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「鬼柳くんー!」
元気いっぱいに俺の名(苗字という事はさておき)を呼び、俺の元へ愛くるしく駆け寄ってくるサティスファクション紅一点兼(俺の)アイドルの優香。
今日の優香も一段と可愛い。
日本のどこを探してもこんなに可憐で満足できる女がどこにもいねぇ!
なにやら急いでいるようで走っているようだが、そんなに急がなくても俺は逃げたりはしない。
その前に優香を前にして逃げる男などいるワケがない。
そんなクソ野郎が仮の仮の仮に居たとしたら、今すぐにでも俺が――いや、サティスファクション全員でそいつらの元へ行き、デュエル関係無しのリアルファイトでブッ飛ばしてやるところだ。
そんな地球が引っ繰り返っても有り得ないであろう事を企んでいると、優香があと数秒で俺の元へと来るところまで来ていた。
俺はベッドで寝ていた身体を上半身だけ起こすと、いつでも優香が胸に飛び込んできてもいいように、両手を広げ俺は身構えた。
「さあ、優香! 俺が満足させてや」
「クロウくんってどんな女の子がタイプかな!?」
俺の胸に飛び込んで来る事もなく隣へと座り込んだ優香は、少し恥ずかしそうに頬を染めながら俺の台詞を遮って訊いた。
クソ、なんて可愛い訊き方だ! しかもベッドでそんな表情とかねえよ!
と、思わず心臓がドキッとしたのは、ここだけの秘密にしておく。
今の彼女の顔で、俺を新手の放置プレイさせた事は勘弁してやる事にした。
単に優香は照れ屋だから俺の胸に飛び込めなかったのかもしれないが、前者の理由でも俺は十分いける。
さて、問題はその優香が訊いた内容だ。
――クロウの好きな女タイプ?
何故俺にそんな事を聞く、とまず突っ込みたいところだが、きっと優香の友達か知り合いがクロウの事に好意を持っており、優香に相談をして返答に困った優香は、一番頼りになる俺の元へと来たわけだろう。
うん、流石はサティスファクションリーダー俺、完璧な見解だ。
とりあえずクロウの好きな女のタイプは、以前チーム全員で行ってみた雑誌に載っていた占いでクロウに聞いた時の内容を話してりゃぁいいだろう。
これでようやくクロウにも女が出来るキッカケにもなるし、俺と優香もより仲が深まり一件落着というわけだ。
そんなハッピーエンドを夢見ながら、ようやく彼女を抱擁(+a)のために広げた両手下げて口を開く。
「クロウの好きな女のタイプはな……、確か元気で子供が好きな女って言っていた気がすっけど」
「ふーん、元気で子供が好きな女……かぁ……」
俺が質問に答えた途端、優香は先程より顔を赤く染めるとぼんやりして既に俺を見ずに明らかに明後日の方向を見ていた。
――ちょっと待てよ、この展開は何だ。
今の優香からの様子からすると、どうみても恋する乙女(某モンスターではない)にしか見えない気がしてならないんだが。
もちろんその相手は俺という事に変わりはないはずだが、優香はきっと相手の女とクロウが仲睦ましいところを考えているはずに違いない! そうに決まっている!
それにこんな無駄な心配など彼女に確認すればハッキリするはずだ、間違ってもクロウが好きだとは―――
「優香、多分ってか絶対万が一ありえねえ事とは思うが、もしやクロウの事が好きとか言わねぇよな……?」
「ふええっ!? な、何で分かるのー!? さり気無く聞いたつもりだったのに!」
一瞬、時が止まった。
その一瞬の間に、何か黒い神様のような物体がうっすら見えたが、きっときっと多分俺の気のせいだということにしておく。
もちろん「友達」や「仲間」としての好きだと信じたかったが、優香の頬を可愛らしく赤らめ恥ずかしがっている様子を見てどうやらガチで好きらしい。
―――って、いやいや、冗談じゃねえ!
俺という存在がありながら、何故クロウなんだ!?
まずその前に俺だって優香にアピールしてきた(はず)だ。
優香も俺の事が大好きでお互い言葉は出さなくとも相思相愛の仲だと信じていたんだぞ!
