと復唱する。


作った料理が、ハナの好物だった。これは、彼女を見てれば自然と分かる。だから、YES。


俺が知ってたか、については、YESと言いたいところだが一応Noと言っておきたい。ここで肯定したら、確実に彼女に引かれる事は間違いない。


「たまに、食堂で見かけてた。大抵朝だったから、必ず同じものを頼んでいたし、てっきりそれが好きなんだとばかり思ってた」


こうやって言えば、たまたま見た、って意味にもなるし、変に引かれずに済む。


答えを聞いたハナは首を傾げて、気付かなかったなんて呟いた後、俺と出会って初めて小さな笑みを見せてくれた。


『凄いわね、食堂で見かけてたってだけで、こんなに好物を出してくれるなんて。ありがとう』


おいおいおい待ってくれ。なんだよ、笑いながら感謝されるなんて、昨日までの俺は考えてたか??


冷めないうちに食べる、そう言って着ていた服の袖をこれでもかと伸ばし、食べ物を入れ始めたハナを眺めながら、脳内は半分嬉しさでパニックだ。


よっぽど腹が減ってたのか、スープを飲みながらベーコンを頬張り、PB&Jを押し込んでいる彼女。


かなりの時間をかけないと見れないと思っていた、好きな奴の食べる姿が、物凄く愛おしく、そして可愛いから、両肘を付けて眺めてしまう。


すると、そんな俺に気付いたのか、ジュースで飲み込んでから、スクランブルエッグを指さした。


『これ、それに、ミネストローネも最高よ。ナットとキャプテンが言ってたことは、本当だったみたい』


「何を聞かされてたんだ?」


『ウィルソンの料理は普通に美味しいって』


「普通……」


アイツら勝手に家に押しかけてきたくせに普通に美味しいって。なんか、何となく腹立つ。


『でも、私は、普通に美味しいとは思わない。物凄く、美味しい。

ウィルソンの事、ただの初対面を狙ったナンパ野郎だと思ってたけど、料理が上手いのにそれを振る舞う相手がいない人、に昇格してあげるわね』


「随分な言い草だな」


ナンパ野郎と思われてたなんて心外だ、って言ってやりたかったが、好きなやつから俺の料理が物凄く美味いなんて言われると、喜ばない男はいないだろ。


……って事で、俺の頭はお花畑と等しく、近所にいる甘ったるい恋人と同じ脳内だ。
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