中学生編
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学校が終わり帰宅してテレビ見ながらだらけていたら、お母さんにおつかいを頼まれてしまった。面倒だったけどお世話になっているので断る訳にもいかず、私はおつかいに出た。好きなお菓子一つ買っていいよと言われたので頼まれた物以外にも遠慮なく買った。
やったぜ役得〜、なんて思いながら帰路につく。ああそういえば帰ってから宿題やらなきゃ。
「ハナ?」
名を呼ばれて無意識に顔を向ければ、ノーヘルでバイクをニケツしている信号待ちの男の子達がこちらを見ていた。後ろに乗っている男の子に目を奪われる。一瞬で誰だか分かった。出会った時から目立つ容姿をしていた彼を見間違うはずなんてない。
「…イザナ君」
ぽつりと名前を呼べば、彼は満足そうに笑んだ。
「今時間ある?あるよな。少しツラ貸せよ」
「おおう…、相変わらずで何よりです」
有無を言わせないところ、本当に懐かしい。選択肢など与えられなかった私は近くのコンビニまで半ば引き摺られるように連れて行かれた。
コンビニの駐車場で改めて対面する。イザナ君は特攻服に身を包み、記憶の中の彼より長くなった髪は前髪を一房下ろしたオールバックだ。おそらく2年振りくらいの再会になるが、どうやら彼は中々にエンジョイしているようだ。
「元気そうで安心したよ」
「オマエもな。今のところでは上手くやれてんのか?」
「うん、好きなことやらせてくれし2人とも優しいよ。イザナ君は?変わったことあった?」
「オレは今黒龍のアタマやってる」
「…ブラックドラゴン?」
なにそれ?遊戯王のモンスターしか出てこないんだけど、絶対に違うだろう。ふとイザナ君の連れの子の特攻服が目に入る。背中に黒龍と書いてあったので、暴走族のチーム名らしい。全くもって聞いたことがないのに当たり前のように言われたので、知ってる風を装った方がいいのだろうか。あーはいはい黒龍ねー、とあからさまに頷く私にコイツ本当に分かってんのか?という疑念の目を向けるもイザナ君は「まぁいいか」と口角を上げた。
「うちの人間にヤられそうになったらオレの名前言えよ。捌けてくから」
「や、やられ…?」
「うん」
平和ボケした私にはどういうことだか理解できなかったが、物騒な話が出てきそうなので深く追求するのはやめた。どうやら暴走族らしく悪いことやってるらしい。イザナ君の国民候補でよかった。どうなるかも分からないがあるかもしれない危険を回避出来る手立てがあるに越したことはない。久しぶりの再会で私達が話していることもあり、バイクに跨りながら待たされている連れの男の子をイザナ君は親指で指した。顔よりもピンヒールにしか目がいかなかった。
「アイツはオレの側近の乾」
「そっきん」
「オレはもう引退するけどアイツはまだいるから困ったことあったら頼れば?ま、オレでもいーけど」
「いや私人見知りするし無理」
「どの口が言ってんだよ」
鋭いツッコミが飛んでくる。おかしいな、私は人見知りであがり症だと自覚しているつもりだが。納得いかないでいると、「ケータイ持ってる?」とイザナ君が自分の携帯を取り出しながら問いかけてきた。
「連絡先交換してくれるの?」
「オマエはオレの下僕だからな。ちゃんと王が管理してやらなきゃダメだろ」
「うわ下僕とかめっちゃ懐かし!年収1000万の約束忘れないでね」
「本当に変わらねぇよな、オマエ」
イザナ君に呆れたように溜息を落とされつつも、赤外線で連絡先を交換する。ちらっとイザナ君の携帯の画面を覗いちゃったんだけど、私の名前を︎︎゙下僕゙で登録していた。彼らしいと言えば彼らしいのだが、せめてその後ろに括弧でもいいから名前を入れてくれ。
