中学生編
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小さい頃からお世話になっていた施設を訪れていた。結論から言うと、イザナ君のことが心配だったから。彼からしたら他人の私が心配すること自体が余計なお世話だろうが、ウザがられるのは承知の上だ。事故で携帯が壊れたことによって連絡が出来なくなり、生活が一変した中で私はイザナ君のことだけが心に引っかかっていた。会えなくても構わないから、彼が元気にやっているかどうかの確認だけでもしておきたかった。
「……今、なんて?」
信じられなくて聞き返す。私の言葉に目の前の彼は顔を悲痛に歪めるも、すぐに固く結ばれた唇をわなわなと開いた。
「…イザナは半年以上前からずっと帰ってきてねぇ」
音沙汰無しだ、と次いで紡いだ彼、鶴蝶君の声が震えていて、私はそれ以上何も言えなかった。どうして、なんて言えた立場ではない。イザナ君に存在意義を与えられた彼の方が余程辛いことは分かっていたから。それに比べたら私の心配なんて大したものじゃない。けれど自分だけの兄だと執着していたのに、真一郎さんが亡くなったと知ったイザナ君が一体どうしているか気になって仕方がないのだ。
私はそれを言っていいのか悩んだが、鶴蝶君に話した。イザナ君が天涯孤独だったこと、事故に遭い彼と連絡が出来なくなったこと、真一郎さんが亡くなったこと。話し終えると、両肩に手を置かれた。ぐわんぐわん揺らされる。
「トラックと事故って、オマエ大丈夫なのか!?怪我は!?」
「え?そっち?」
「そっち?じゃねぇよ!ハナは昔っから自分のことだけは無頓着だ!ちったぁ気にしろ!」
「すみません」
「それで?どうなんだ!?」
「大したことないよ。完治しました!」
「本当だな?ウソついたら怒る」
「………少し傷痕が残った」
「っ大したことあるじゃねーか!」
「ご、ごめん」
「…けど、生きててよかった」
ふと目を見張る。さっきまで血相変えて私の肩を揺さぶっていた彼の動きは止まり、その目が少しだけ潤んでいた。
「オマエまでなくしちまったら、オレは耐えらんねぇ…」
ぽつりと呟くように落とされた言葉を聞いて、たまらず私は彼を引き寄せた。背中へと手を回す。彼の手はだらんと下へ落ちた。
「心配してくれてありがとう」
「…礼を言われることじゃねぇ。仲間の心配するのは当たり前のことだろ」
「そっか、私達同僚だもんね。…王様はいつになったら帰ってくるかなぁ」
「アイツはきっと生きてる。信じて待とう。…ってオレ達いつもイザナの帰り待ってるよな」
「確かに」
さっきまで張り詰めていた空気のせいもあるが、堰を切ったように笑いが込み上げてきた。一頻り鶴蝶君と笑い合う。ようやく場が静まった後、1つだけお願いしたいことがあったことを思い出した。
「…また遊びに来ていいかな?」
「遠慮しねぇでいつでも来い。…イザナが見つかったら、オレからも連絡する」
ありがとう、と告げれば「礼なんかいらねぇ」とまた言われてしまった。気付いたら背中に回されていた手が、彼の人柄と同じでとても暖かかった。
施設から帰っている途中、降りる駅を間違えた。間違えついでにちょっと散歩していると、向かいの歩道で特攻服を着てる人がいた。隣に制服着てる人を連れている。普段ならガラ悪いとこで降りちゃったなぁ〜、なんて思うだろうが、特攻服を着てる人物があまりにも見覚えがあったので咄嗟に信号を渡ってあとを追い掛ける。
「あの!」
