佐野家の家政婦になる話
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いかにも不機嫌ですっていう顔を貼り付けたイザナ君はずんずんと客間である部屋に入ってくると私とマイキー君が寝てる布団に一直線に向かってきた。見下ろしてくる彼の眉間の皺がすごくて、まぁ落ち着けと言わんばかりにへらりと笑いかければ、イザナ君は片足を振り上げる。
「いつまで寝てやがる」
「ひぃっ!?」
嫌な予感が過ぎり咄嗟にゴロゴロと真横に転がれば、先程まで私が寝ていた枕へイザナ君は勢いよく足を振り下ろしていた。一歩遅ければ顔面を踏まれていたであろうその光景にドッと冷や汗が出てくる。間一髪で避けれてよかった〜。ホッと胸を撫で下ろすと必死だった私が滑稽だったのかイザナ君は鼻を鳴らす。
「オマエは昔っから無駄にすばしっこいな」
「あのさぁ、起こすにしてもやり方ってもんがあるでしょうよ。きみは力が強いんだから私が避けられなかったら血を見ることになってたからね」
「惜しかった」
「は〜?なにそれ、少しは反省してよ」
「るせぇな。今度は避けられねぇようやりゃいーんだろ?」
「そっちの反省じゃねーよ」
全く悪びれもしない態度に溜息を吐く。今更彼に言っても無駄なことか。突然しかけられた理不尽な暴力から避けるのに必死で布団から出てしまったので寒さが襲ってくる。2月ってほんとに寒いよね。暖を取る為にそそくさと布団に戻ると「おかえり」とマイキー君が掛け布団を広げて迎え入れてくれた。あったけ〜とぬくぬくしていると「チィッ!!」と馬鹿でかい舌打ちが降ってきた。
「なに?イザナ君も入りたいの?」
「あぁ”?ンなわけねーだろ。オレがわざわざ起こしに来てやったのに何また戻ってんだよ」
「いや〜目は覚めたけど寒いから出たくないんだよね。あとなにより布団があったかくて最高」
「…おい、マイキーそこからさっさと出ろ」
言い訳をする私に話しても通じないと思ったのかイザナ君はマイキー君へ標的を変更した。しかしマイキー君は素直に応じることなく「え〜…」と嫌そうな声を上げる。
「やだ」
「兄貴の言うことが聞けねぇのか?」
「オレだってさみぃもん」
「…テメェらマジでいい加減にしろよ」
怒りで身を震わせるイザナ君に、やべ調子乗りすぎたかもと焦る。今度はかかと落としが降ってくるかもしれないので名残惜しいが出ようとするも、予想に反してイザナ君は暴力で訴えることなく壁にかかっているエアコンのスイッチを入れた。険しい顔でピッピッピッピッと操作するのでボタン結構押すなぁと思っているとリモコン機を眼前に突きつけられた。設定温度30度、その上風量までMAXにしていて流石にやりすぎではと指摘するべくリモコン機からイザナ君へ視線を移せば、彼はこれで満足かと言いたげな表情で見下ろしていた。
「出ろ」
「…は〜い」
これ以上ごねると半殺しにされかねないので大人しく従うことにした。布団を出てから風量MAXなだけあってゴォーと勢いよくあったかい風が出ているエアコンの下へと向かう。すると好きに設定しろと言わんばかりにリモコン機を投げられたので受け止めて少しだけ温度を下げた。電気代考えると申し訳ないし。
どっこいしょ〜、と座布団の上に座ればババくせぇなと訴える兄弟からの視線が痛かったが気付かないふりをしているとイザナ君は「そういえばじいちゃんが探してたぞ」そう投げかければそれを聞いた未だに布団の中にいるマイキー君は壁掛け時計を一瞥してから「やべ!」と焦った表情をして慌てて立ち上がりそのまますごい速さで部屋を出て行った。光の速さだったな。高校を卒業してから道場を継ぐためにじいちゃんの手伝いをしているし、おそらくそれ関連で事前に約束でもしていたのだろう。マイキー君も頑張って働いているのに私ときたら……。己のちゃらんぽらんさに情けなくて項垂れてしまっているとイザナ君は向かい側の座布団に腰を下ろしてテーブルの上に頬杖をついた。その顔はさっきまでとは打って変わって楽しげに口角が上がっていた。
