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本日バレンタインデー。
私はこの日が嫌いだった。
甘ったるい雰囲気にキャッキャと騒ぐ人達。
私もそんな1人だった。ちょうど一年前のこの日までは。
「おはよ」
自分の席で不貞腐れている私とは対照的に大量のチョコを持った男が横に座る。
「今年も大量だね」
「名前はくれないわけ?」
「何が悲しくて元彼にチョコあげなきゃなんないの」
そう私の隣の席に座る男、丸井ブン太は元彼だ。
去年のバレンタインデー、チョコを持ってこなかった私と食べたかった彼で大喧嘩してしまいそのまま別れてしまったのだ。
今思えば本当にしょうもない理由だ。
そんな私たちに神様はいたずらでもしたのだろうか、何の因果か同じクラスになり、そして隣の席になった。
「そんな言い方するなよな」
不貞腐れたように彼は言う。
本当は違うのだ。実はチョコは持ってきている。
去年だってそうだ。
チョコを作ったのだが失敗してしまったのだ。
素直に話せばいいものを何故かお菓子作りが下手だとバレたら幻滅されると思った私は作ってないと意地を張ってしまった。
あの日の後悔が身体中を巡る。
「俺は持ってきたけどな」
「え」
後悔に身を埋めかけた私の目の前にひとつのチョコ。
ご丁寧にラッピングもされている。
「去年のあの日からずっと後悔してたんだぜ…同じクラスになるし忘れるなんて無理だろぃ」
私には勿体ないくらいの彼の気持ちに教室だと言うことを忘れて涙が出そうになる。
「私もずっと忘れられない」
涙を堪えながら話したもんだから声の震えが止まらない。
そんな私を揶揄うでもなく優しい顔でブンちゃんはゆっくり頭を撫でてくれた。
今なら言ってもいいだろうか。
優しいブンちゃんに甘えて去年の答え合わせをしてもいいだろうか。
「本当はね、」
全て話し終わった後にブンちゃんにチョコを渡すと飛びっきりの笑顔で喜んで、これからもシクヨロと抱きついてきたもんだから、クラス中の皆から拍手を頂く羽目になってしまったのだった。