ワールドブレイク
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キーンコーンカーン、と定番のチャイムが鳴っても、静かになる気配は一向に無い教室。
今日は牛尾先生の授業というのに、こんなに騒いでいて大丈夫なのか。
と、言っても元から授業の準備をして授業五分前から静かに待機している私には関係ない事だが。
特に静かにする気配が無い連中といえば、(何故か)私の隣の席周辺に固まっているチーム「サティスファクション」とか呼ばれる四人の男子生徒だ。
チラリと彼らには分からないように教科書で顔を隠しながら盗み見る。
「鬼柳、今日は遅刻しなかったな」
「フン、どうせまた女に逃げられたんだろう」
「ちげーよ! 今はフリーってか今日はクロウと朝までゲームしてた」
「コイツのおかげで一睡も出来なかったぜ……この満足野郎! 俺の安眠を返しやがれ!!」
不動遊星とジャック・アトラスはまだ静かな方とはいえ、クロウとリーダーの鬼柳京介は普段からこんな調子だ。
いつも遅刻(これは四人共か)や居眠り、授業妨害、その他問題行動で先生に叱られる事はしょっちゅうで、反省する気はナシ。
こんな問題のありすぎる連中はさっさと退学させればいいものの、何故か生徒達には先輩・後輩関係なしで人気者だった。
おまけにクロウ以外の三人は成績も私よりも上のトップクラス。
こんな奴等に負けている私の方がありえない。
何でこんな連中が人気あるのよ!
皆目を覚ましてよ!!
そう皆に呼びかけたいが、空気を読めば普通に言えるわけもない。
だから、こんな奴等とは絶対に関わらない事にした。
ああいう奴等に関わって問題にでも巻き込まれたら最悪だから。
「オラオラ、お前ら授業始めんぞー。席座れー!」
そんな事を考えていたら、いつの間にか牛尾先生がクラスにやって来ていた。
牛尾先生は怒るとかなり怖いと有名なので、流石のクラスの連中も大人しく元の席へと座る。
例の四人は元から自分の席に座っているので移動はしなくて良いが、相変わらず喋りっ放しだった。
この四人を相手していたら恐ろしくキリがないと分かっている牛尾先生は、出席を取ると四人に少しイラっとした表情を浮かべつつ教科書を開く。
私も手に持っていた教科書と机のノートを急いで開き、暫く先生の話を聞いていたが、
横からまたあの耳障りな四人の声が聞きたくもないのに私の耳へと入ってきた。
「なあ、クロウ。お前いつになったら女と付き合うんだよ」
「んなっ!? き、鬼柳、何言い出すんだよ、急に!」
「クロウは既に好きな女がいるそうだぞ」
「ゆ、遊星、テメー!」
「下らん、さっさと告白すれば良いものを」
「さっさと出来ねえから困ってんだろ!」
鬼柳がニヤニヤ顔を浮かべつつ、クロウは頬を赤くなって否定している。
へえ、男の色恋話も聞いていて悪くない……
って違う! 違う! 何真剣に聞いてるのよ!
つい連中の話に耳をダンボにさせてまで聞いていた私は、すぐに牛尾先生の話へと集中させた。
しかし、時は既に遅かったというようで。
「……んでだ、北村。今の問題の答え、さくっといつものように言ってくれ」
「へ?」
ボーっとしていたからか、それとも北村は出来る奴だと思われているのか、どっちにしろ私は何故かこのタイミングで当てられた。
ちょ、ちょっと待って! 今の問題ってどこ!?
何も話を聞いていなかったので、頭はパニック状態寸前だった。
とりあえず教科書を見渡して探してみるものの、どの問題なのかサッパリ分からない。
問題が分かれば答えが分かるのに!
「聞いてません」と素直に言った方が普通は妥当かもしれないが、それじゃ私のプライドが許さない。
学級委員で優等生の私が先生の話を聞いてなかったなんて、絶対にあってはならない事…
「③だ、答え」
「えぇ、えっと、さ、③!?」
「そうだ、③だ。ほんでから――」
……た、助かった。一体誰が答えを言ってくれたか分からないけど、きっと神様とかのお言葉だったに違いない。
恐らく日頃から行いの良い私へのご褒美だろう。
一つの(自分にとって)大きな危機を乗り越えた私は、胸に手を押えて安堵した。
ホッとしたその瞬間、机の上に丸められた紙くずのような物体が飛んできた。
キョロキョロと前方を見渡すが誰も謝って来る気配ではない。
どうやら間違って来たようではない。
という事は、私宛のもの……なのだろうか。
とりあえず慎重に先生の隙を窺いながら中を開けてみた。
ぐちゃぐちゃの紙にはこう書かれていた。
『優等生でも話聞いてねえ時があんだな(笑)
今日放課後、体育館倉庫で待ってるぜ☆
鬼柳京介』
お世辞でも綺麗とはいえない字で……って、問題はそんな所じゃない!
鬼柳京介……鬼柳京介って!?まさか私に答えを教えてくれたのって――
バッと顔を真横に座っている鬼柳京介へと向ける。
鬼柳京介は私の事を既に見ていてニコッとまるで悪魔のように微笑むと
「俺に借り作りたくなかったら来てくれよな、優等生優香ちゃん」
大きな危機を乗り越えた後、
さらなる大きな危機が立塞がる事はベタなお話ではよくある事だ。
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