「聞いたぜ」
「なにを?」
「オマエ、ここの奴隷になるんだろ」
「奴隷って……」
言い方があるだろ。どうやら彼の耳にも家政婦の話は届いていたらしい。そりゃそうか、家族だもん。
「酔った勢いで部屋解約するなんてホント救えねぇバカだよな」
「やめて、傷を抉らないで」
軽率な行動だったことくらい身に染みて分かってる。ここに誓いを立てよう…しばらく酒は控えます。
エアコンのおかげで部屋が暖まってきたので立ち上がって布団を畳み始めると「おい、」と呼ばれたので何となしに顔を向ければ真顔のイザナ君がじいっとこちらを見つめていた。
「奴隷に成り下がっても元はオレの下僕だってことを忘れるなよ。他のヤツらに尻尾振らねぇで必ずオレ優先で動け。…分かったな?」
「分かんねぇわ!」
真面目な顔して何言ってんだコイツ。反抗すれば「物分かり悪ィな」と顔を顰めながらガチトーンで言われた。まじかよ、冗談じゃないの?こっちはお前の、嘘に決まってんだろって言葉を大いに期待してツッコんだつもりだったんだけど。はぁ、と溜息を1つ吐いて布団を畳むのを再開する。
「やっぱり住み込みでどこか働ける場所ないか探そっかなって思って」
「…あ?」
シーツを剥ぎながら言えば思いの外低い声が返ってきた。案の定仏頂面をしていて怖かったのですぐに目を反らす。だって佐野家にそんな迷惑掛けられない。社会人なんだから自分のことは自分でなんとかしなきゃ駄目だろ。
場の空気を和ませようと「キャバ嬢ってどれくらい稼げるのかな〜」なんて冗談混じりに投げ掛ければ、いつの間にかイザナ君がすぐ近くに立っていた。こわっ!吃驚して後退りをした直後にまさかの蹴りが飛んできて、突然のことで反応出来ずに畳み終えた布団へ顔面から突っ込む。
「テメェにンな器用なこと出来るワケねーだろうが」
もうやだこの暴君。そんなこと私だって百も承知だ。仮に本気だとして止めるにしても暴力はないだろ。イテテ…と鼻を摩りながら身体を翻して起き上がろうとすれば、イザナ君がお腹の上に跨ってきて制されてしまった。なんなんだ、今日はやけにぐいぐい来るな。
「そんなマジにならないでよ」
「あ?知らねーよ。下らねーこと言ってんのがワリィ」
「私には冗談を言う権利もないのか」
「うるせぇ。オレ以外に媚びへつらうテメェが頭ん中浮かんできてムカついたんだから仕方ねぇだろ」
「いや、きみにも媚びてないですけど…」
ていうか想像力豊かだな。間髪入れずに蹴られたんだけど普通そんなすぐ浮かんでくる?私も自身の接客姿を想像してみたら似合わなすぎて大変気色が悪かった。気持ち悪い思いさせてごめんな。
「とりあえず退いてくれる?」
「下僕が指図すんじゃねぇ」
「えぇ…」
邪魔なんですけど…。目で訴えても退いてくれる気配はない。どういう状況だよコレ。彼が何を考えているか全く分からなくて困惑していると、今度は乱雑に顎を引っ掴まれた。
「ふざけたこと抜かしてねぇでテメェの言ったことくらい責任持て」
「家政婦のこと?やだよ。絶対イザナ君こき使うじゃん」
「当たり前だろ」
「説得したいんならそこは嘘でも、んなことするわけねェだろ…って言ってよ」
「それはオレの真似か?あ?」
「頑張って喋り方真似してみたけど、イザナ君は人を思いやることなんか言わないし根本から間違ってたわ」
「へぇ、そんなに死にてェか」
「いひゃいいひゃい!!!」
グググ…と掴んでいる顎に力を込められる。とんでもない激痛に手を引き離そうとしてもビクともしない。痛みで普段のゴリラパワーを発揮できていないらしい。視界が潤んできてもイザナ君は力を緩めることなく私を見下ろしていた。
