小学生編
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大人達の配慮もあり私は以前預けられていた同じ施設に逆戻りとなった。引き取られて保護者が亡くなって2年で戻ってきた子って私くらいしかいないんじゃないか?子供達からは暖かく出迎えられて、胸がじんわりとあったかくなった。職員達は私に対してどう接していいか迷いが見えたけど、子供は純粋な分また会えたことを素直に喜んでくれた。
子供達との感動の再会を終えた私はぼけーっとベンチに座っていると、最後に見た時より背が伸びたイザナ君が私の前まで来た。読めない表情をしている彼に、「久しぶり」とへらへらと笑いかける。
「戻ってくるなって言ったろ」
「私だってそうしたかったよ」
「………」
「ていうか第一声がそれ?イザナ君は私との再会を喜んでくれないんだなぁ〜」
茶化すように笑っても反応は返ってこない。なんなんだそのシリアスムードは。私はもう立ち直っているので、職員達共々きみも私を慰めようとしなくてもいいんだよ。静まり返った空気に居心地の悪さを感じて「とりあえず座りなよ」と手首を引っ張れば、案外すんなりイザナ君は私の隣に座った。
「背伸びたね」
「…そりゃ2年も経てばな」
「なんか変わったことあった?」
「オマエ以外にも下僕ができた」
なんてこった。知らないうちに同僚が出来ていた。いやいやいやいや。
「いつから私はイザナ君の下僕になったの」
「何言ってんだよ今更」
「……あー、うん。もういいやそれで」
さも当然という顔をしたイザナ君に否定することが面倒くさくなって私は彼から顔を逸らした。楽しそうにサッカーをしている子供達へ目を向ける。懐かしさを感じていると、イザナ君がぽつりと呟いた。
「しょうがねぇからオマエも国民にしてやる」
「………ん?」
「だから前みたいにだらしない顔してろ」
なんだ、だらしない顔って。抗議しようと再度イザナ君へ顔を向ければ、彼は珍しく表情を緩めていた。作ったような笑顔は何度か見たことあるけど、人を安心させるような優しい顔に、彼なりの慰めだと気付いてしまった。でも国民がどうとかは意味分からないけど。国でも立ち上げるんか?俺がキングだ!ってこと?
「えーっとじゃあ年収1000万でお願いします」
「調子乗んなよ」
「先に言ったもん勝ちかなって…。私は何不自由なく普通に幸せに暮らすことを目標にしていますので!頼りにしてますからねイザナ王!」
「あからさまに媚びてくんな」
面倒くさそうに私を見るイザナ君。火を付けたのはイザナ君なのでやめるつもりはなかったのだが、限度を弁えないと拳が飛んできそうなのでやめた。
「イザナ!」
隣の彼を呼ぶ活発な声に咄嗟にそちらへと顔を向ける。そこには黒髪の元気そうな少年がいた。まず嫌でも目につく顔を占める大きな傷に一瞬でワケありなことを察した。ていうかワケありじゃなきゃ施設に身を置いてないか。みんなワケありだものね。男の子はイザナ君の方へと行く。私は顔見知りじゃないし2人で話したいなら邪魔かなと立ち上がるが、パシッと制するように手首を掴まれた。振り返れば掴んだ相手はイザナ君で。私を止められたので彼はあっさりと手を離して、今度はやってきた男の子の肩に手を置いた。
「ちょうどよかった。ハナ、コイツがオレの下僕の鶴蝶」
「よ、よろしく!」
「え、まじで下僕は本人公認なの?」
否定しないのか。と吃驚するけど、本人達は普通らしい。下僕とか言ってるのは小学生らしいっちゃらしいけど、人としての倫理観は持て。ドン引きしていると、鶴蝶君はおずおずと私を上目遣いで見てきた。身長差があるので、彼は私より年下だろう。いやでも身長で決めるとなると半間君は例外だな。普通に上級生の背を越してた。あの子はロクな大人になりそうもないので、もう二度と会うこともないであろうが彼の更生を願うばかりだ。
「ハナ…さんって前イザナが言ってた子?」
「さん付けなんかする必要ないだろ。下僕同士なんだから」
「いやいやそんなことより私がいない時にイザナ君ってば私の話をしてたの?なんだよも〜可愛いとこあるじゃん!」
「は?うぜぇな殴るぞ」
「イタタタタタ!殴ってはないけど手はあげてる!手首捻るのはやめて!謝るから!ごめんって!」
