中学生編
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『ワリィ、用ができて今日会えねぇ』そう表示された携帯の画面に無意識に眉が寄る。あんなに頑なに、明日会う!とか言っていたのに、一体どうしたのだろう。ほんの少し嫌な予感がしたが、気の所為だろうと適当に返事を打つ。暴走族の総長だし、彼も色々と忙しいのだろう。しかしマイキー君から今まで暇潰しと言わんばかりに中々の頻度で来ていたメールがこれ以降ぱたりと止んだ。
「よ、ハナ」
2週間ぶりに会ったマイキー君は私と目が合うなり笑顔を向けてきた。それを見て思わず顔が引き攣る。笑顔が嘘くせぇ〜〜。こりゃ何かあったなとすぐに察するが、私は遠回しに聞けるほど器用な人間ではない。
「マイキー君、その下手くそな笑顔なんとかした方がいいよ」
そう指摘してやれば、彼は驚いたのか一瞬目を見張るもすぐに同じ笑顔を作って「オマエだけには言われたくねぇ」と言ってきた。は?私は笑顔作るのめっちゃ上手いですけど?こちとら前世で社会人経験してんだ、下手なわけがない。
指定されたファミレスに来たが、先に店で待っていた彼は珍しくお子様ランチも食べずにドリンクバーのみで済ませていたらしい。どうしよう、嫌な予感しかしない。
「なんか食う?」
向かいの席に座れば、メニューを差し出されたのでとりあえず受け取る。来る前は何食べようか悩んだものだが、マイキー君がお子様ランチを頼んでいなかったことが衝撃的過ぎて食欲は消え去ってしまった。呼び出しボタンを押して注文を取りに来てくれた店員さんにドリンクバーだけを頼む。
飲み物取ってくるね、と一声かけて席を外し、アイスティーを入れて戻ってきたら、マイキー君は項垂れていた。これ絶対何かあったじゃん。
「早速だけど、今日呼び出した理由を聞いてもいい?」
持ってきたアイスティーをテーブルの上に置き、座席に座りながら問い掛けると、マイキー君はびくりと肩を震わせた。向かい合っているのに、「あー…、」と気まずそうに視線を彷徨わせているから目が合わない。
「……この前の件だけど」
「私がマイキー君をメールで呼び出した件だよね」
暴走族の逆恨み事件って勝手に呼んでる。マイキー君は頷くと、そのまま決まりの悪い顔で言葉を紡ぐ。
「アレ、元はと言えばオレらのせいだろ。何も関係ねぇハナを巻き込んじまった」
「きみ達の所為ではないでしょ」
真っ向から否定すると、少しだけ彼の瞳が揺れた気がした。だってそうだろう。女1人相手にチーム全員ではないにしても、絶対に勝てると踏んで10人以上でぞろぞろと押し寄せてきた向こうが100%悪い。パンピーを巻き込むな。あんだけ言ったからもう二度と来ないとは思うけど。マイキー君はすぐに緩く首を横に振ると「……それで、聞きたいんだけど」といつもより低めの声で続けた。
「ハナはオレらと離れた方がいい?」
「…ん?」
そこでようやく彼と目が合った。真っ黒い瞳が私を映す。
「いや、普通に離れたくないよ」
「そっか…、そうだよな…」
何も取り繕うことなく思うままに答えれば、それを聞いた彼は自嘲気味に少しだけ口角を上げたかと思いきや、とうとう下を向いてしまった。
「オレさ、オマエなら絶対そう言うって分かってて聞いたんだ。…ダセェだろ?」
「別にそんなことないと思うけど」
「…やっぱハナは優しいな」
「ケンチンにハナの為を思うんならこれ以上関わるの止めた方がいいって言われた。…そんなのすげぇ嫌だけど、オマエが傷付くのはもっと嫌だ」
……何か雲行きが怪しいぞ。私の声が届いてないんじゃないかってくらい、マイキー君は独りで話を進めてしまう。そこまで言って彼は再び顔を上げた。上げられたその顔はうんざりする程、嘘くさい笑顔だった。
「だからもうオマエとは関わんねぇ」
「は?無理」
