中学生編
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部屋で漫画を読んでいると、携帯からメールの受信音が聞こえた。とりあえず手に取り画面を開くと、イザナ君からのメールだった。件名が『伸した』ってだけで添付ファイルがある。嫌な予感がしつつも開けば、その写真はボッコボコにされて伸びきった数人が座布団のように積み重ねられているのを背景にしたイザナ君の自撮りだった。何で積み重ねた?顔面は完璧だけど後ろが物騒なのよ。『観光地に来たみたいな笑顔で撮るな』とだけ返信しておく。イザナ君と連絡先を交換してから本当にどうでもいい内容の電話やメールがちょこちょこ来ていた。本人は時間を割いて構ってやってるって言いそうだけど、黒龍を引退したらしいから暇なのかもしれない。そんなこと言ったらキレられるだろうな。
漫画を読むのを再開してから暫くして今度は着信音が鳴る。イザナ君かなっと軽い気持ちで画面を開けば、そこには意外な人物の名前が映っていた。とりあえず通話ボタンを押す。
「もしもし」
『あー、オレだけど今家居る?』
「いるけど…」
『窓から下見て』
「……下?」
予想もしない言葉に、いやそんなまさかと携帯を耳にくっつけながら、窓へと近寄る。指示通りカーテンを開けて下を見れば、自転車に乗ってる佐野マイキー君がいて『よっ』と片手をあげた。いや、よっじゃねえ!吃驚して何も言えないでいると『今から兄貴のトコ行くから降りてきて』と自己中な発言をしたかと思えば、今度は一方的に通話を切られた。マイペース過ぎる振る舞いに、このまましらばっくれて不貞寝してやろうか、とも思ったがドラケン君から聞いたマイキー君の武勇伝を思い出し、後が怖いかもしれないので私は泣く泣く同行することにした。私ってば本当チキン。
パーカーを羽織って家を出れば、マイキー君と目が合う。私も持ってくるかと自転車の方へ行こうとすると、「どこ行くの」と声を掛けられた。
「いやチャリ持ってこようとしてたんだけど」
「後ろ乗ればいーじゃん」
「え?」
さも当然のようにマイキー君が言う。
「いや悪いからいいよ」
「ケンチンの後ろには乗るのにオレはダメなんだ?」
「チャリとバイクは勝手が違うでしょ。私重いし、マイキー君も大変だよ」
「じゃあハナが漕ぐ?」
「おかしいだろ」
何でそうなった、とツッコめばマイキー君は初めて私に笑顔を向けた。くっ中々いい笑顔じゃねーの。自己中な行いを許してしまいそうになるので、マイキー君は小悪魔なんだと思います。「いーから乗れよ」と催促されてしまったので、折れた私は渋々後ろに跨った。どこ掴まってようかな、と悩んでいるとマイキー君に手を掴まれて、彼の腰まで誘導された。なんていう胸きゅん行動、オレでなきゃ見逃しちゃうね。自転車を漕ぎ始めたマイキー君は、ははっと笑った。
「ホントに重〜」
「そうか。ならば降ろせ」
「ウソウソ、冗談だって」
「本当だな!?乙女心ってのは簡単に傷付くんだからな!?」
私の反応にマイキー君は可笑しそうに笑う。いや何も面白くねぇんだわ。
「ていうか来るの急すぎじゃない?事前に連絡してよ」
「家居たんだからいーじゃん」
「そういう問題じゃないし、そもそも居なかったらどうしてたの?」
「そん時はそん時」
彼の無計画な行動に呆れてしまう。良かったな、私が陰キャで。友達と遊んでたら無駄な時間を過ごすことになってたぞ。しかし私がいくら陰キャだからってずっと家に居るとは限らない。
「今度来る時は連絡して。真面目な話ね」
「…また来ていーの?」
「えっ」
そこは許可取るんだ、と吃驚してしまう。
「…まあ、事前に連絡くれれば」
「ふーん」
「いや聞いたくせに興味ないじゃん」
「そんなことないって」
どこか機嫌の良さそうな声音になるから、正直意味が分からなかった。うーん、マイキー君って掴みどころがなさすぎる。これは彼女になる子は大変だな、なんて他人事に考えながらふわふわと揺れる彼のピンクゴールドの髪が綺麗でなんとなく見ていた。