「まじでいひゃいって!!かんべんしてくだひゃい!!」
「なら誓え。この家の奴隷に成り下がることに異存はねェと」
「わかったから!!ちかう!ちかいまひゅ!」
情けなく呂律の回らない口調でヤケクソになって言われるがままに誓えば、すぐさま顎を解放された。本当に痛かった……。顎だけ持ってかれるんじゃないかと思った。
「ねぇ、輪郭歪んでない?感覚おかしいんだけどしゃくれてたりしてない?」
「仮に歪んでたとしてもブスはブスのままだから安心しろ」
「ねぇ、分かってる?これでも一応女なんだけどいくらなんでも酷すぎない?」
「次またふざけたこと抜かしやがったら今度こそ砕くからな」
こわ。人の顎砕いてまでこき使いたいのか。こちらの文句に対してシカトを決め込み恐ろしい宣告をしたイザナ君にドン引きしていると彼は「返事は?」なんて促してきた。誰かこの暴君をなんとかしてくれ。
恐ろしいのでコクコクと頷けば満足そうに口角を上げたイザナ君はなんと私の家で荷造りを手伝うなんて宣ってきたのでまさかの発言に唖然とする。「いやまだ半月もあるしいいよ」と拒否するも「呑気なオマエが半月で終わらせられるワケねぇだろ」そう即座に切り捨てられてしまった。確かに…自信はない…。
「分かったらとっととその見苦しい面洗ってこい」
否定しない私に肯定とみなしたのかイザナ君はやっとお腹の上から退いてくれた。そうだよ私寝起きなんだよ。とんだモーニングコールだな、と嫌味の1つでも言ってやりたくなったが後が怖いので口を紡ぐ。
「手伝ってくれるのはありがたいけど、真一郎さんのお店の手伝いは行かなくていいの?」
「………休み取った」
その間は絶対嘘だろ。連絡しようとポケットから取り出した携帯が何よりの証拠だ。顔に出てたのかはぐらかすように、さっさとしろと急かされる。仕方ない、腹を括るか。
「よし!3分間だけ待ってもらってもいいですか!」
「ダメだ。40秒で支度しろ」
さすがにそれは厳しいよ、船長。
「いつまで寝てやがる」
「ひぃっ!?」
嫌な予感が過ぎり咄嗟にゴロゴロと真横に転がれば、先程まで私が寝ていた枕へイザナ君は勢いよく足を振り下ろしていた。一歩遅ければ顔面を踏まれていたであろうその光景にドッと冷や汗が出てくる。間一髪で避けれてよかった〜。ホッと胸を撫で下ろすと必死だった私が滑稽だったのかイザナ君は鼻を鳴らす。
「オマエは昔っから無駄にすばしっこいな」
「あのさぁ、起こすにしてもやり方ってもんがあるでしょうよ。きみは力が強いんだから私が避けられなかったら血を見ることになってたからね」
「惜しかった」
「は〜?なにそれ、少しは反省してよ」
「るせぇな。今度は避けられねぇようやりゃいーんだろ?」
「そっちの反省じゃねーよ」
全く悪びれもしない態度に溜息を吐く。今更彼に言っても無駄なことか。突然しかけられた理不尽な暴力から避けるのに必死で布団から出てしまったので寒さが襲ってくる。2月ってほんとに寒いよね。暖を取る為にそそくさと布団に戻ると「おかえり」とマイキー君が掛け布団を広げて迎え入れてくれた。あったけ〜とぬくぬくしていると「チィッ!!」と馬鹿でかい舌打ちが降ってきた。
「なに?イザナ君も入りたいの?」
「あぁ”?ンなわけねーだろ。オレがわざわざ起こしに来てやったのに何また戻ってんだよ」
「いや〜目は覚めたけど寒いから出たくないんだよね。あとなにより布団があったかくて最高」
「…おい、マイキーそこからさっさと出ろ」
言い訳をする私に話しても通じないと思ったのかイザナ君はマイキー君へ標的を変更した。しかしマイキー君は素直に応じることなく「え〜…」と嫌そうな声を上げる。
「やだ」
「兄貴の言うことが聞けねぇのか?」