路地に入ったところで、まだ距離はあるがある程度近付けたので声を掛けると、2人ともゆるりと振り返った。人違いだったらどうしようと一瞬過ぎるも、その顔を見て安堵する。彼の火傷の痕に、申し訳ないが半冷半燃のキャラクターをふと思い出してしまった。不謹慎なことだが、彼には是非なりてえもんちゃんと見て欲しい。
向こうも覚えてくれていたのか、私と目が合うと軽く目を見張った。立ち止まってくれたので、2人に近付く。
「オマエは…」
「覚えてくれています、よね?私はイザナ君の友達というか、腐れ縁というか、とにかくイザナ君とは同じ釜の飯を食った仲です!」
そこで頭の中に現れたイザナ君に、下僕の間違いだろ、と嘲笑を浮かべられた。実物もこの場にいたら間違いなく横槍入れてくるだろうなと思いつつ想像のイザナ君を消し去っていると、乾君と呼ばれていた彼は「ああ」と短く頷いた。
「ハナ、だろ」
「…名前知ってたんですか」
「八代目に聞いた。それでオレに何の用だ?」
私はイザナ君から聞いていたので乾君の名前を知っていたが、彼まで私の名前を知っていることに驚いた。イザナ君が言ったらしいけど、普通ちょっと見ただけの女の名前なんか覚えないよね。私は彼のピンヒールのおかげで強烈に印象に残っていたから、覚えていたけど。
用件を促す乾君をじっと見つめる。もしかしたら彼なら知っているかもしれない。
「あの、イザナ君と連絡取れたりしますか?」
わざわざ追いかけてまで、聞きたかったのは勿論イザナ君のこと。少しだけ声が上擦る。取れるって言え!と頭の中で念じながら、手に汗を握る。そんな私に対して乾君は表情を変えることなく、口を開いた。
「…悪ぃけど、あの人とは連絡とれねぇ」
「……そっか」
「コイツはネンショー出たばっかなんだよ。その時点でオマエの言う八代目に連絡したにはしたが、繋がりゃしねぇ。だよな?イヌピー」
イザナ君と連絡が取れないと聞いて気分が沈んでいると、なんか乾君の隣にいた男の子が補足してきた。イヌピーってなんだ。呼び方めっちゃ可愛いな。黒髪の三白眼の子の言葉に乾君は頷くと、彼は携帯を取り出して操作したかと思えば、そのまま私の目の前に画面を突き出してきた。1つの電話番号が羅列している。意図が理解出来なくて画面から乾君へ視線を移すと、すかさず「オレの連絡先だ」と説明された。いや、何で?
「何かあったら連絡しろ」
「えっ」
「…あのあと、オマエを護ってやれって言われた」
「……もしかしてイザナ君に?」
乾君はこくりと頷く。放たれる言葉は簡潔だけど、すぐに分かった。1年前くらいにイザナ君と連絡先を交換した日、あの時彼は何かあったら乾君を頼れと言っていた。私と別れたあと、イザナ君は乾君にも言ってたんだ。失礼なことに側近自慢がしたいのかなって思っていたけど、マジだったらしい。だって話したこともない人に頼りようがないし。
「言い付けは守るつもりだ。だからオマエも何かあったら言え」
「…いや、悪いからいいよ。なにより乾君も暇じゃないでしょ」
イザナ君の気持ちを尊重すべきだろうかと考えたが、それでも乾君に大して知りもしない人間を護らせるのも気が引けた。
「八代目を無下にすることは出来ねぇ。四の五の言わずに連絡しろ」
「あっ…はい、何かあったら連絡します…」
とくに表情を変えることなく言われたけど、なんとなく圧を感じた。コレ頷かないと終わんないやつだと気付いて、とりあえず首を縦に振っておく。すると更に携帯の画面を突き付けられたので、携帯を取り出して手入力で番号を登録する。黒龍関係のイザコザに巻き込まれたら、ありがたく連絡させていただこう。
「私のは登録する?」
「いや、こっちから連絡するつもりはないから要らねぇ」