着いた。自転車から降りた私は店を見上げる。バイク屋か〜。店名からしてもしかして真一郎さんが経営してるのかな、なんて思いながら隣に来たマイキー君に顔向けると、彼は早く早くと私の後ろに周り店へと誘導してきた。いやちょっと心の準備が。
「そういえば真一郎さんには私が来ること言ってあるんだよね?」
「んー…」
気のない返事が返ってきて不安になる。もしかしてこれは言ってないんじゃないか。無意識に顔を顰めていると、後ろから「大丈夫だって」と肩を押されて店の扉まで追いやられてしまう。まあ折角ここまで来たんだし、マイキー君を信じようと店の扉を開けた。
「いらっしゃいま…、は?!?ハナ!?」
案の定、真一郎さんは私を見てめちゃくちゃ驚いていた。彼と再会を喜ぶ前に、私はマイキー君を咎める。
「……やっぱり言ってないじゃないか、マイキー君」
「その方が面白いじゃん」
「なるほど、確信犯か」
悪戯が上手くいって満足なのかマイキー君は口角を上げる。お兄ちゃんを振り回すなよ、可哀想だろ。真一郎さんは狼狽えながら、私の近くにやって来る。
「オマエ…、居なくなるなら言えよ…」
「こればっかりはすみませんでした!心配かけましたよね」
「オマエが駅前の美味しいケーキが食べたいって言うから、並んで買って行ったんだぜ…?」
「ほんとごめん」
1時間くらい並ぶケーキ屋の話だろう。そういえば最後に会った日そんなこと言ったような気がする。買ってきてとは言ってないし、美味しいらしいんだよね〜って軽く言ったつもりなのだが、真一郎さんは私を喜ばそうとしてくれていたらしい。それで着いたら私いないんだもんね。まじごめん。
「は?シンイチロー、ケーキの話なんてオレ聞いてねぇけど」
そこでマイキー君が私達の会話に割って入ってきた。オレも食わせろってヤキモチ妬いちゃったのかな、なんて思っていると、真一郎さんは私とマイキー君を交互に見た。
「オマエらダチなのか?」
「うん」
「いや友達ではなくない?友達の友達でしょ」
「は?」
「えっ…?」
正論を言えば、マイキー君に睨まれる。いやだってそうじゃん…。私はドラケン君とは友達だけど、マイキー君といつ友達になったんだ?むくれているマイキー君とどうしていいか分からない私を見て、真一郎さんは吹き出した。そして私達の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくる。
「悪ぃけどハナ、マンジローとダチになってやってくれねぇか?オレからの頼みってことで、ケーキの件は水に流すからさ」
「それは全然いいけどさ…、真一郎さんにもお詫びするよ」
詫びなんていいよ、と制する真一郎さんに、パーカーのポケットに手を突っ込み目当ての物を探り当てると、真一郎さんに差し出した。彼はそれを見て一瞬目を丸くするも、すぐに「ふはっ!」とおかしそうに笑った。
「懐かしーなぁ!オマエ、相変わらずこの味嫌いなの?」
「うーん、前よりはマシですけど、真一郎さんと会うっていうなら、処理ろうかなって」
「ホントちゃっかりしてるよな」
真一郎さんは懐かしそうに微笑むと、私の手の平からパイン味の飴を受け取った。そして小包を開けると、それをマイキー君が奪い取って、飴を自分の口の中に放り込んだ。相変わらずその顔はむくれている。お兄ちゃん取るなってことか。真一郎さんに助けを求めようと見上げると、彼は彼でマイキー君に微笑みかけていた。
「…マンジロー、ハナと会わせてくれてサンキューな」
「ん」
流石はお兄ちゃんと言うべきか、その一言でマイキー君の機嫌は直ったような気がした。多分オレに構えよってことなんだと思う。知らんけど。
その後他愛もない話をして、さあ帰るかってなった時に真一郎さんが送ってやるよと言ってくれたので、お言葉に甘えようとすると、それをマイキー君が許してくれなかった。オレが送ってく、と言い残して店を出ていく。置いて行かれた私と真一郎さんは唖然としていた。えーバイクで送ってくれるっていうんだから、そっちのが早いし、チャリは漕ぐの大変だし、いい事づくめなのになぁ。
「マンジローはオマエのこと気に入ったんだな」
「えっ?どの辺が?」
「オレはアイツの兄貴だぜ?見りゃわかる」
「へー」
