キーンコーンカーンコーン

昼休憩を知らせるチャイムがなる。
それとほぼ同時にお腹の虫がぐーっと鳴いた。
嫌な予感。横を見れば隣人はニヤニヤとした顔で私をからかい始めた。

「名字のお腹も時間に正確だね」
「うっさいなー！」

4日目となればからかいを適当に流すのも慣れたものだ。
何より今の私は幸村くんを構うよりもしなければならないことがある。
カバンから財布を取ると急いで立ち上がった。

「あれ、お弁当は？」
「弁当忘れたの！早く行かなきゃ購買すぐ売り切れちゃうから」

慌てて教室を出る私の横に幸村くん。

「ってなんで着いてくるの？！」
「自意識過剰じゃない？俺は学食派だから」

廊下は走っては行けません！なんて誰が言い出したか分からない暗黙のルールを守るべく足早に歩く私のスピードに着いてきてる辺り、自意識過剰じゃないと思うのだが…そこに触れると面倒なのでスルーする。なんせ私は急いでいるのだ。

「学食のカツカレー好きだって聞いたけど学食は行かないの？」

誰に聞いたんだ、その情報…と言いかけたが、どうせ犯人は丸井くんだろう。
しかし私にはカツカレーに苦い思い出があるのだ。

「去年カツカレー食べ過ぎて太ったから今年は我慢する」

その肉は未だに私の体にまとわりついている。横の人みたいにしぶとい奴らだ。
ふと、幸村くんの手が伸びて

「ぎゃ！」

変な声が出た。
それもそうだ。今、私の横腹に着いている贅肉1号が幸村くんの手に掴まれているのだ。

「な、な、何すんの！？」
「どれだけ太ってるんだろうと思って」

顔が真っ赤になるのが分かる。

「それセクハラだから！」

幸村くんの腕を掴んで贅肉1号から引き剥がす。
ちらりと幸村くんを見れば面白い玩具を見つけた時のような顔をしていた。
しまった、と思った時には既に遅い。
その後贅肉2号と3号も呆気なく掴まれるのであった。