敦君のジェラシー
お昼過ぎ
敦は船の汽笛の音に目を覚ました。
こんな時間に目が覚めるのは何時ぶりだろう。
のそのそと蒲団から這い上がり、伸びをする。
今日は非番。
特に此れと云ってする事も無い。
鏡花ちゃんも疾っくに出社して、部屋には
誰も居ない。
暇だなあ…
寝間着から着替える気力も起こらず、ただ押し入れの天井を見詰める。
今頃、彼奴何してるのかなぁ
…会いたいなぁ…なんて。
彼奴が寮に来る事なんて滅多に無いけど。
まあ、此処は武装探偵社の寮。
彼奴にとって、此処に来るという行為は、
敵の巣窟に単身で乗り込むと同じ事。
だから、彼奴が此処に来ないのは仕方の無い事。
わかってる。
わかってるけどさあ!
「偶には会いに来て呉れたっていいじゃんか」
云いながら笑いがこみ上げて来た。
此れじゃ嫉妬の強い面倒臭い女みたいだ。
否、でも強ち間違って無いなぁ。
僕は屹度、彼奴が思ってるより、もっと
ずっと独占欲も嫉妬も強い。
愛想を尽かされたく無い一心で、今迄隠して
来たけど。
何処迄隠せるかなあ…
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