連絡先を交換して満足したのかは分からないが、イザナ君はその後すぐに乾君の後ろに跨りに行った。そのまま最後に私のところへ来たかと思えば「電話したら3コール以内に出ろよ」とジャイアニズムなことを言われる。そして彼は私の返事も待たずに乾君に「出ろ」と指示する。乾君は私を一瞥するとすぐにそれに従い、彼らはとんでもない排気音を轟かせてさっさと行ってしまった。早いな、おい。でもイザナ君が元気そうでよかった。
イザナ君と別れて10分くらい変わらず帰路についていると、さっき似たような音聞いたなーってくらいのバイクの音が聞こえた。
「ハナか?」
名を呼ばれて、無意識にそちらへと顔を向ける。そこにはノーヘルでバイクに跨りながら信号待ちをしている男の子達がいた。あれーすっごいデジャブ。
「…ドラケン君」
写真で見せてもらった愛機に乗っている彼の名前を呼べば、ドラケン君はフッと口角を上げた。彼の隣を見れば黒髪の男の子と金髪の男の子がいた。
「ケンチンの知り合い?」
「…あー、前言ったろ。1人で絡まれてる時に割って入ってきた女がいたって」
「ハ?こんなヒョロそうな女が?」
黒髪の男の子に信じられない者を見るような目で見られる。失礼だろ。そういえば1年前くらいにそんなことあったな。まだドラケン君が小学生の時だった。懐かしいなと思い出していると、ピンクのヘルメットを投げられた。咄嗟にキャッチすると、ドラケン君の首に引っかかっていたヘルメットが消えている。どうやら彼が投げたらしい。
「家まで送ってやる」
「え?いいの?」
「おう、後ろ乗れよ」
「それじゃ遠慮なく〜」
信号待ちだったからバイクを道の脇に移動してくれたので、そのままドラケン君の後ろに乗る。彼と私の間に買ってきた物が入ってる大きめのショルダーバッグを置いておく。「肩か腰掴んどけよ」と言われたので、ちょっと迷って肩に手を置いた。
「オマエら先に店行っててくれ。コイツ送ってから行くから」
「お、おう」
「オレも行く。場地ついてって」
「は?」
場地君と呼ばれた子の後ろに乗っていた金髪の男の子のまさかの発言に2人とも顔を顰めた。しかしそんなドラケン君や場地君に目もくれずに、金髪の男の子は私をじいっと見つめてきた。あれ?この子どっかで見たことあるぞ?
しかし思い出せないでいると、男の子は「ダメ?」と小首を傾げてきた。くっ可愛いじゃねーの。
「いいけど家には上げないよ。急に来たらお母さん困るだろうし」
「うん、分かった」
あ、いいんだ。お茶請け目当てだと思ってたので、すんなり頷かれて吃驚してしまう。上から「マイキーが悪ィな」とドラケン君の声が降ってきた。この子がマイキー君か!そういえばこの前ドラケン君から写真見せてもらったわ。通りで見たことあると思った。つまりマイキー君はお茶請け目当てじゃなくてドラケン君と離れたくなかったのね、と妙にスッキリしているとドラケン君がバイクを走らせた。思ったよりもスピードが緩いので、荷物もあるし気を使ってくれているのかもしれない。
「…あれ?無免許だって分かってて同乗した人も仮に捕まった場合はアウトなんだっけ?」
「あー?そりゃそうだろ」
「やっぱ私降りる!!」
「サツに捕まるなんてヘマしねーから大人しく乗っとけ」
「…その話、信ずる証拠は?」
「誰だよ」
前からドラケン君の呆れた声が聞こえる。また何か変なこと言ってるとか思ってるんだろうな。私もドラケン君にネタが通じるなんて思ってもいないけど、勝手に口が動くんだからしょーがない。ただ何も知らないドラケン君に「ない!」ってハッキリ言われたら言われたで、笑いこらえるのが大変なのでツッコまれただけで良かったのかもしれない。
家の前に着いた。いやー楽しちゃった。ドラケン君に会えてラッキーだったな。とりあえずバイクから降りて、ヘルメットを返しながら彼に笑いかける。
「ドラケン君、ありがとう!」
「おー」
「…アンタさ、」
声がしてそっちを向けば、場地君の運転で後ろからついてきていたマイキー君がバイクから降りて私に歩み寄ってきていた。
「佐野真一郎って知らない?」
「えっ」
まさかの名前に思わず声が漏れる。佐野真一郎ってあのイザナ君のお兄さんの真一郎さんだよね。
