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「────って言う訳で、彼女が安定するまで貴方に託すわ」


夜更けにノックされて、ソファで軽い居眠りをしていた俺は飛び起きた。


起き抜けの体で、一応ウィング・パックを背負い出れば、ヒルと数時間前に別れたハナを抱えたスティーブが。


何が何だか分からないまま、スティーブはズカズカと部屋に入ってくると、前回来た時に部屋の間取りでも覚えたのか、人のベットに彼女を寝かせる。


おいおい、そこは俺のベットだぞ、って思う余裕もないまま、簡単な詳細をヒルから説明されたが、ロボットやら超能力やら、映画の中の話だった単語が飛び交い、こっちが理解出来たか聞かないまま、とっとと家を出て行っちまった。


とりあえず、自分の部屋に向かってみれば、静かな寝息を立てているハナがいて、急に変な気分に襲われる。


普通、こういうのはカップルになって初めて家を尋ねるだとか、タイミングよく家に誘うとか、そんな感じだろ。


俺だって、いつかは彼女を誘いたいとは思っていたのに、まさかこんな形で迎え入れるなんて。しかも、誘う前に俺のベットで寝てるし。


とりあえず、テレビを消し音を立てないようソファにまた横たわろうとした時、ガシャンと音を出しなにか倒れる音で、慌てて部屋へ向かう。


「っ、おい！おい、ハナ、大丈夫か？」


気持ちよさそうに寝ていたと思ったが、今来て見りゃ顔をゆがめのたうち回ってる彼女がいる。何とかして宥めようと、咄嗟に手を伸ばして、肩を抑え込む。


「ハナ、落ち着け。何に怯えてんのか知らねぇが、今は俺とお前しかいない。」


腕は背中に当たるわ、足は落ち着きがなくベットを揺らすわで、よっぽどヤバいもんでも見てるんだろう。だから、少しでも落ち着かせたくて、強く抱き締めて耳元でゆっくり囁いてみる。


ちゃんと、彼女の背中を優しく叩きながら、何度も繰り返し言うと、段々と落ち着いてきたのか動きが弱くなり、最終的には力が抜けて、寝息が聞こえる。


こりゃ凄いもんを見たな、なんて呑気に考えながら、布団をかぶせてやると、床に転がった時計を拾おうと屈んだ時、今まで感じたことの無い痺れに襲われて、そのまま倒れ込む。


じわじわとまとわりつく痺れと、目の前が徐々に歪んでいく状況に、何とかして正気に戻そうと集中するも、効果はない。


何とか壁にもたれ掛かることが出来ると、ふと中に液体が入った注射器が転がっているのが見えたから、ただ何も考えずそれに手を伸ばした。