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委員会が嫌いだった。
委員会決めの日、最悪なタイミングで熱が出てしまったせいで休んだ私は皆が立候補しなかった学園祭実行委員に決まってしまったのだ。
最悪だ。学園祭実行委員は猛烈に忙しいと聞く。
案の定聞いていた通り、私は夏休みだというのに毎日学校に来ては走り回っていた。
夏は大会が多い、その為運動部はこぞって委員会の仕事から抜けていくから余計に忙しさに拍車がかかっている。
「ぶっ倒れそう…」
いくら校舎内は冷房がかかっているとは言え、節電節電と叫ばれる昨今だ。
言うほど冷えていない。
そんな中走り回ったらそりゃぶっ倒れそうになる。
「運動部のバカヤロー!」
「悪かったさー」
心臓が跳ねる。
まさか返事が来るとは思わなかった。
完全にひとりだと思っていた私は挙動不審になる。
「え、え、え、ごめんなさいって、え、誰?」
「わんでさーわん!」
オレオレ詐欺みたいに言われても…名を名乗ってくれないかとも思ったがこの声は聞き覚えがある。
「甲斐先輩…?」
「正解〜!」
声がした方を振り向けば冷たいジュースが頬につく。
「冷たっ!」
「でーじ暑いやっし、冷たいもの飲まんとやってられんさ〜」
そう言ってジュースを渡して私の横に座る。
甲斐先輩の手にもジュース。
「大会終わってわんも手伝えるからちばりやー」
「そう言って甲斐先輩、いっつもフラフラどっかいくじゃないですか」
笑って誤魔化す甲斐先輩の手元でカシュッと音を立てて缶が開く。
私もそれにならって缶を開ける。乾いた喉にサイダーの炭酸が染みる。
ぷはーっと同時に吐き出してお互い顔を見合せて笑った。
「これからは大丈夫!名字が委員会、でーじ楽しかったってなるようにわんもちばるさ」
「そんな退屈そうにしてました?」
「してたしてた」
バレてたかーと笑う私に甲斐先輩もヘラりと笑って私の頭をぽんぽんと撫でた。
自分の意識が頭に集中するのが分かる。
甲斐先輩は思っているよりチャラいのかもしれない。
髪色も茶髪だし…。
「そんなことしてたら勘違いされますよ〜」
「は?名字だけやし」
私だけという言葉にサイダーで冷えたからだが一気に熱を帯びる。
甲斐先輩の顔が見れない。
でも、もし甲斐先輩も同じようにサイダーの水分が蒸発するような、暑くないのに目眩がするような、この感情を持っているのなら、今年の委員会は少しは楽しくなるかもしれない。