不運はつきもの。
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ヒナは、書類に目を落としたまま小さく息を吐いた。
「……戻ってるわね。」
机の上に置かれた報告書の束。その中に混じる、見慣れた筆跡。
カイト――同期であり、問題児でもある、あの男のものだ。
悪い意味ではない。
ただ、あまりにも“いつも通り”すぎるだけだ。
「ヒナ、この案件、お前の管轄だったよな? 確認できるか?」
噂をすれば、本人が来た。
白いスーツに正義のコート。何一つ乱れていない顔。
「いいわよ。……また巻き込まれたの?」
「え?」
「いいから座りなさい。」
椅子を指すと、素直に腰を下ろす。
その仕草から昔から変わらないことに、ヒナは内心ため息をついた。
「廊下で海兵が転んだだけだぞ。」
「“だけ”ね。」
ヒナは書類をめくりながら、ちらりと視線を向ける。
襟元が、ほんの少し乱れている。
「……カイト。」
「なに?」
「自覚は?」
「何の?」
即答。また内心でため息。この件に関しては何度も指摘しているが、ここまで来ると、もう才能だ。
「いいわ。業務の話に戻るわね。」
ヒナは淡々と報告内容を確認しながら、雑談のように話を続ける。
「スモーカー君、戻ってきてるわ。」
「あぁ、さっき会ったぜ。」
ほんの少し、嬉しそうに声が弾む。
それを見て、ヒナは書類を持つ手を止めた。
(……はいはい。)
「さっき廊下で会った?」
「うん。少し話した。」
「“少し”ね。」
「?」
何も分かっていない顔。
ヒナは内心で頭を抱える。
(スモーカー君がどんな顔して見てるか、少しは気づきなさいよ。)
だが言わない。
言えない。
だって、言ったところで――
「ヒナ、何か変なこと言ったか?」
「別に。」
即答して、書類を返す。
「ただ、あの男は不器用なのよ。」
「スモーカー?」
「他にも不器用なのはいるけど。」
少将は首を傾げたまま、納得していない様子だ。
ヒナは椅子に深く座り直し、天井を仰ぐ。
(どうにか、くっつけられないかしら……。変な奴に捕まる前に。)
スモーカーは分かりやすい。
視線も、距離感も、態度も。
問題は――
(こっち。)
無自覚の塊。
歩くトラブルメーカー。
しかも本人は常に「自分が悪い」で完結している。
「カイト」
「なに?」
「今度、三人で食事でもどう?」
「三人?」
「ヒナと、あなたと、スモーカー君。」
一瞬だけ間が空く。
「久々だな。いいぜ、予定合わせる。」
何の警戒もない返事。
ヒナは口元を隠して、小さく笑った。
(第一段階、成功。)
仕事に戻る少将の背中を見送りながら、ヒナは決意する。
(少なくとも、スモーカー君が拗らせすぎる前に。)
面倒だけど、
同期として、
そして――
「ヒナ、ちょっとお節介を焼くわ。」
誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。
ただ、食事会はただの食事会になり特に何も起こらなかったそうだ。
次の作戦を練るヒナだった。
「……戻ってるわね。」
机の上に置かれた報告書の束。その中に混じる、見慣れた筆跡。
カイト――同期であり、問題児でもある、あの男のものだ。
悪い意味ではない。
ただ、あまりにも“いつも通り”すぎるだけだ。
「ヒナ、この案件、お前の管轄だったよな? 確認できるか?」
噂をすれば、本人が来た。
白いスーツに正義のコート。何一つ乱れていない顔。
「いいわよ。……また巻き込まれたの?」
「え?」
「いいから座りなさい。」
椅子を指すと、素直に腰を下ろす。
その仕草から昔から変わらないことに、ヒナは内心ため息をついた。
「廊下で海兵が転んだだけだぞ。」
「“だけ”ね。」
ヒナは書類をめくりながら、ちらりと視線を向ける。
襟元が、ほんの少し乱れている。
「……カイト。」
「なに?」
「自覚は?」
「何の?」
即答。また内心でため息。この件に関しては何度も指摘しているが、ここまで来ると、もう才能だ。
「いいわ。業務の話に戻るわね。」
ヒナは淡々と報告内容を確認しながら、雑談のように話を続ける。
「スモーカー君、戻ってきてるわ。」
「あぁ、さっき会ったぜ。」
ほんの少し、嬉しそうに声が弾む。
それを見て、ヒナは書類を持つ手を止めた。
(……はいはい。)
「さっき廊下で会った?」
「うん。少し話した。」
「“少し”ね。」
「?」
何も分かっていない顔。
ヒナは内心で頭を抱える。
(スモーカー君がどんな顔して見てるか、少しは気づきなさいよ。)
だが言わない。
言えない。
だって、言ったところで――
「ヒナ、何か変なこと言ったか?」
「別に。」
即答して、書類を返す。
「ただ、あの男は不器用なのよ。」
「スモーカー?」
「他にも不器用なのはいるけど。」
少将は首を傾げたまま、納得していない様子だ。
ヒナは椅子に深く座り直し、天井を仰ぐ。
(どうにか、くっつけられないかしら……。変な奴に捕まる前に。)
スモーカーは分かりやすい。
視線も、距離感も、態度も。
問題は――
(こっち。)
無自覚の塊。
歩くトラブルメーカー。
しかも本人は常に「自分が悪い」で完結している。
「カイト」
「なに?」
「今度、三人で食事でもどう?」
「三人?」
「ヒナと、あなたと、スモーカー君。」
一瞬だけ間が空く。
「久々だな。いいぜ、予定合わせる。」
何の警戒もない返事。
ヒナは口元を隠して、小さく笑った。
(第一段階、成功。)
仕事に戻る少将の背中を見送りながら、ヒナは決意する。
(少なくとも、スモーカー君が拗らせすぎる前に。)
面倒だけど、
同期として、
そして――
「ヒナ、ちょっとお節介を焼くわ。」
誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。
ただ、食事会はただの食事会になり特に何も起こらなかったそうだ。
次の作戦を練るヒナだった。