「オレだってさみぃもん」
「…テメェらマジでいい加減にしろよ」
怒りで身を震わせるイザナ君に、やべ調子乗りすぎたかもと焦る。今度はかかと落としが降ってくるかもしれないので名残惜しいが出ようとするも、予想に反してイザナ君は暴力で訴えることなく壁にかかっているエアコンのスイッチを入れた。険しい顔でピッピッピッピッと操作するのでボタン結構押すなぁと思っているとリモコン機を眼前に突きつけられた。設定温度30度、その上風量までMAXにしていて流石にやりすぎではと指摘するべくリモコン機からイザナ君へ視線を移せば、彼はこれで満足かと言いたげな表情で見下ろしていた。
「出ろ」
「…は〜い」
これ以上ごねると半殺しにされかねないので大人しく従うことにした。布団を出てから風量MAXなだけあってゴォーと勢いよくあったかい風が出ているエアコンの下へと向かう。すると好きに設定しろと言わんばかりにリモコン機を投げられたので受け止めて少しだけ温度を下げた。電気代考えると申し訳ないし。
どっこいしょ〜、と座布団の上に座ればババくせぇなと訴える兄弟からの視線が痛かったが気付かないふりをしているとイザナ君は「そういえばじいちゃんが探してたぞ」そう投げかければそれを聞いた未だに布団の中にいるマイキー君は壁掛け時計を一瞥してから「やべ!」と焦った表情をして慌てて立ち上がりそのまますごい速さで部屋を出て行った。光の速さだったな。高校を卒業してから道場を継ぐためにじいちゃんの手伝いをしているし、おそらくそれ関連で事前に約束でもしていたのだろう。マイキー君も頑張って働いているのに私ときたら……。己のちゃらんぽらんさに情けなくて項垂れてしまっているとイザナ君は向かい側の座布団に腰を下ろしてテーブルの上に頬杖をついた。その顔はさっきまでとは打って変わって楽しげに口角が上がっていた。
「聞いたぜ」
「なにを?」
「オマエ、ここの奴隷になるんだろ」
「奴隷って……」
言い方があるだろ。どうやら彼の耳にも家政婦の話は届いていたらしい。そりゃそうか、家族だもん。
「酔った勢いで部屋解約するなんてホント救えねぇバカだよな」
「やめて、傷を抉らないで」
軽率な行動だったことくらい身に染みて分かってる。ここに誓いを立てよう…しばらく酒は控えます。
エアコンのおかげで部屋が暖まってきたので立ち上がって布団を畳み始めると「おい、」と呼ばれたので何となしに顔を向ければ真顔のイザナ君がじいっとこちらを見つめていた。
「奴隷に成り下がっても元はオレの下僕だってことを忘れるなよ。他のヤツらに尻尾振らねぇで必ずオレ優先で動け。…分かったな?」
「分かんねぇわ!」
真面目な顔して何言ってんだコイツ。反抗すれば「物分かり悪ィな」と顔を顰めながらガチトーンで言われた。まじかよ、冗談じゃないの?こっちはお前の、嘘に決まってんだろって言葉を大いに期待してツッコんだつもりだったんだけど。はぁ、と溜息を1つ吐いて布団を畳むのを再開する。
「やっぱり住み込みでどこか働ける場所ないか探そっかなって思って」
「…あ?」
シーツを剥ぎながら言えば思いの外低い声が返ってきた。案の定仏頂面をしていて怖かったのですぐに目を反らす。だって佐野家にそんな迷惑掛けられない。社会人なんだから自分のことは自分でなんとかしなきゃ駄目だろ。
場の空気を和ませようと「キャバ嬢ってどれくらい稼げるのかな〜」なんて冗談混じりに投げ掛ければ、いつの間にかイザナ君がすぐ近くに立っていた。こわっ!吃驚して後退りをした直後にまさかの蹴りが飛んできて、突然のことで反応出来ずに畳み終えた布団へ顔面から突っ込む。
「テメェにンな器用なこと出来るワケねーだろうが」