まさか優香、この俺の事を弄んで………と、まぁ、ぶっちゃけ流石の俺も優香とクロウの仲の良さは知っていた。
知っていた、と言っても俺は優香のアピール(まったく相手にされなかったのは俺の気のせい)最近ようやく気づいたが、遊星とジャックは既に前から知っていたらしい。
何故俺に黙っていたは未だ謎だが。
ただお互い照れ屋に奥手な上、なかなか一歩前へ踏み出せず仲の良い友人かチームメイトの関係のままでいた。
今回、俺にクロウの好きなタイプを聞き出したという事は、今までの俺の優香の行動データから考えると近々クロウに告白するつもりだろう。
―――しかし、俺だってアイツらが相思相愛だったとしても優香の事を諦めるという選択肢は一切ない。
このままクロウに良いとこ取られっぱなしだと俺が満足できるわけねえだろ!
その時、脳内でこの状況にピッタリで満足なイイ作戦を思いついた。
さすがサティスファクション・リーダー俺、作戦を思いつく速さは伊達ではない。
そんな自分に心の中で一人そっと満足した。
「そんなの優香を見りゃ分かるだろ……、分からねえ奴とかいねえって」
「絶対知らないと思ってたのに……! そんなに私がクロウの事好きってのバレバレなのかなぁ」
「なあ、優香。良かったら告白する練習とかしたらどうだ? 俺をクロウだと思って……な?」
「えええっ!? そそそ、そんなの今すぐできないよ……! それに私告白なんてまだっ……!」
やはり思った通りだ。優香は、顔を林檎のように真っ赤にさせ両頬を手で押さえて俺から身を逸らした。
優香の行動パターンなど俺に掛かれば数百通りはすぐに予想できる。まさに計画通り。
「じゃあ、俺が最初に見本見せてやるよ。それで良いだろ?」
「え、見本って?」
「――俺が優香を口説くって事だ」
恥ずかしがる優香の両腕手首を両手で掴み、優香の身体をベットへと静かに押し倒し覆い被さった。
視界が反転したからか、突然俺がこんな体制になったのかのだろうか、とにかく驚いて言葉が出ない様子の優香に、二ヤリと微笑み優香を見据える。
「き、鬼柳くん……?」
「お前って可愛いよな……」
普段よりもトーンの低い声で優香の耳元で囁いてやる。
優香の反応を横目でうかがうと顔を赤くさせているようだ。
幸いここは俺の隠れ家。
他の奴など居るはずもなく、ここには俺達二人だけだ。
「クロウにやるのは勿体ねえくらいの女だ」
クロウ、という言葉に反応したのか、ビクッと肩を揺らす。
勿体ねえどころか、他の男にも渡したくもねえくらいの女だが。
「なあ……今からでも遅くねえ。クロウより俺の事好きになれよ。俺はずっと前から優香の事が―――」
優香の瞳を見つめながら、顔を少しずつ近づけた。
最早、この告白は俺にとって見本でもお芝居でも何でも無かった。
初めて女にこんな本気で告白したかもしれない。
自分が情けない顔になっていないかどうか不安なくらいだ。
瞳を閉じて優香の唇へと重なろうとした――その、あと一歩のところで、俺が今最も聞きたくない奴の声は聞こえた。
「おい、鬼柳ー。遊星が直してくれたお前のデュエルディスク届け……に!?」
この俺の隠れ家を知っている奴は、俺と優香とあとはサティスファクションのメンバーくらいだ。
そして無神経にドアをノックせずにいつも開けて入って来る奴といえば―――
「あ、クロウくん!」
優香は何事もなかったように優香は上半身を起こし、その際に彼女の頭が俺の鼻に見事クリーンヒットした。
「ぐお!」と声を上げ色んな意味で鼻血を出している俺を気にも止めず優香は、クロウの元へと笑顔で駆け寄って行った。
くそ、放置か!? また俺を放置するつもりなのか!? そんなお前も大好きだけど!!
一方のクロウはというと、自分の好いてる女が俺にベットで押し倒されている様子を見たのがショックだったのか、(俺の)修理されたばかりのデュエルディスクを床にカッシャーンと勢いよく落とし呆然と立ち尽くしていた。
呆然としているのは俺もだが。
――そういや、クロウの奴にデュエルディスク頼んで……って、何でこんな時にお前はやってくるんだよ! 空気読め! 空気を!
鼻血が止まらないので、口に出せないのが悔しくてならない。
「お、おまっ……優香!? 今鬼柳に……その……ベットで何かされ……てたんじゃないのか……?」
ようやく事態を飲み込んだのか、自分の元へと普段通りに駆け寄って来た優香にクロウは恐る恐る訊いた。
てめえが此処にやって来なければ、今頃俺は優香とお前の想像通りの事をするはずだったがな!