私は他人だから全然分からん。気に入られることしたかな、なんて記憶を辿りながら、店の外で待たせているのも悪いので、扉へと歩く。
「ハナ、」
「ん?」
名前を呼ばれて振り返る。真一郎さんは前と変わらないニカッと人のいい笑顔を私に向けていた。
「マンジローのこと頼むな」
「…うん」
何で私に頼むんだろう、なんて思ったけど、何故か拒否できなくて素直に頷く。私が頷いたのを見て真一郎さんは今度は嬉しそうに微笑んだ。
漫画を読むのを再開してから暫くして今度は着信音が鳴る。イザナ君かなっと軽い気持ちで画面を開けば、そこには意外な人物の名前が映っていた。とりあえず通話ボタンを押す。
「もしもし」
『あー、オレだけど今家居る?』
「いるけど…」
『窓から下見て』
「……下?」
予想もしない言葉に、いやそんなまさかと携帯を耳にくっつけながら、窓へと近寄る。指示通りカーテンを開けて下を見れば、自転車に乗ってる佐野マイキー君がいて『よっ』と片手をあげた。いや、よっじゃねえ!吃驚して何も言えないでいると『今から兄貴のトコ行くから降りてきて』と自己中な発言をしたかと思えば、今度は一方的に通話を切られた。マイペース過ぎる振る舞いに、このまましらばっくれて不貞寝してやろうか、とも思ったがドラケン君から聞いたマイキー君の武勇伝を思い出し、後が怖いかもしれないので私は泣く泣く同行することにした。私ってば本当チキン。
パーカーを羽織って家を出れば、マイキー君と目が合う。私も持ってくるかと自転車の方へ行こうとすると、「どこ行くの」と声を掛けられた。
「いやチャリ持ってこようとしてたんだけど」
「後ろ乗ればいーじゃん」
「え?」
さも当然のようにマイキー君が言う。
「いや悪いからいいよ」
「ケンチンの後ろには乗るのにオレはダメなんだ?」
「チャリとバイクは勝手が違うでしょ。私重いし、マイキー君も大変だよ」
「じゃあハナが漕ぐ?」
「おかしいだろ」
何でそうなった、とツッコめばマイキー君は初めて私に笑顔を向けた。くっ中々いい笑顔じゃねーの。自己中な行いを許してしまいそうになるので、マイキー君は小悪魔なんだと思います。「いーから乗れよ」と催促されてしまったので、折れた私は渋々後ろに跨った。どこ掴まってようかな、と悩んでいるとマイキー君に手を掴まれて、彼の腰まで誘導された。なんていう胸きゅん行動、オレでなきゃ見逃しちゃうね。自転車を漕ぎ始めたマイキー君は、ははっと笑った。
「ホントに重〜」
「そうか。ならば降ろせ」
「ウソウソ、冗談だって」
「本当だな!?乙女心ってのは簡単に傷付くんだからな!?」
私の反応にマイキー君は可笑しそうに笑う。いや何も面白くねぇんだわ。
「ていうか来るの急すぎじゃない?事前に連絡してよ」
「家居たんだからいーじゃん」
「そういう問題じゃないし、そもそも居なかったらどうしてたの?」
「そん時はそん時」
彼の無計画な行動に呆れてしまう。良かったな、私が陰キャで。友達と遊んでたら無駄な時間を過ごすことになってたぞ。しかし私がいくら陰キャだからってずっと家に居るとは限らない。
「今度来る時は連絡して。真面目な話ね」
「…また来ていーの?」
「えっ」
そこは許可取るんだ、と吃驚してしまう。
「…まあ、事前に連絡くれれば」
「ふーん」
「いや聞いたくせに興味ないじゃん」
「そんなことないって」
どこか機嫌の良さそうな声音になるから、正直意味が分からなかった。うーん、マイキー君って掴みどころがなさすぎる。これは彼女になる子は大変だな、なんて他人事に考えながらふわふわと揺れる彼のピンクゴールドの髪が綺麗でなんとなく見ていた。
着いた。自転車から降りた私は店を見上げる。バイク屋か〜。店名からしてもしかして真一郎さんが経営してるのかな、なんて思いながら隣に来たマイキー君に顔向けると、彼は早く早くと私の後ろに周り店へと誘導してきた。いやちょっと心の準備が。
「そういえば真一郎さんには私が来ること言ってあるんだよね?」
「んー…」
気のない返事が返ってきて不安になる。もしかしてこれは言ってないんじゃないか。無意識に顔を顰めていると、後ろから「大丈夫だって」と肩を押されて店の扉まで追いやられてしまう。まあ折角ここまで来たんだし、マイキー君を信じようと店の扉を開けた。