「知ってるけど…、何で?」
「やっぱりアンタだったんだ」
「うん?」
「アンタの写真、兄貴のケータイで見たことある」
「は?」
兄貴?真一郎さんから弟がもう1人いるとか聞いたことがあるけど、もしかしてその子がマイキー君ってこと?また黒い瞳がじいっと見つめてくる。あーこの目なんか真一郎さんにそっくりじゃん。ドラケン君の友達が知り合いの弟なんて、すごい偶然もあったもんだ。
「へー、真一郎さん元気?」
「会う?兄貴、心配してたから会ってやって欲しいんだけど」
「…真一郎さんが?」
こくりと頷かれる。そういえば何ヶ月かに1回会いに来てくれていた真一郎さんに、何の話も出来ないまま今の家に引き取られたんだった。タイミングが悪かったとはいえ心配してくれていたなんて、悪いことしてしまった。一言謝った方がいいのかもしれない。
「それじゃあ今日は無理だけど、また日を改めて会わせてくれるかな?真一郎さんにも都合があるだろうし」
「分かった。じゃあ連絡先教えてよ」
「あっはい」
言われるまま携帯を取り出す。ドラケン君と場地君に見守られながら、赤外線でマイキー君と連絡先を交換する。名前は…名前はどう登録しよう。佐野って名字は知ってるし、佐野マイキーで登録しておくか。
連絡先を交換すればさっさと場地君のバイクの方へと歩いていくマイキー君。なんてマイペースなんだ。空気を読んでか2人ともめっちゃ静かだったな、とドラケン君へ顔を向ける。彼はちょっと驚いた顔をしていた。
「…真一郎君と知り合いだったんだな」
「ねー、世間は狭いね」
「オマエが肝座ってるワケ、なんとなく分かった気がするわ」
「いや私は自他共に認めるチキンだよ」
「チキってる奴が人の喧嘩に突っ込んでこねーよ」
それはドラケン君と初対面の時の話だろうか。中学生に囲まれた彼を助けようと内心自分を奮い立たせていたので、私が結局チキンなことに変わりはない。「ケンチン!早く行くぞ!」とマイキー君に呼ばれドラケン君は短く返事をすると、再び私を見下ろして「じゃ、またな」と告げて、バイクを走らせて行った。あっという間に見えなくなった後ろ姿に振っていた手を下ろして、携帯の画面を見つめる。今日だけで真一郎さんの弟2人と連絡先交換しちゃったんだけど、こんな奇跡のような偶然ってあるんだな。そんな呑気なことを私は考えていた。
やったぜ役得〜、なんて思いながら帰路につく。ああそういえば帰ってから宿題やらなきゃ。
「ハナ?」
名を呼ばれて無意識に顔を向ければ、ノーヘルでバイクをニケツしている信号待ちの男の子達がこちらを見ていた。後ろに乗っている男の子に目を奪われる。一瞬で誰だか分かった。出会った時から目立つ容姿をしていた彼を見間違うはずなんてない。
「…イザナ君」
ぽつりと名前を呼べば、彼は満足そうに笑んだ。
「今時間ある?あるよな。少しツラ貸せよ」
「おおう…、相変わらずで何よりです」
有無を言わせないところ、本当に懐かしい。選択肢など与えられなかった私は近くのコンビニまで半ば引き摺られるように連れて行かれた。
コンビニの駐車場で改めて対面する。イザナ君は特攻服に身を包み、記憶の中の彼より長くなった髪は前髪を一房下ろしたオールバックだ。おそらく2年振りくらいの再会になるが、どうやら彼は中々にエンジョイしているようだ。
「元気そうで安心したよ」
「オマエもな。今のところでは上手くやれてんのか?」
「うん、好きなことやらせてくれし2人とも優しいよ。イザナ君は?変わったことあった?」
「オレは今黒龍のアタマやってる」
「…ブラックドラゴン?」
なにそれ?遊戯王のモンスターしか出てこないんだけど、絶対に違うだろう。ふとイザナ君の連れの子の特攻服が目に入る。背中に黒龍と書いてあったので、暴走族のチーム名らしい。全くもって聞いたことがないのに当たり前のように言われたので、知ってる風を装った方がいいのだろうか。あーはいはい黒龍ねー、とあからさまに頷く私にコイツ本当に分かってんのか?という疑念の目を向けるもイザナ君は「まぁいいか」と口角を上げた。
