不運はつきもの。
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正直、こうなるとは思ってなかった。
エースは、気絶した中佐を床に転がしながら、借り物のコートを羽織った。
「……悪ぃな。」
ある島で助けてくれた女の子に頼まれた、たった一通の手紙。
それを届けるだけのはずだった。
なのに。
「なんでこうなっちまったかな……。まぁ半分こうなるとは思ってたが。」
変装は完璧。
帽子を深く被り、付け髭もある。ネクタイもそれっぽく締めた。
すでに基地内には、先ほど親父の悪口を言われて海兵を殴ってしまい、**“侵入者あり”**の空気がじわじわと広がり始めている。
エースは廊下に出て、走り去っていく海兵たちを見送りながら、窓辺に腰をかけた。
「さて……どうすっか。」
とりあえず部屋にあった、冷えてしまったコーヒーを一口。
「……にっが。」
顔をしかめた、その瞬間。
「ん?」
視界に、見覚えのある白が入った。
正義の羽織。
白いスーツ。
——え?
歩いてきた男が、ふと立ち止まる。
海軍本部・イマイ少将。
(やっっっべ!?)
心臓が跳ね上がる。
エースは反射的に立ち上がり、勢いよく敬礼した。
「お、お疲れさまです!!」
声、裏返ってないか!? 敬礼と挨拶ってこんな感じで良いんだっけ!?
汗が背中を伝う。
じっと見下ろしてくる視線。
(……ばれたか? ていうか、カイトがなんでここに!? 本部所属って聞いてたんだが!?)
次の瞬間。
すっと、距離が詰まった。
「……ネクタイ。」
「え?」
カイトの手が、エースの胸元に伸びる。
「曲がってる。めちゃくちゃな結び方して…、下への示しがつかないぞ。」
淡々とそう言いながら、ネクタイを直し始めた。
(ち、近っ……!!)
顔、近い。
近すぎる。
(やば……匂いする……! 心臓の音、聞こえてねぇよな!?)
エースは完全に思考停止していた。
「……これでいい。人にするのは難しいな。」
手が離れた、その瞬間。
再度顔を見られて目を細めるカイト。
そのまま先ほどより、息が掛かる距離まで顔を近づけられる。
「…っ!!」
「配属が変わったのか?……お前みたいなやつ、見ない顔だな。名前は?」
(きたーーーー!! やべぇーーー!!!)
答えを探すより早く——
ウゥゥゥゥゥン!!
警報が、基地中に鳴り響いた。
『コーミル中将より、全海兵、港へ即時集合! 極秘資料搭載船に火災発生!』
パッと離れるカイトに助かった、と同時に惜しいと思うエース。
流れるように人の波に紛れ、港へ向かう。
停泊する船のひとつ。
“極秘”と大きく掲げられた帆。
だがその姿は炎で誰も近づけないほど燃え盛っていた。
(いや、目立ちすぎだろ。そりゃ海賊にも狙われるわ。)
そう思った瞬間。
ざぱっ!
背後で、水を被る音。
振り返ると、バケツの水を頭からかぶったカイトが立っていた。
「……イマイ少将!? まさかあの中に行く気じゃ…!!」
動揺する周囲をよそに。
カイトは、迷いなく燃え盛る船へ飛び乗った。
「ええええ!?」
海兵たちの悲鳴。
(正気か!?)
——気づけば、エースもその後を追っていた。
炎の中は、地獄だった。
数分居るだけで、通常の人間だったら耐えられず燃え死ぬか、二酸化炭素中毒で倒れるだろう。
奥へ進んでいくと。
ドンッ
扉が開き、中から飛び出してきた影。
服の一部は燃え、息は荒く、片腕の中には極秘の鞄、もう一方には救助者。
「……っ、は……っ。」
虚ろな視線で、足元もおぼつかない。
「おい!!」
エースは迷わず駆け寄り、抱え上げた。
「無茶すんなよ!!」
そのまま急いで船を脱出。
先ほどいた海軍船へ戻る。
甲板に転がり出たカイトは、かろうじて意識を保っていた。
ゆっくりと視線が合う。
「……お前……火拳……!」
「……あ。」
ばれた。
「……はは。」
エースは笑った。
「めちゃくちゃかっこよかったけどさ。さすがに無理すんなよ、カイト。」
そう言って、帽子を取り。
「あと、エースって呼んでな。」
「……エース……助かった。だけどな…。」
弱々しく笑ってから、続ける。
「次は……捕まえるからな……!」
「ははっ!」
エースは後ずさりながら、手を振った。
「元気になったら、また会おうな!」
次の瞬間、四方八方から銃で撃たれるも炎で貫通。
そんな姿を見ながら、カイトの意識は落ちたのだった。
あいつ、何しにきてたか今度会った時に聞かないと。