彼は盛大な舌打ちをして私の手首を投げるように解放した。普通に離してくれ。からかった私が100%悪いのだが、彼の暴君に磨きがかかっていることに、半間君といいこの子もこんな調子で大丈夫かと心配してしまう。グレそ〜、とジト目で睨むと「文句あんのか?」と有無を言わせない微笑みを向けられた。だから怖いって。
「2人とも仲良いんだな!」
「あ?」
「まぁ…、そうかもね?イザナ君」
「オマエさっきからキモイ」
演技だけど熱っぽい視線を向けてみれば、イザナ君からドン引きされる。なんだよノリ悪いな。
ふと職員さんに呼ばれた。目を向ければこちらに向けて手招きしているので来いということらしい。行かなくちゃいけないが、挨拶しないのもなんなので私は鶴蝶君の手を取り握手した。
「それじゃあ下僕同士?よろしくね、鶴蝶君」
「お、おう。よろしくな!」
「2人でイザナ君に養ってもらおうね。目指せ年収1000万!」
「え?ね、ねんしゅう…?」
「さっさと行けよ」
手を急に取られたことに驚いたのか鶴蝶君は頬を朱に染める。これだよこれが小学生の反応だよ!自分の求めていた反応にイザナ君にシッシッとされても特に気分を害することもなく、私は2人に笑顔で手を振り、待たせてしまっている職員さんの所へと走って向かった。
━━━━━━━━
週末、朝ご飯を食べ終えて、さて宿題でもしようかと図書室を訪れる。どこに座ろうかと辺りを見回すと、見慣れた姿があることに気付いた。イザナ君である。いつになく真剣な表情に私は悪いことを思いついてしまった。後ろに忍び寄って驚かせてやろう、と。後々考えれば痛い目にあうことは目に見えていたが、学習能力のない私はそんなことなどすっかり忘れていた。そろりそろりとイザナ君の背後へと忍び寄る。そういえば珍しく真面目な顔して何を書いているんだろうと興味がわき、私は気付かれないように上から覗き込んだ。
「えっ」
葉書にぎっしりと書き詰められた文字はあまりにもおびただしくて思わず声が漏れてしまう。咄嗟に口を押さえても、それはもう遅く、イザナ君は私を見上げた。
「なに?」
やべ怒られると身構えるも、彼はなんてことないような顔をしていた。どうやら覗かれても全然問題なかったらしい。ほっと胸を撫で下ろし、私はイザナ君の向かい側の席に腰を下ろした。しかしイザナ君は私を気にも留めずに、再び文字を走らせた。罫線のない葉書を真っ直ぐとあんなに文字を描き詰めることが出来ることに、一周まわって尊敬してしまう。それにしてもおびただしいけど。
「手紙書いてるの?」
「うん」
イザナ君はちらりと私を一瞥してから頷いた。私は本当に失礼な人間だから、うわ貰いたくねー、と貰い手に同情してしまっていた。まあ本人がいつになく楽しそうなのでいいか。これ以上邪魔するのも申し訳ないので、私は大人しく宿題をすることにした。
「兄が出来たんだ」
宿題を広げていると、前からイザナ君の声。咄嗟に顔を上げれば、彼は本当に幸せそうな顔をしていた。あれ?妹がいることは聞いていたけど兄もいたのか?生き別れとか?なんだか複雑そうだが根掘り葉掘り聞くのも性分じゃないので、私はつられる様に微笑み返した。
「…そうなんだ、良かったね」
「真一郎は色々なことを教えてくれるんだ。不良の遊び方も、服も、髪型も、笑い方も全部真一郎が教えてくれた」
「………楽しそうでよかったよ」
思い出を振り返るように語るイザナ君は言葉通り本当に楽しそうだった。楽しそうだったんだけど、今不良って言った?その真一郎さんって人不良なの?それじゃもう不良街道まっしぐらじゃん。ただでさえ素質があるイザナ君だもん。本人の人生だし好きにすればいいけど、彼が盲目的にならないかが少し心配だった。だって葉書まじで普通じゃないんだもん。彼は家族からの愛に飢えていた。だからこそ手を差し伸べてくれたその人に対して、歪んだ愛を向けないだろうかと思ったけど、所詮私はイザナ君にとって他人だ。仲良くはしてくれているけど、他人の私から何言われても目障りなだけだろう。
「羨ましいだろ?」
「いや別に…」
「やらないからな。だって真一郎はオレだけのお兄ちゃんなんだから」
「………末永くお幸せに」
