春の微睡みにうとうとしていると横からガタリと音がなった。
朝練が終わったのであろう幸村くんが椅子に座った音だ。

「朝からうとうとして寝不足かい？」

もうちょっと微睡んで居たかったが幸村くんが来たと言うことはもうすぐホームルームが始まるということだ。少しあくびをして手を横に振る。

「寝すぎて眠いだけだよ」
「怠惰だなあ。ヨダレくらい拭いといた方がいいよ」
「えっ嘘？！」

一気に目が覚めて慌てる私の横でくつくつと彼は笑った。ギギギギと錆びたロボットみたいな音がなりそうな動きで横を見る。

「嘘だよ」

目尻に涙を貯めて笑う幸村くんと目が合う。

「名字さんってからかいがいがあるね」

またくつくつと笑う。
昨日といい今日といいなんなんだこいつは！



「なんなんだって言われてもなあ」

目の前で困ったように頭をかく丸井くん。
休憩時間にたまたま見かけたのをひっとらえて今に至る。

「悔しい！ぎゃふんと言わせたい…！弱点とかないの？！」

詰め寄れば詰め寄るほど丸井くんは困ったように顔を引きつらせていく。

「柳とかなら知ってるかもだけどよ」
「私、その柳って人知らないもん！」

知らない人に話しかけられるほど陽キャでは無い。
腹いせに丸井くんにパンチをお見舞いする。
大して痛くもないパンチを止めることもなく横目で見て幸村くんにもパンチしたら？と一言。それが彼からでてきた唯一のぎゃふんと言わせたい私への案だった。