食い気味に言ってやれば、マイキー君は元々大きな目を見開いた。「前にも似たようなことあったけど、勝手に決めるの止めて欲しいよね〜」と俯きながら頭を掻く。私のことを思ってくれている気持ちは十分伝わってる。けど、そんなの死ぬほど余計なお世話だ。頭を掻くのを止めて顔を上げれば、ぽかんと私を見ていたマイキー君と目が合う。
「きみ達と関係を断つくらいなら施設に戻されても構わない」
「ハナ……、」
「気付いてないんだろうけどマイキー君が思っている以上に、私はきみ達のこと好きなんだよ」
ドラケン君にもそう言っといて、と続けてから笑いかける。彼は目をまん丸にしたままだったが、しばらくしてふっと表情が和らいだ。
「ケンチンに直接言えよ」
安堵したような気の抜けた顔で落とされた言葉の声音は柔らかかった。
「ハナさん、ごめん!」
マイキー君に有無を言わせず連れて来られた場所は創設メンバーの行きつけの喫茶店で、来店してまず先に三ツ谷君と目が合うと席から立ち上がった彼に頭を下げられた。予想だにしない行動に吃驚して「えっ」と情けない声が漏れ出る。気が動転しつつも慌てて彼の頭を上げさせるも、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「オレの詰めが甘かった。もっと上手くやってればこんな騒ぎ起きなかったはずだ」
「いやいや三ツ谷君の所為じゃないよ。マイキー君にも言ったけど、悪いのは100%向こうだから」
「…けど、」
「はいこの話おわりー!過ぎたこと気にしたって仕方ないじゃん」
ぽんっと三ツ谷君の肩に手を置いてから彼の横を通り過ぎて、ドラケン君が座ってる向かいの席に座る。頬杖をつきながら様子を伺えば、彼は驚いたように目を見張っていたので、可笑しくて思わず失笑してしまった。
「そういうわけだからドラケン君もあんまり寂しいこと言わないように」
「…いいのか?それで」
「ケンチン、ハナってオレらのこと大好きなんだってよ」
「大好きとまでは言ってない」
そんなにスペース空けてなかったのにマイキー君が私の隣に座ってくるので、とりあえず横にずれる。否定すれば「照れてんの?」と生意気にも顔を覗き込んできたので、デコピンをお見舞いしてやった。
とりあえず私は腹が減った。新聞を読みながら眠そうな目をしているマスターに少しだけ声を張ってナポリタンとクリームソーダを頼んでから、再び前を向けばドラケン君がすごく微妙な顔をしていた。
「えっもしかして食い意地はってるからって引いてる?」
「いや…、」
「喫茶店といえばナポリタンとクリームソーダが定番じゃない?マイキー君もそう思うでしょ」
「オレ、チョコパ食いたい」
「マスター!チョコレートパフェも追加で!」
私達だけすっごい自由だ。おそらくドラケン君が言いたいのはそういうことじゃないって分かってはいたのだが、もう彼には気にしないで欲しかったので気付かないフリをする。とぼける私を察してかドラケン君は少しだけ眉を寄せるも、それ以上追求してこなかった。
「…また何かあったら言えよ」
「ありがとう」
彼の優しさににこりと微笑んで返す。この子は本当にいい男だ。昔から私の気持ちを汲み取ってくれる。先に運ばれてきたクリームソーダをストローで吸い上げてから、スプーンでアイスを1口。うーん、甘い。中々の満足感にこれではナポリタンが来る前に満腹になってしまいそうだ。
「でも学校に暴走族の人達が来るのだけは勘弁して欲しいんだよね」
ふと不安を口にする。1番の心配はこれだった。あんな展開は漫画とかドラマでしか見たことがないので、現実でましてや当事者になるなんて思いもしなかった。話題に興味がないのか目の前の物に夢中なのか知らないが、一緒に運ばれてきたチョコパに目もくれずマイキー君は私に許可を取ることもなくクリームソーダを横取りする。アイス食いたいならチョコパ食えよ。冷たいの2連続は腹壊すぞ。ドラケン君は私の悩みを聞くと、可笑しい要素なんてないのに何故か半笑いだ。
「それについては大丈夫じゃね?」