もうやだこの暴君。そんなこと私だって百も承知だ。仮に本気だとして止めるにしても暴力はないだろ。イテテ…と鼻を摩りながら身体を翻して起き上がろうとすれば、イザナ君がお腹の上に跨ってきて制されてしまった。なんなんだ、今日はやけにぐいぐい来るな。
「そんなマジにならないでよ」
「あ?知らねーよ。下らねーこと言ってんのがワリィ」
「私には冗談を言う権利もないのか」
「うるせぇ。オレ以外に媚びへつらうテメェが頭ん中浮かんできてムカついたんだから仕方ねぇだろ」
「いや、きみにも媚びてないですけど…」
ていうか想像力豊かだな。間髪入れずに蹴られたんだけど普通そんなすぐ浮かんでくる?私も自身の接客姿を想像してみたら似合わなすぎて大変気色が悪かった。気持ち悪い思いさせてごめんな。
「とりあえず退いてくれる?」
「下僕が指図すんじゃねぇ」
「えぇ…」
邪魔なんですけど…。目で訴えても退いてくれる気配はない。どういう状況だよコレ。彼が何を考えているか全く分からなくて困惑していると、今度は乱雑に顎を引っ掴まれた。
「ふざけたこと抜かしてねぇでテメェの言ったことくらい責任持て」
「家政婦のこと?やだよ。絶対イザナ君こき使うじゃん」
「当たり前だろ」
「説得したいんならそこは嘘でも、んなことするわけねェだろ…って言ってよ」
「それはオレの真似か?あ?」
「頑張って喋り方真似してみたけど、イザナ君は人を思いやることなんか言わないし根本から間違ってたわ」
「へぇ、そんなに死にてェか」
「いひゃいいひゃい!!!」
グググ…と掴んでいる顎に力を込められる。とんでもない激痛に手を引き離そうとしてもビクともしない。痛みで普段のゴリラパワーを発揮できていないらしい。視界が潤んできてもイザナ君は力を緩めることなく私を見下ろしていた。
「まじでいひゃいって!!かんべんしてくだひゃい!!」
「なら誓え。この家の奴隷に成り下がることに異存はねェと」
「わかったから!!ちかう!ちかいまひゅ!」
情けなく呂律の回らない口調でヤケクソになって言われるがままに誓えば、すぐさま顎を解放された。本当に痛かった……。顎だけ持ってかれるんじゃないかと思った。
「ねぇ、輪郭歪んでない?感覚おかしいんだけどしゃくれてたりしてない?」
「仮に歪んでたとしてもブスはブスのままだから安心しろ」
「ねぇ、分かってる?これでも一応女なんだけどいくらなんでも酷すぎない?」
「次またふざけたこと抜かしやがったら今度こそ砕くからな」
こわ。人の顎砕いてまでこき使いたいのか。こちらの文句に対してシカトを決め込み恐ろしい宣告をしたイザナ君にドン引きしていると彼は「返事は?」なんて促してきた。誰かこの暴君をなんとかしてくれ。
恐ろしいのでコクコクと頷けば満足そうに口角を上げたイザナ君はなんと私の家で荷造りを手伝うなんて宣ってきたのでまさかの発言に唖然とする。「いやまだ半月もあるしいいよ」と拒否するも「呑気なオマエが半月で終わらせられるワケねぇだろ」そう即座に切り捨てられてしまった。確かに…自信はない…。
「分かったらとっととその見苦しい面洗ってこい」
否定しない私に肯定とみなしたのかイザナ君はやっとお腹の上から退いてくれた。そうだよ私寝起きなんだよ。とんだモーニングコールだな、と嫌味の1つでも言ってやりたくなったが後が怖いので口を紡ぐ。
「手伝ってくれるのはありがたいけど、真一郎さんのお店の手伝いは行かなくていいの?」
「………休み取った」
その間は絶対嘘だろ。連絡しようとポケットから取り出した携帯が何よりの証拠だ。顔に出てたのかはぐらかすように、さっさとしろと急かされる。仕方ない、腹を括るか。
「よし!3分間だけ待ってもらってもいいですか!」
「ダメだ。40秒で支度しろ」
さすがにそれは厳しいよ、船長。
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