不運はつきもの。
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――あの日のことは、今でも妙にはっきり覚えている。
海軍学校を卒業した日。
式が終わり、配属がそれぞれ別になると知らされた直後だった。
ざわつく空気の中で、あいつはいつも通りだった。
少し背筋を伸ばして、前を向いて、まるで当然のことのように言った。
「また現場で会うだろ。」
軽い調子だった。
本当に、ただの事実を口にしただけの顔で。
その瞬間――
(……離れたくない。)
そんな言葉が、喉元までせり上がった。
理屈も覚悟もない、感情だけのそれを、俺だけが必死に噛み殺していた。
あいつは気づかない。
最初から、最後まで。
そういう男だった。
そして今。
久々に戻った海軍本部の廊下は、昔と変わらず忙しない。
任務明けで体は重いが、足は自然と馴染んだ通路を進んでいた。
白い正義のコートが、視界に入る。
「……チッ」
イマイカイト少将。
同期で、腐れ縁で――未だに厄介な存在。
「スモーカー?」
声をかけられ、振り返る。
相変わらず、何も知らない顔をしている。
「帰ってたのか。任務、どうだった?」
「……問題ねぇ。」
それだけ返しながら、距離を詰める。
近い。昔と同じだ。
いや、少将になってからの方が、余計に無防備かもしれない。
「無事で何よりだよ。」
軽く笑って言われただけで、胸の奥がざわつく。
葉巻を噛みしめ、煙で誤魔化す。
(それ以上、近づくな。)
言えるわけがない。
「お前は?」
「相変わらずほぼデスクワーク。まあ、色々あったけど。」
その“色々”が、どんな内容かは聞かない。
聞かなくても分かる。どうせ、また事故だ。
距離を詰められて、本人だけが「不可抗力」で片づけてあまり気にしてない。
「……相変わらずだな。」
「え?」
「いや。」
何でもない、とだけ言って葉巻に火をつける。
煙が、俺とあいつの間を一瞬だけ遮った。
それでも、目に焼きつく。
白いスーツの体の線も、触れてしまいそうな距離も。
そして、その体に触れた者がいるということを考えるだけで頭に血が昇る感覚がする。
「カイト。」
思わず呼ぶ。
「ん?」
何の警戒もない声。
あの日と同じだ。
(離れたくない。)
昔、言えなかった言葉が、今も胸に沈んだまま。
「……気抜くんじゃねぇぞ。」
「はぁ?」
視線を逸らす。
「色んなところで目に余る行動をするお前にだけは言われたくないんだが。少しは自分の行動を見直せ。」
「俺は俺のやり方で正してるだけだ。とやかく言われる筋合いはねぇ。」
即答すると、あいつは少し笑った。
「ほんと、始末書だけは減らしてけよ。俺とヒナがいなかったら、今頃ここにいねぇんだから。」
他愛もない会話をいくつか交わして、
それぞれの業務に戻る時間が来る。
変わらない日常。
変わらない距離。
――そして、変わらない思い。
あいつがそれに気づく日は、
まだ、ずっと先だ。
海軍学校を卒業した日。
式が終わり、配属がそれぞれ別になると知らされた直後だった。
ざわつく空気の中で、あいつはいつも通りだった。
少し背筋を伸ばして、前を向いて、まるで当然のことのように言った。
「また現場で会うだろ。」
軽い調子だった。
本当に、ただの事実を口にしただけの顔で。
その瞬間――
(……離れたくない。)
そんな言葉が、喉元までせり上がった。
理屈も覚悟もない、感情だけのそれを、俺だけが必死に噛み殺していた。
あいつは気づかない。
最初から、最後まで。
そういう男だった。
そして今。
久々に戻った海軍本部の廊下は、昔と変わらず忙しない。
任務明けで体は重いが、足は自然と馴染んだ通路を進んでいた。
白い正義のコートが、視界に入る。
「……チッ」
イマイカイト少将。
同期で、腐れ縁で――未だに厄介な存在。
「スモーカー?」
声をかけられ、振り返る。
相変わらず、何も知らない顔をしている。
「帰ってたのか。任務、どうだった?」
「……問題ねぇ。」
それだけ返しながら、距離を詰める。
近い。昔と同じだ。
いや、少将になってからの方が、余計に無防備かもしれない。
「無事で何よりだよ。」
軽く笑って言われただけで、胸の奥がざわつく。
葉巻を噛みしめ、煙で誤魔化す。
(それ以上、近づくな。)
言えるわけがない。
「お前は?」
「相変わらずほぼデスクワーク。まあ、色々あったけど。」
その“色々”が、どんな内容かは聞かない。
聞かなくても分かる。どうせ、また事故だ。
距離を詰められて、本人だけが「不可抗力」で片づけてあまり気にしてない。
「……相変わらずだな。」
「え?」
「いや。」
何でもない、とだけ言って葉巻に火をつける。
煙が、俺とあいつの間を一瞬だけ遮った。
それでも、目に焼きつく。
白いスーツの体の線も、触れてしまいそうな距離も。
そして、その体に触れた者がいるということを考えるだけで頭に血が昇る感覚がする。
「カイト。」
思わず呼ぶ。
「ん?」
何の警戒もない声。
あの日と同じだ。
(離れたくない。)
昔、言えなかった言葉が、今も胸に沈んだまま。
「……気抜くんじゃねぇぞ。」
「はぁ?」
視線を逸らす。
「色んなところで目に余る行動をするお前にだけは言われたくないんだが。少しは自分の行動を見直せ。」
「俺は俺のやり方で正してるだけだ。とやかく言われる筋合いはねぇ。」
即答すると、あいつは少し笑った。
「ほんと、始末書だけは減らしてけよ。俺とヒナがいなかったら、今頃ここにいねぇんだから。」
他愛もない会話をいくつか交わして、
それぞれの業務に戻る時間が来る。
変わらない日常。
変わらない距離。
――そして、変わらない思い。
あいつがそれに気づく日は、
まだ、ずっと先だ。
