不運はつきもの。
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夜の海軍本部は、昼間よりもずっと静かだ。
廊下を歩く足音もまばらで、灯りだけが淡々と続いている。
少将室の扉の前を通りかかったとき、ロシナンテは足を止めた。
中から、紙をめくる音が聞こえる。
(……まだ仕事してるのか。)
帰還したのはついさっきのはずだ。
しかも、あの任務帰りだ。疲れていないはずがない。
少し迷ってから、軽くノックをした。
「……入るぞ。」
「どうぞ。」
扉を開けると、机に向かったカイトがいた。
コートは脱いでいるが、姿勢は崩していない。ただ、顔色ははっきりと悪い。
「こんな時間まで……。」
「お疲れ様です、ロシナンテさん。報告書、今日中にまとめたくて。ロシナンテさんこそ、こんな時間まで?」
いつもの、律儀な返事。
親しい仲ということで、中将呼びじゃないことだけでも胸の奥が少しだけ締まる。
「俺は今日夜からだ。……顔色が良くない。水、持ってくるよ。」
「え、いえ、大丈夫で——」
聞く前に、ロシナンテは部屋を出ていた。
(落ち着け……ただの部下、いや、今は少将だ。)
そう言い聞かせながら、給水所で水を汲む。
――手が、少し震えている。
戻ったとき、カイトは椅子に深く座り直し、目を閉じていた。
「ほら。」
「いつもありがとうございます、優しくしてくださって。」
差し出そうとした、瞬間、心躍る言葉につい気を緩めてしまった。
「……あ。」
足が、何かに引っかかった。
次の瞬間、コップが傾き、水が勢いよく零れる。
「っ、すまんカイト!!!」
水はカイトの胸元を直撃し、白いシャツが一気に色を変えた。
「だ、大丈夫です、これくらい——」
そう言いながら立ち上がろうとするカイトに、ロシナンテは慌てて近づく。
「だめだ、冷える……脱げ、いや、脱がす、違う……!」
完全に混乱したまま、シャツの裾を掴む。
――びりっ。
「……」
嫌な音が、静かな部屋に響いた。
「あ。」
裂けたシャツ。
露わになった、ほどよく鍛えられどこか魅力的な上半身。小さい傷はあるけども、白くて綺麗な肌にある桃色の突起が目に入る。
一瞬、時間が止まる。
「…………」
ロシナンテの顔が、みるみる赤くなる。
「す、すまない!! 本当に!!」
「え、あの、ロシナンテさん!?」
視線を逸らし、勢いよく後ずさる。
「後で……何か、必ず詫びる……!」
そう言い残し、逃げるように部屋を出て行った。
残された部屋で、カイトはしばらく呆然と立ち尽くす。
「……。」
破れたシャツを見下ろし、小さく息をついた。
「……相変わらずだな。」
ロシナンテのドジも、
カイトのトラブル体質も、
今に始まったことじゃない。
(だから、あんまり近づかない方がいいんだけど……。)
そう思いながら、カイトはクローゼットを開け、替えのシャツを引っ張り出す。
なぜあんなに慌てていたのか。
今更、どうしたというのか。
首を傾げつつ、新しいシャツに袖を通す。
夜は、まだ長い。
報告書も、終わっていない。
そして――
また一人、静かに拗らせた上司が増えたことを、
カイトは知る由もなかった。
廊下を歩く足音もまばらで、灯りだけが淡々と続いている。
少将室の扉の前を通りかかったとき、ロシナンテは足を止めた。
中から、紙をめくる音が聞こえる。
(……まだ仕事してるのか。)
帰還したのはついさっきのはずだ。
しかも、あの任務帰りだ。疲れていないはずがない。
少し迷ってから、軽くノックをした。
「……入るぞ。」
「どうぞ。」
扉を開けると、机に向かったカイトがいた。
コートは脱いでいるが、姿勢は崩していない。ただ、顔色ははっきりと悪い。
「こんな時間まで……。」
「お疲れ様です、ロシナンテさん。報告書、今日中にまとめたくて。ロシナンテさんこそ、こんな時間まで?」
いつもの、律儀な返事。
親しい仲ということで、中将呼びじゃないことだけでも胸の奥が少しだけ締まる。
「俺は今日夜からだ。……顔色が良くない。水、持ってくるよ。」
「え、いえ、大丈夫で——」
聞く前に、ロシナンテは部屋を出ていた。
(落ち着け……ただの部下、いや、今は少将だ。)
そう言い聞かせながら、給水所で水を汲む。
――手が、少し震えている。
戻ったとき、カイトは椅子に深く座り直し、目を閉じていた。
「ほら。」
「いつもありがとうございます、優しくしてくださって。」
差し出そうとした、瞬間、心躍る言葉につい気を緩めてしまった。
「……あ。」
足が、何かに引っかかった。
次の瞬間、コップが傾き、水が勢いよく零れる。
「っ、すまんカイト!!!」
水はカイトの胸元を直撃し、白いシャツが一気に色を変えた。
「だ、大丈夫です、これくらい——」
そう言いながら立ち上がろうとするカイトに、ロシナンテは慌てて近づく。
「だめだ、冷える……脱げ、いや、脱がす、違う……!」
完全に混乱したまま、シャツの裾を掴む。
――びりっ。
「……」
嫌な音が、静かな部屋に響いた。
「あ。」
裂けたシャツ。
露わになった、ほどよく鍛えられどこか魅力的な上半身。小さい傷はあるけども、白くて綺麗な肌にある桃色の突起が目に入る。
一瞬、時間が止まる。
「…………」
ロシナンテの顔が、みるみる赤くなる。
「す、すまない!! 本当に!!」
「え、あの、ロシナンテさん!?」
視線を逸らし、勢いよく後ずさる。
「後で……何か、必ず詫びる……!」
そう言い残し、逃げるように部屋を出て行った。
残された部屋で、カイトはしばらく呆然と立ち尽くす。
「……。」
破れたシャツを見下ろし、小さく息をついた。
「……相変わらずだな。」
ロシナンテのドジも、
カイトのトラブル体質も、
今に始まったことじゃない。
(だから、あんまり近づかない方がいいんだけど……。)
そう思いながら、カイトはクローゼットを開け、替えのシャツを引っ張り出す。
なぜあんなに慌てていたのか。
今更、どうしたというのか。
首を傾げつつ、新しいシャツに袖を通す。
夜は、まだ長い。
報告書も、終わっていない。
そして――
また一人、静かに拗らせた上司が増えたことを、
カイトは知る由もなかった。