「え?なんで?」
「オマエ知らねーの?」
「新宿の鬼女、なんて噂になってたぜ」
新宿のキジョ?なんのこっちゃと目をぱちくりと瞬かせていると、カウンター席に座りながらこっちに身体を向けてる三ツ谷君が「あ、それオレも聞いた」なんて乗ってきた。しかし私は全く心当たりがない。ドラケン君がからかうような半笑いをしていることから、なんとなく良い話じゃなさそうだけど恐る恐る問い掛ける。
「誰が?」
「誰ってオマエしかいねーだろ」
「はあ!?」
とんでもないことを突き付けられて吃驚して思いの外大きな声が出てしまい、咄嗟に口を手で覆う。けらけら笑うドラケン君や不憫そうに私を見る三ツ谷君なんて気にしていられない。頭を抱えていると「んな噂もあるしガッコーにはもう来ねぇだろ」と上から声が降ってきた。うん、そうだね。それは解決したんだろうけどさ。
「なにそれダッサ…、恥ずかしいから止めて欲しいんだけど」
「そーか?結構よくね?」
「どこがよ」
ネット用語のイメージしかないぞ。他人事だからって適当に言ってるマイキー君にツッコむ。奪われたクリームソーダはもう半分くらいまでなくなっていたが、奪い返す気力はない。鬼女といえば「鬼女紅葉さんって第1再臨が1番可愛いよね…」そう現実逃避をしていると何言ってんだコイツみたいな目を3人から向けられた。生憎と私は彼女みたいに綺麗ではないのが難点である。
「たった1度の騒ぎなのに何でそんな異名がつくかなぁ」
「女だから余計なんじゃねーの。聞いたことねぇよ、1人で返り討ちにする女なんか」
「…………」
「顔バレまではしてねぇだろうから外で呼ばれることはない……と思うし、そんな気落とさなくても大丈夫だって」
「三ツ谷の言う通りさすがに顔バレまではしてねーだろ。……多分」
「めちゃくちゃ自信なさそうだけど信じてもいいの?」
2人は苦い顔をしていた。いや、フォローするなら最後まで頑張れよ。全く不安を拭うことの出来ない慰めをもらっている私をよそに、マスターが運んできたナポリタンを当たり前のように食べ始めるマイキー君。お前チョコパ食いたいんじゃなかったのかよ。はあ、と溜息を1つ落として彼が手を付けずに放置していた溶けかかっているチョコレートパフェへ手を伸ばした。
「よ、ハナ」
2週間ぶりに会ったマイキー君は私と目が合うなり笑顔を向けてきた。それを見て思わず顔が引き攣る。笑顔が嘘くせぇ〜〜。こりゃ何かあったなとすぐに察するが、私は遠回しに聞けるほど器用な人間ではない。
「マイキー君、その下手くそな笑顔なんとかした方がいいよ」
そう指摘してやれば、彼は驚いたのか一瞬目を見張るもすぐに同じ笑顔を作って「オマエだけには言われたくねぇ」と言ってきた。は?私は笑顔作るのめっちゃ上手いですけど?こちとら前世で社会人経験してんだ、下手なわけがない。
指定されたファミレスに来たが、先に店で待っていた彼は珍しくお子様ランチも食べずにドリンクバーのみで済ませていたらしい。どうしよう、嫌な予感しかしない。
「なんか食う?」
向かいの席に座れば、メニューを差し出されたのでとりあえず受け取る。来る前は何食べようか悩んだものだが、マイキー君がお子様ランチを頼んでいなかったことが衝撃的過ぎて食欲は消え去ってしまった。呼び出しボタンを押して注文を取りに来てくれた店員さんにドリンクバーだけを頼む。
飲み物取ってくるね、と一声かけて席を外し、アイスティーを入れて戻ってきたら、マイキー君は項垂れていた。これ絶対何かあったじゃん。
「早速だけど、今日呼び出した理由を聞いてもいい?」
持ってきたアイスティーをテーブルの上に置き、座席に座りながら問い掛けると、マイキー君はびくりと肩を震わせた。向かい合っているのに、「あー…、」と気まずそうに視線を彷徨わせているから目が合わない。
「……この前の件だけど」
「私がマイキー君をメールで呼び出した件だよね」
