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私の目の前には、こんがりと焼けたトーストにたっぷりに塗られたピーナッツバターとストロベリージャムを挟んだものを、美味しそうに頬張る彼女がいる。


猛毒が体内に回り、羽を生やしてしまう原因を作ったあの頃がきっかけで、検査を何よりも嫌うようになった彼女を、いつ逃げ出すか分からないから、なんて言って、足りない道具を取りに戻ったチョ博士の代わりに見張っている私。


「美味しそうに食べるのね、それ」


『だって美味しいから』


「食べ過ぎも良くないわよ。肌に良くない」


『この体になってから、1度も肌が荒れたことは無いから大丈夫。』


横たわって待っていればいいのに、よっぽど検査機器全てが嫌いらしい。備え付けられたソファに腰掛けているから、ハナは足をブラブラと動かしていた。


『ねぇ、早く休みたいんだけど』


「博士がまだ戻ってないでしょ」


『じゃあ検査しなくていいわよ、やったって意味無い』


「そういう訳にも行かないでしょ？貴方のためでもあるの」


『別に……私のためだなんて…こっちはそんなこと思ったこともないし、毒で死ぬならそれでいい。』


毒で人を殺してるんだからそれは当然の報いよ、何を思っているの分からないけれど、手に持つそれを見つめながら呟く彼女。


『……ところで、ナット』


「なに？」


『どうしてあそこに、彼（・）がいるの？』


さっきの表情はどこへ消えたのか、ラボ越しにチョ博士と話す相手に、ハナは眉間に皺をグッと寄せてその様子を見ているから、私も思わず笑を零してしまう。


「博士とは何もやましいことなんてないわよ」


『違う。そんな心配してるんじゃない』


「あら、てっきり彼と話す博士に妬いてるのかと思った」


『そんなわけない！……やめてよ、ナット、からかわないで』


「正直になればいいのに」


『私はいつだって正直……ああ待って、嘘でしょう！？彼こっちに来る…！』


彼女の言葉に振り向けば、パネルに入力をしている彼がいて、正面にいるハナに目を向ければ、手に持っていたピーナッツバターサンドを隠そうと、動き出していた。


「馬鹿ね、ほんと」


そんな彼女の動きに、小さく呟くと扉が開き片手に何かを持って現れた彼は、自分に後ろ姿を見せているハナを見ては、ニンマリと笑みを浮かべる。


「よぉ、ハナ」


彼女は隠す場所が見つからなかったのか、食べかけのそれをゴミ箱に落とし振り向いたから、ついに私は声を上げて笑った。