私の言葉にイザナ君は満足そうだ。雑な対応をしたつもりなのだが、いつもならキレてくるくせに満更でもない彼。私は見ていられなくて彼の笑顔から目をそらす。それなら兄弟なのに何でイザナ君は引き取ってもらえないんだろう、と頭に浮かぶけどやっぱり野暮だよなあとそれはかき消した。
子供達との感動の再会を終えた私はぼけーっとベンチに座っていると、最後に見た時より背が伸びたイザナ君が私の前まで来た。読めない表情をしている彼に、「久しぶり」とへらへらと笑いかける。
「戻ってくるなって言ったろ」
「私だってそうしたかったよ」
「………」
「ていうか第一声がそれ?イザナ君は私との再会を喜んでくれないんだなぁ〜」
茶化すように笑っても反応は返ってこない。なんなんだそのシリアスムードは。私はもう立ち直っているので、職員達共々きみも私を慰めようとしなくてもいいんだよ。静まり返った空気に居心地の悪さを感じて「とりあえず座りなよ」と手首を引っ張れば、案外すんなりイザナ君は私の隣に座った。
「背伸びたね」
「…そりゃ2年も経てばな」
「なんか変わったことあった?」
「オマエ以外にも下僕ができた」
なんてこった。知らないうちに同僚が出来ていた。いやいやいやいや。
「いつから私はイザナ君の下僕になったの」
「何言ってんだよ今更」
「……あー、うん。もういいやそれで」
さも当然という顔をしたイザナ君に否定することが面倒くさくなって私は彼から顔を逸らした。楽しそうにサッカーをしている子供達へ目を向ける。懐かしさを感じていると、イザナ君がぽつりと呟いた。
「しょうがねぇからオマエも国民にしてやる」
「………ん?」
「だから前みたいにだらしない顔してろ」
なんだ、だらしない顔って。抗議しようと再度イザナ君へ顔を向ければ、彼は珍しく表情を緩めていた。作ったような笑顔は何度か見たことあるけど、人を安心させるような優しい顔に、彼なりの慰めだと気付いてしまった。でも国民がどうとかは意味分からないけど。国でも立ち上げるんか?俺がキングだ!ってこと?
「えーっとじゃあ年収1000万でお願いします」
「調子乗んなよ」
「先に言ったもん勝ちかなって…。私は何不自由なく普通に幸せに暮らすことを目標にしていますので!頼りにしてますからねイザナ王!」
「あからさまに媚びてくんな」
面倒くさそうに私を見るイザナ君。火を付けたのはイザナ君なのでやめるつもりはなかったのだが、限度を弁えないと拳が飛んできそうなのでやめた。
「イザナ!」
隣の彼を呼ぶ活発な声に咄嗟にそちらへと顔を向ける。そこには黒髪の元気そうな少年がいた。まず嫌でも目につく顔を占める大きな傷に一瞬でワケありなことを察した。ていうかワケありじゃなきゃ施設に身を置いてないか。みんなワケありだものね。男の子はイザナ君の方へと行く。私は顔見知りじゃないし2人で話したいなら邪魔かなと立ち上がるが、パシッと制するように手首を掴まれた。振り返れば掴んだ相手はイザナ君で。私を止められたので彼はあっさりと手を離して、今度はやってきた男の子の肩に手を置いた。
「ちょうどよかった。ハナ、コイツがオレの下僕の鶴蝶」
「よ、よろしく!」
「え、まじで下僕は本人公認なの?」
否定しないのか。と吃驚するけど、本人達は普通らしい。下僕とか言ってるのは小学生らしいっちゃらしいけど、人としての倫理観は持て。ドン引きしていると、鶴蝶君はおずおずと私を上目遣いで見てきた。身長差があるので、彼は私より年下だろう。いやでも身長で決めるとなると半間君は例外だな。普通に上級生の背を越してた。あの子はロクな大人になりそうもないので、もう二度と会うこともないであろうが彼の更生を願うばかりだ。
「ハナ…さんって前イザナが言ってた子?」
「さん付けなんかする必要ないだろ。下僕同士なんだから」
「いやいやそんなことより私がいない時にイザナ君ってば私の話をしてたの?なんだよも〜可愛いとこあるじゃん!」
「は?うぜぇな殴るぞ」
「イタタタタタ!殴ってはないけど手はあげてる!手首捻るのはやめて!謝るから!ごめんって!」
彼は盛大な舌打ちをして私の手首を投げるように解放した。普通に離してくれ。からかった私が100%悪いのだが、彼の暴君に磨きがかかっていることに、半間君といいこの子もこんな調子で大丈夫かと心配してしまう。グレそ〜、とジト目で睨むと「文句あんのか?」と有無を言わせない微笑みを向けられた。だから怖いって。