暴走族の逆恨み事件って勝手に呼んでる。マイキー君は頷くと、そのまま決まりの悪い顔で言葉を紡ぐ。
「アレ、元はと言えばオレらのせいだろ。何も関係ねぇハナを巻き込んじまった」
「きみ達の所為ではないでしょ」
真っ向から否定すると、少しだけ彼の瞳が揺れた気がした。だってそうだろう。女1人相手にチーム全員ではないにしても、絶対に勝てると踏んで10人以上でぞろぞろと押し寄せてきた向こうが100%悪い。パンピーを巻き込むな。あんだけ言ったからもう二度と来ないとは思うけど。マイキー君はすぐに緩く首を横に振ると「……それで、聞きたいんだけど」といつもより低めの声で続けた。
「ハナはオレらと離れた方がいい?」
「…ん?」
そこでようやく彼と目が合った。真っ黒い瞳が私を映す。
「いや、普通に離れたくないよ」
「そっか…、そうだよな…」
何も取り繕うことなく思うままに答えれば、それを聞いた彼は自嘲気味に少しだけ口角を上げたかと思いきや、とうとう下を向いてしまった。
「オレさ、オマエなら絶対そう言うって分かってて聞いたんだ。…ダセェだろ?」
「別にそんなことないと思うけど」
「…やっぱハナは優しいな」
「ケンチンにハナの為を思うんならこれ以上関わるの止めた方がいいって言われた。…そんなのすげぇ嫌だけど、オマエが傷付くのはもっと嫌だ」
……何か雲行きが怪しいぞ。私の声が届いてないんじゃないかってくらい、マイキー君は独りで話を進めてしまう。そこまで言って彼は再び顔を上げた。上げられたその顔はうんざりする程、嘘くさい笑顔だった。
「だからもうオマエとは関わんねぇ」
「は?無理」
食い気味に言ってやれば、マイキー君は元々大きな目を見開いた。「前にも似たようなことあったけど、勝手に決めるの止めて欲しいよね〜」と俯きながら頭を掻く。私のことを思ってくれている気持ちは十分伝わってる。けど、そんなの死ぬほど余計なお世話だ。頭を掻くのを止めて顔を上げれば、ぽかんと私を見ていたマイキー君と目が合う。
「きみ達と関係を断つくらいなら施設に戻されても構わない」
「ハナ……、」
「気付いてないんだろうけどマイキー君が思っている以上に、私はきみ達のこと好きなんだよ」
ドラケン君にもそう言っといて、と続けてから笑いかける。彼は目をまん丸にしたままだったが、しばらくしてふっと表情が和らいだ。
「ケンチンに直接言えよ」
安堵したような気の抜けた顔で落とされた言葉の声音は柔らかかった。
「ハナさん、ごめん!」
マイキー君に有無を言わせず連れて来られた場所は創設メンバーの行きつけの喫茶店で、来店してまず先に三ツ谷君と目が合うと席から立ち上がった彼に頭を下げられた。予想だにしない行動に吃驚して「えっ」と情けない声が漏れ出る。気が動転しつつも慌てて彼の頭を上げさせるも、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「オレの詰めが甘かった。もっと上手くやってればこんな騒ぎ起きなかったはずだ」
「いやいや三ツ谷君の所為じゃないよ。マイキー君にも言ったけど、悪いのは100%向こうだから」
「…けど、」
「はいこの話おわりー!過ぎたこと気にしたって仕方ないじゃん」
ぽんっと三ツ谷君の肩に手を置いてから彼の横を通り過ぎて、ドラケン君が座ってる向かいの席に座る。頬杖をつきながら様子を伺えば、彼は驚いたように目を見張っていたので、可笑しくて思わず失笑してしまった。
「そういうわけだからドラケン君もあんまり寂しいこと言わないように」
「…いいのか?それで」
「ケンチン、ハナってオレらのこと大好きなんだってよ」
「大好きとまでは言ってない」
そんなにスペース空けてなかったのにマイキー君が私の隣に座ってくるので、とりあえず横にずれる。否定すれば「照れてんの?」と生意気にも顔を覗き込んできたので、デコピンをお見舞いしてやった。
