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暗闇の中、グオングオンと音を立てて上空を飛ぶクインジェット。


その中で、ベリベリとマジックテープをつけたり外したりと、念入りに確認するハナは、心做しか落ち着きがないように見える。


……というのも、ほんの数時間前、俺がなんの考えも無しに彼女の元へ訪問した時、なにか上手い言い訳を考えようとしていると、タイミングがいいのか悪いのか俺の元に緊急で片付けなきゃならない任務が舞い込んだ。


文を追っていけば、今回はかなり厄介だからアベンジャーズの誰かを連れて行った方がいい、との事でちょうどいいと思った俺は、これを理由にした。


『……ねぇ、ウィルソン』


「どうした」


『本当に、私でよかったの？』


「どういうことだよ。アンタだって、アベンジャーズだろ？」


『そうだけど……でも、私、他のみんなより強くない。』


「そんなの関係ないだろ。元は俺のところに来た任務だ。ハナは、俺の背中を守ってくれればそれでいい」


いつもとは違い、ピッタリとした白色のスーツを着た彼女は、俺の言葉に考え込むようにして視線を逸らした。


『……私なりに、ウィルソンのサポートはするけど…それで貴方が怪我しても、私は責任、取らないからね』


「分かったよ。そもそも、俺は怪我するつもりは無いから。

背中を預けるのは、アンタだ。信用してる」


『今日、初めましてしたくせに』


「だけど、俺は前から知ってた」


『………そう』


「なんだ、驚かないのか？」


『S.H.I.E.L.D.の職員だから、私。施設を使ってれば、少なくとも1度は姿を見かけてると思うし、キャプテンとも知り合いなら、私の話くらい聞いてると思って』


スターク製だという時計型の通信機器を取り付けながら、淡々と言ってのけた彼女は、小窓から見えた景色に立ち上がると、ハッチへと向かいボタンを操作する。


『もうすぐで、任務先よ』


「まさか、そこから飛び降りるのか？」


『私はね。

ウィルソン、私の本当の姿を初めて見せるわ。その姿を見て気分が悪くなったら、すぐ言って。』


「どういう、」


ハッチが完全に開き、風が入ってくる音と分厚い雲が広がる中、ハナの言葉で何言ってるんだって言う前に、銀色に輝く薄い羽を、ざっくり開いた背中から出され、思わず息を飲む。


『この姿で、気絶したエージェントを何人も見てきたから。

下で会いましょう。』


両手につけていた手袋を、彼女が座っていた席まで投げると、そう言って飛び降りた。