「うちの人間にヤられそうになったらオレの名前言えよ。捌けてくから」
「や、やられ…?」
「うん」
平和ボケした私にはどういうことだか理解できなかったが、物騒な話が出てきそうなので深く追求するのはやめた。どうやら暴走族らしく悪いことやってるらしい。イザナ君の国民候補でよかった。どうなるかも分からないがあるかもしれない危険を回避出来る手立てがあるに越したことはない。久しぶりの再会で私達が話していることもあり、バイクに跨りながら待たされている連れの男の子をイザナ君は親指で指した。顔よりもピンヒールにしか目がいかなかった。
「アイツはオレの側近の乾」
「そっきん」
「オレはもう引退するけどアイツはまだいるから困ったことあったら頼れば?ま、オレでもいーけど」
「いや私人見知りするし無理」
「どの口が言ってんだよ」
鋭いツッコミが飛んでくる。おかしいな、私は人見知りであがり症だと自覚しているつもりだが。納得いかないでいると、「ケータイ持ってる?」とイザナ君が自分の携帯を取り出しながら問いかけてきた。
「連絡先交換してくれるの?」
「オマエはオレの下僕だからな。ちゃんと王が管理してやらなきゃダメだろ」
「うわ下僕とかめっちゃ懐かし!年収1000万の約束忘れないでね」
「本当に変わらねぇよな、オマエ」
イザナ君に呆れたように溜息を落とされつつも、赤外線で連絡先を交換する。ちらっとイザナ君の携帯の画面を覗いちゃったんだけど、私の名前を︎︎゙下僕゙で登録していた。彼らしいと言えば彼らしいのだが、せめてその後ろに括弧でもいいから名前を入れてくれ。
連絡先を交換して満足したのかは分からないが、イザナ君はその後すぐに乾君の後ろに跨りに行った。そのまま最後に私のところへ来たかと思えば「電話したら3コール以内に出ろよ」とジャイアニズムなことを言われる。そして彼は私の返事も待たずに乾君に「出ろ」と指示する。乾君は私を一瞥するとすぐにそれに従い、彼らはとんでもない排気音を轟かせてさっさと行ってしまった。早いな、おい。でもイザナ君が元気そうでよかった。
イザナ君と別れて10分くらい変わらず帰路についていると、さっき似たような音聞いたなーってくらいのバイクの音が聞こえた。
「ハナか?」
名を呼ばれて、無意識にそちらへと顔を向ける。そこにはノーヘルでバイクに跨りながら信号待ちをしている男の子達がいた。あれーすっごいデジャブ。
「…ドラケン君」
写真で見せてもらった愛機に乗っている彼の名前を呼べば、ドラケン君はフッと口角を上げた。彼の隣を見れば黒髪の男の子と金髪の男の子がいた。
「ケンチンの知り合い?」
「…あー、前言ったろ。1人で絡まれてる時に割って入ってきた女がいたって」
「ハ?こんなヒョロそうな女が?」
黒髪の男の子に信じられない者を見るような目で見られる。失礼だろ。そういえば1年前くらいにそんなことあったな。まだドラケン君が小学生の時だった。懐かしいなと思い出していると、ピンクのヘルメットを投げられた。咄嗟にキャッチすると、ドラケン君の首に引っかかっていたヘルメットが消えている。どうやら彼が投げたらしい。
「家まで送ってやる」
「え?いいの?」
「おう、後ろ乗れよ」
「それじゃ遠慮なく〜」
信号待ちだったからバイクを道の脇に移動してくれたので、そのままドラケン君の後ろに乗る。彼と私の間に買ってきた物が入ってる大きめのショルダーバッグを置いておく。「肩か腰掴んどけよ」と言われたので、ちょっと迷って肩に手を置いた。
「オマエら先に店行っててくれ。コイツ送ってから行くから」
「お、おう」
「オレも行く。場地ついてって」
「は?」
場地君と呼ばれた子の後ろに乗っていた金髪の男の子のまさかの発言に2人とも顔を顰めた。しかしそんなドラケン君や場地君に目もくれずに、金髪の男の子は私をじいっと見つめてきた。あれ?この子どっかで見たことあるぞ?