「2人とも仲良いんだな!」
「あ?」
「まぁ…、そうかもね?イザナ君」
「オマエさっきからキモイ」
演技だけど熱っぽい視線を向けてみれば、イザナ君からドン引きされる。なんだよノリ悪いな。
ふと職員さんに呼ばれた。目を向ければこちらに向けて手招きしているので来いということらしい。行かなくちゃいけないが、挨拶しないのもなんなので私は鶴蝶君の手を取り握手した。
「それじゃあ下僕同士?よろしくね、鶴蝶君」
「お、おう。よろしくな!」
「2人でイザナ君に養ってもらおうね。目指せ年収1000万!」
「え?ね、ねんしゅう…?」
「さっさと行けよ」
手を急に取られたことに驚いたのか鶴蝶君は頬を朱に染める。これだよこれが小学生の反応だよ!自分の求めていた反応にイザナ君にシッシッとされても特に気分を害することもなく、私は2人に笑顔で手を振り、待たせてしまっている職員さんの所へと走って向かった。
━━━━━━━━
週末、朝ご飯を食べ終えて、さて宿題でもしようかと図書室を訪れる。どこに座ろうかと辺りを見回すと、見慣れた姿があることに気付いた。イザナ君である。いつになく真剣な表情に私は悪いことを思いついてしまった。後ろに忍び寄って驚かせてやろう、と。後々考えれば痛い目にあうことは目に見えていたが、学習能力のない私はそんなことなどすっかり忘れていた。そろりそろりとイザナ君の背後へと忍び寄る。そういえば珍しく真面目な顔して何を書いているんだろうと興味がわき、私は気付かれないように上から覗き込んだ。
「えっ」
葉書にぎっしりと書き詰められた文字はあまりにもおびただしくて思わず声が漏れてしまう。咄嗟に口を押さえても、それはもう遅く、イザナ君は私を見上げた。
「なに?」
やべ怒られると身構えるも、彼はなんてことないような顔をしていた。どうやら覗かれても全然問題なかったらしい。ほっと胸を撫で下ろし、私はイザナ君の向かい側の席に腰を下ろした。しかしイザナ君は私を気にも留めずに、再び文字を走らせた。罫線のない葉書を真っ直ぐとあんなに文字を描き詰めることが出来ることに、一周まわって尊敬してしまう。それにしてもおびただしいけど。
「手紙書いてるの?」
「うん」
イザナ君はちらりと私を一瞥してから頷いた。私は本当に失礼な人間だから、うわ貰いたくねー、と貰い手に同情してしまっていた。まあ本人がいつになく楽しそうなのでいいか。これ以上邪魔するのも申し訳ないので、私は大人しく宿題をすることにした。
「兄が出来たんだ」
宿題を広げていると、前からイザナ君の声。咄嗟に顔を上げれば、彼は本当に幸せそうな顔をしていた。あれ?妹がいることは聞いていたけど兄もいたのか?生き別れとか?なんだか複雑そうだが根掘り葉掘り聞くのも性分じゃないので、私はつられる様に微笑み返した。
「…そうなんだ、良かったね」
「真一郎は色々なことを教えてくれるんだ。不良の遊び方も、服も、髪型も、笑い方も全部真一郎が教えてくれた」
「………楽しそうでよかったよ」
思い出を振り返るように語るイザナ君は言葉通り本当に楽しそうだった。楽しそうだったんだけど、今不良って言った?その真一郎さんって人不良なの?それじゃもう不良街道まっしぐらじゃん。ただでさえ素質があるイザナ君だもん。本人の人生だし好きにすればいいけど、彼が盲目的にならないかが少し心配だった。だって葉書まじで普通じゃないんだもん。彼は家族からの愛に飢えていた。だからこそ手を差し伸べてくれたその人に対して、歪んだ愛を向けないだろうかと思ったけど、所詮私はイザナ君にとって他人だ。仲良くはしてくれているけど、他人の私から何言われても目障りなだけだろう。
「羨ましいだろ?」
「いや別に…」
「やらないからな。だって真一郎はオレだけのお兄ちゃんなんだから」
「………末永くお幸せに」
私の言葉にイザナ君は満足そうだ。雑な対応をしたつもりなのだが、いつもならキレてくるくせに満更でもない彼。私は見ていられなくて彼の笑顔から目をそらす。それなら兄弟なのに何でイザナ君は引き取ってもらえないんだろう、と頭に浮かぶけどやっぱり野暮だよなあとそれはかき消した。