「いらっしゃいま…、は?!?ハナ!?」
案の定、真一郎さんは私を見てめちゃくちゃ驚いていた。彼と再会を喜ぶ前に、私はマイキー君を咎める。
「……やっぱり言ってないじゃないか、マイキー君」
「その方が面白いじゃん」
「なるほど、確信犯か」
悪戯が上手くいって満足なのかマイキー君は口角を上げる。お兄ちゃんを振り回すなよ、可哀想だろ。真一郎さんは狼狽えながら、私の近くにやって来る。
「オマエ…、居なくなるなら言えよ…」
「こればっかりはすみませんでした!心配かけましたよね」
「オマエが駅前の美味しいケーキが食べたいって言うから、並んで買って行ったんだぜ…?」
「ほんとごめん」
1時間くらい並ぶケーキ屋の話だろう。そういえば最後に会った日そんなこと言ったような気がする。買ってきてとは言ってないし、美味しいらしいんだよね〜って軽く言ったつもりなのだが、真一郎さんは私を喜ばそうとしてくれていたらしい。それで着いたら私いないんだもんね。まじごめん。
「は?シンイチロー、ケーキの話なんてオレ聞いてねぇけど」
そこでマイキー君が私達の会話に割って入ってきた。オレも食わせろってヤキモチ妬いちゃったのかな、なんて思っていると、真一郎さんは私とマイキー君を交互に見た。
「オマエらダチなのか?」
「うん」
「いや友達ではなくない?友達の友達でしょ」
「は?」
「えっ…?」
正論を言えば、マイキー君に睨まれる。いやだってそうじゃん…。私はドラケン君とは友達だけど、マイキー君といつ友達になったんだ?むくれているマイキー君とどうしていいか分からない私を見て、真一郎さんは吹き出した。そして私達の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくる。
「悪ぃけどハナ、マンジローとダチになってやってくれねぇか?オレからの頼みってことで、ケーキの件は水に流すからさ」
「それは全然いいけどさ…、真一郎さんにもお詫びするよ」
詫びなんていいよ、と制する真一郎さんに、パーカーのポケットに手を突っ込み目当ての物を探り当てると、真一郎さんに差し出した。彼はそれを見て一瞬目を丸くするも、すぐに「ふはっ!」とおかしそうに笑った。
「懐かしーなぁ!オマエ、相変わらずこの味嫌いなの?」
「うーん、前よりはマシですけど、真一郎さんと会うっていうなら、処理ろうかなって」
「ホントちゃっかりしてるよな」
真一郎さんは懐かしそうに微笑むと、私の手の平からパイン味の飴を受け取った。そして小包を開けると、それをマイキー君が奪い取って、飴を自分の口の中に放り込んだ。相変わらずその顔はむくれている。お兄ちゃん取るなってことか。真一郎さんに助けを求めようと見上げると、彼は彼でマイキー君に微笑みかけていた。
「…マンジロー、ハナと会わせてくれてサンキューな」
「ん」
流石はお兄ちゃんと言うべきか、その一言でマイキー君の機嫌は直ったような気がした。多分オレに構えよってことなんだと思う。知らんけど。
その後他愛もない話をして、さあ帰るかってなった時に真一郎さんが送ってやるよと言ってくれたので、お言葉に甘えようとすると、それをマイキー君が許してくれなかった。オレが送ってく、と言い残して店を出ていく。置いて行かれた私と真一郎さんは唖然としていた。えーバイクで送ってくれるっていうんだから、そっちのが早いし、チャリは漕ぐの大変だし、いい事づくめなのになぁ。
「マンジローはオマエのこと気に入ったんだな」
「えっ?どの辺が?」
「オレはアイツの兄貴だぜ?見りゃわかる」
「へー」
私は他人だから全然分からん。気に入られることしたかな、なんて記憶を辿りながら、店の外で待たせているのも悪いので、扉へと歩く。
「ハナ、」
「ん?」
名前を呼ばれて振り返る。真一郎さんは前と変わらないニカッと人のいい笑顔を私に向けていた。
「マンジローのこと頼むな」
「…うん」
何で私に頼むんだろう、なんて思ったけど、何故か拒否できなくて素直に頷く。私が頷いたのを見て真一郎さんは今度は嬉しそうに微笑んだ。