ティッシュで鼻を押えてるので声に出せないのが悔しい。
「うん、クロウくんの口説き方の見本を鬼柳くんに……あっ、ち、違うの! こ、これはその……」
「はあ、俺の口説き方? ………って、それって…」
普段から優香はよくドジっ子面を連発しているが、こんな所でもうっかりドジってしまった。
あんなに告白出来ないと恥ずかしがっていたのに、口説く相手の名前を本人を目の前にしてさらりと言いやがった。
そのドジのおかげで、なんだか二人とも頬が真っ赤になって誰が見ても良い雰囲気が出ている。
ちょ、ちょっと待て。これじゃ俺が二人の恋のキューピットとかいう奴になっているんじゃ……?
「あの、迷惑かもしれないけど、私、ずっとクロウくんの事好っ……きゃっ!」
「ッ、迷惑なわけねえだろ、俺だって優香の事ずっと……好きだった」
「く、クロウくん……」
優香の告白と同時に、クロウが優香をギュと抱き締め背中に腕を回した。
それから優香もクロウの背中に腕を回すと、クロウは優香へと顔を近づけ―――って、この野郎!!
優香を抱きしめてキスしようなんて、あと十年は早えんだよ、クロウ!
もう鼻血なんて言ってる場合じゃねぇと直感した俺は第三者から見ればバカップルにも見えなくもない抱き合っている二人を急いで引き離し、どさくさに優香を自分元へと引き寄せた。
「ちょっと待てぇぇえええ! クロウ、お前狙って入って来ただろ!? 大体こんな如何わしい事なんて、リーダーの俺がまず認めねえ!」
「は!? 俺は偶然入って来ただけってか、一番如何わしい事しようとした奴が何言ってやがる! さっさと優香返せ!」
「ふざけんなよ! 俺が先に優香を口説いてたんだ! それを邪魔しやがって……こうなったらデュエルで決めようじゃねぇか!」
「はああっ!? お前、やっぱりアレ口説いてたのかー!? ふざけんな、誰がテメーとデュエルなんか……」
クロウがあれこれ何か言ってる内に、俺はどさくさに引き寄せた優香と向き合う形になり、片手で腰を持ちさらに身体を密着させる。
もちろんクロウが邪魔などする間のなく、まさに一瞬の事だ。
そうしてもう一つの空いた手で頬に触れ、「こんな男いたら絶対彼氏にしなきゃ満足できないワ!」的な顔で優香の瞳を見据えた。
「なあ、優香……さっきの告白は見本なんかじゃねえ。今からでも間に合う。俺に変えろ」
「は、はい?」
「大丈夫だ、クロウなんか一晩で俺が忘れさせてやる」
「え、えっ~と……その……」
この至近距離の俺の顔と美声にやられたのか、優香の顔は真っ赤。
どうやら優香には少々刺激が強すぎたようだ。俺も罪な男だと感じちまう。
――ともう少しで落とせそうという所で、クロウの野郎が「鬼柳、優香から今すぐ離れやがれ~~!!」と血相を変えて叫びながら、すぐに俺から優香を奪い取った。
俺はクロウに聞こえるようにチッ!とわざとらしく舌打ちをした。
「あと少しだったのによ……」
「あと少しもあるか! 人の女に手を出すヤツがいるかよ!」
「こうなったらさっきも言った通りデュエルで勝負だ! 勝った方は優香と付き合うってなぁ!」
「……話聞いてねえ。上等じゃねえか、その代わり俺が勝ったら二度と優香を口説くんじゃねえぞ!」
そして俺達はデュエルディスクを装着し、デュエルを始める。
流石は遊星。デュエルディスクの調子も故障前より良くなっていた。満足、満足。
口で言ってもラチがあかない時は、デュエルで物事を決める――それが一人の女を巡っての時でもだ。
もちろん俺が万が一の万が一、この勝負に負けても俺は諦めるつもりは一切ない。
クロウからだって奪う自信は充分ある。
なにしろ優香を満足させられるのはこの俺だけだからな!
サティスファクション☆タイム!</b>
「鬼柳とクロウは何をしている?」
「優香を賭けてデュエルしているらしい」
「そうか……」
「……ジャック、お前もまさか優香のことが」
「か、勘違いするな、遊星! 俺は別に優香のことなどどうでも……誰が心配などするかッ!」
「…………」
fin.
2009.03.20
加筆修正 2010.05.22
(元々昔のサイトでアップしていた夢でしたが、こんなカオスな出来でも気に入ってるので晒してみました。しかし、タイトルもひどい件)