とりあえず私は腹が減った。新聞を読みながら眠そうな目をしているマスターに少しだけ声を張ってナポリタンとクリームソーダを頼んでから、再び前を向けばドラケン君がすごく微妙な顔をしていた。
「えっもしかして食い意地はってるからって引いてる?」
「いや…、」
「喫茶店といえばナポリタンとクリームソーダが定番じゃない?マイキー君もそう思うでしょ」
「オレ、チョコパ食いたい」
「マスター!チョコレートパフェも追加で!」
私達だけすっごい自由だ。おそらくドラケン君が言いたいのはそういうことじゃないって分かってはいたのだが、もう彼には気にしないで欲しかったので気付かないフリをする。とぼける私を察してかドラケン君は少しだけ眉を寄せるも、それ以上追求してこなかった。
「…また何かあったら言えよ」
「ありがとう」
彼の優しさににこりと微笑んで返す。この子は本当にいい男だ。昔から私の気持ちを汲み取ってくれる。先に運ばれてきたクリームソーダをストローで吸い上げてから、スプーンでアイスを1口。うーん、甘い。中々の満足感にこれではナポリタンが来る前に満腹になってしまいそうだ。
「でも学校に暴走族の人達が来るのだけは勘弁して欲しいんだよね」
ふと不安を口にする。1番の心配はこれだった。あんな展開は漫画とかドラマでしか見たことがないので、現実でましてや当事者になるなんて思いもしなかった。話題に興味がないのか目の前の物に夢中なのか知らないが、一緒に運ばれてきたチョコパに目もくれずマイキー君は私に許可を取ることもなくクリームソーダを横取りする。アイス食いたいならチョコパ食えよ。冷たいの2連続は腹壊すぞ。ドラケン君は私の悩みを聞くと、可笑しい要素なんてないのに何故か半笑いだ。
「それについては大丈夫じゃね?」
「え?なんで?」
「オマエ知らねーの?」
「新宿の鬼女、なんて噂になってたぜ」
新宿のキジョ?なんのこっちゃと目をぱちくりと瞬かせていると、カウンター席に座りながらこっちに身体を向けてる三ツ谷君が「あ、それオレも聞いた」なんて乗ってきた。しかし私は全く心当たりがない。ドラケン君がからかうような半笑いをしていることから、なんとなく良い話じゃなさそうだけど恐る恐る問い掛ける。
「誰が?」
「誰ってオマエしかいねーだろ」
「はあ!?」
とんでもないことを突き付けられて吃驚して思いの外大きな声が出てしまい、咄嗟に口を手で覆う。けらけら笑うドラケン君や不憫そうに私を見る三ツ谷君なんて気にしていられない。頭を抱えていると「んな噂もあるしガッコーにはもう来ねぇだろ」と上から声が降ってきた。うん、そうだね。それは解決したんだろうけどさ。
「なにそれダッサ…、恥ずかしいから止めて欲しいんだけど」
「そーか?結構よくね?」
「どこがよ」
ネット用語のイメージしかないぞ。他人事だからって適当に言ってるマイキー君にツッコむ。奪われたクリームソーダはもう半分くらいまでなくなっていたが、奪い返す気力はない。鬼女といえば「鬼女紅葉さんって第1再臨が1番可愛いよね…」そう現実逃避をしていると何言ってんだコイツみたいな目を3人から向けられた。生憎と私は彼女みたいに綺麗ではないのが難点である。
「たった1度の騒ぎなのに何でそんな異名がつくかなぁ」
「女だから余計なんじゃねーの。聞いたことねぇよ、1人で返り討ちにする女なんか」
「…………」
「顔バレまではしてねぇだろうから外で呼ばれることはない……と思うし、そんな気落とさなくても大丈夫だって」
「三ツ谷の言う通りさすがに顔バレまではしてねーだろ。……多分」
「めちゃくちゃ自信なさそうだけど信じてもいいの?」
2人は苦い顔をしていた。いや、フォローするなら最後まで頑張れよ。全く不安を拭うことの出来ない慰めをもらっている私をよそに、マスターが運んできたナポリタンを当たり前のように食べ始めるマイキー君。お前チョコパ食いたいんじゃなかったのかよ。はあ、と溜息を1つ落として彼が手を付けずに放置していた溶けかかっているチョコレートパフェへ手を伸ばした。