しかし思い出せないでいると、男の子は「ダメ?」と小首を傾げてきた。くっ可愛いじゃねーの。
「いいけど家には上げないよ。急に来たらお母さん困るだろうし」
「うん、分かった」
あ、いいんだ。お茶請け目当てだと思ってたので、すんなり頷かれて吃驚してしまう。上から「マイキーが悪ィな」とドラケン君の声が降ってきた。この子がマイキー君か!そういえばこの前ドラケン君から写真見せてもらったわ。通りで見たことあると思った。つまりマイキー君はお茶請け目当てじゃなくてドラケン君と離れたくなかったのね、と妙にスッキリしているとドラケン君がバイクを走らせた。思ったよりもスピードが緩いので、荷物もあるし気を使ってくれているのかもしれない。
「…あれ?無免許だって分かってて同乗した人も仮に捕まった場合はアウトなんだっけ?」
「あー?そりゃそうだろ」
「やっぱ私降りる!!」
「サツに捕まるなんてヘマしねーから大人しく乗っとけ」
「…その話、信ずる証拠は?」
「誰だよ」
前からドラケン君の呆れた声が聞こえる。また何か変なこと言ってるとか思ってるんだろうな。私もドラケン君にネタが通じるなんて思ってもいないけど、勝手に口が動くんだからしょーがない。ただ何も知らないドラケン君に「ない!」ってハッキリ言われたら言われたで、笑いこらえるのが大変なのでツッコまれただけで良かったのかもしれない。
家の前に着いた。いやー楽しちゃった。ドラケン君に会えてラッキーだったな。とりあえずバイクから降りて、ヘルメットを返しながら彼に笑いかける。
「ドラケン君、ありがとう!」
「おー」
「…アンタさ、」
声がしてそっちを向けば、場地君の運転で後ろからついてきていたマイキー君がバイクから降りて私に歩み寄ってきていた。
「佐野真一郎って知らない?」
「えっ」
まさかの名前に思わず声が漏れる。佐野真一郎ってあのイザナ君のお兄さんの真一郎さんだよね。
「知ってるけど…、何で?」
「やっぱりアンタだったんだ」
「うん?」
「アンタの写真、兄貴のケータイで見たことある」
「は?」
兄貴?真一郎さんから弟がもう1人いるとか聞いたことがあるけど、もしかしてその子がマイキー君ってこと?また黒い瞳がじいっと見つめてくる。あーこの目なんか真一郎さんにそっくりじゃん。ドラケン君の友達が知り合いの弟なんて、すごい偶然もあったもんだ。
「へー、真一郎さん元気?」
「会う?兄貴、心配してたから会ってやって欲しいんだけど」
「…真一郎さんが?」
こくりと頷かれる。そういえば何ヶ月かに1回会いに来てくれていた真一郎さんに、何の話も出来ないまま今の家に引き取られたんだった。タイミングが悪かったとはいえ心配してくれていたなんて、悪いことしてしまった。一言謝った方がいいのかもしれない。
「それじゃあ今日は無理だけど、また日を改めて会わせてくれるかな?真一郎さんにも都合があるだろうし」
「分かった。じゃあ連絡先教えてよ」
「あっはい」
言われるまま携帯を取り出す。ドラケン君と場地君に見守られながら、赤外線でマイキー君と連絡先を交換する。名前は…名前はどう登録しよう。佐野って名字は知ってるし、佐野マイキーで登録しておくか。
連絡先を交換すればさっさと場地君のバイクの方へと歩いていくマイキー君。なんてマイペースなんだ。空気を読んでか2人ともめっちゃ静かだったな、とドラケン君へ顔を向ける。彼はちょっと驚いた顔をしていた。
「…真一郎君と知り合いだったんだな」
「ねー、世間は狭いね」
「オマエが肝座ってるワケ、なんとなく分かった気がするわ」
「いや私は自他共に認めるチキンだよ」
「チキってる奴が人の喧嘩に突っ込んでこねーよ」
それはドラケン君と初対面の時の話だろうか。中学生に囲まれた彼を助けようと内心自分を奮い立たせていたので、私が結局チキンなことに変わりはない。「ケンチン!早く行くぞ!」とマイキー君に呼ばれドラケン君は短く返事をすると、再び私を見下ろして「じゃ、またな」と告げて、バイクを走らせて行った。あっという間に見えなくなった後ろ姿に振っていた手を下ろして、携帯の画面を見つめる。今日だけで真一郎さんの弟2人と連絡先交換しちゃったんだけど、こんな奇跡のような偶然ってあるんだな。そんな呑気なことを私は考えていた。