「…出来ればイザナ君のことが少しでも分かったら連絡くれると嬉しいんだけど…、お願い出来ないかな?」
「…それもそうか」
遠慮がちにお願いすると、乾君は突き付けていた携帯を自分の方へ戻した。OKをくれたと勝手に判断して「ワン切りしようか?」と聞けば、「頼む」と短く返されたので、登録したばかりの番号をワン切りした。
ふと視線を感じて無意識にそちらを見れば、乾君の連れの男の子と目が合う。するとその目はすぐに細められた。邪魔しちゃったから怒ってるのかもと思ったが、笑みを浮かべられたので少し驚く。もしかしたら怒ると笑うタイプなのかもしれない。
「邪魔しちゃってすみません。用はもう済みましたので」
「…いや、オレも捜してやろうか?」
「え!本当ですか!」
怒っていると思い謝ると、まさかの提案をされた。めちゃくちゃ良い人だ!と食いついたら、彼は一層笑みを深くした。
「オマエいくらまで出せる?」
「………ん?」
「成功報酬だよ。これは契約だ。貴重な時間割いてやるんだから、対価をもらうのはトーゼンだろ?」
「………ん?」
「おいおい、まさかタダで捜してやるとでも思ったのか?そんな上手い話があるわけねーだろ。めでてぇアタマしてんな」
「ココ、止めろ」
こいつやべえ。ドン引きしていると、乾君が制止してくれた。もう大分言い切った後なので遅い気がするけど。知った仲だろうから、欲を言えば提案してきた段階で止めて欲しかった。乾君にココと呼ばれたその男の子は舌打ちを漏らすと「イヌピーに免じて、こんくらいで許してやる」と嘲笑った。こいつやべえ。
「……今、なんて?」
信じられなくて聞き返す。私の言葉に目の前の彼は顔を悲痛に歪めるも、すぐに固く結ばれた唇をわなわなと開いた。
「…イザナは半年以上前からずっと帰ってきてねぇ」
音沙汰無しだ、と次いで紡いだ彼、鶴蝶君の声が震えていて、私はそれ以上何も言えなかった。どうして、なんて言えた立場ではない。イザナ君に存在意義を与えられた彼の方が余程辛いことは分かっていたから。それに比べたら私の心配なんて大したものじゃない。けれど自分だけの兄だと執着していたのに、真一郎さんが亡くなったと知ったイザナ君が一体どうしているか気になって仕方がないのだ。
私はそれを言っていいのか悩んだが、鶴蝶君に話した。イザナ君が天涯孤独だったこと、事故に遭い彼と連絡が出来なくなったこと、真一郎さんが亡くなったこと。話し終えると、両肩に手を置かれた。ぐわんぐわん揺らされる。
「トラックと事故って、オマエ大丈夫なのか!?怪我は!?」
「え?そっち?」
「そっち?じゃねぇよ!ハナは昔っから自分のことだけは無頓着だ!ちったぁ気にしろ!」
「すみません」
「それで?どうなんだ!?」
「大したことないよ。完治しました!」
「本当だな?ウソついたら怒る」
「………少し傷痕が残った」
「っ大したことあるじゃねーか!」
「ご、ごめん」
「…けど、生きててよかった」
ふと目を見張る。さっきまで血相変えて私の肩を揺さぶっていた彼の動きは止まり、その目が少しだけ潤んでいた。
「オマエまでなくしちまったら、オレは耐えらんねぇ…」
ぽつりと呟くように落とされた言葉を聞いて、たまらず私は彼を引き寄せた。背中へと手を回す。彼の手はだらんと下へ落ちた。
「心配してくれてありがとう」
「…礼を言われることじゃねぇ。仲間の心配するのは当たり前のことだろ」
「そっか、私達同僚だもんね。…王様はいつになったら帰ってくるかなぁ」
「アイツはきっと生きてる。信じて待とう。…ってオレ達いつもイザナの帰り待ってるよな」
「確かに」
さっきまで張り詰めていた空気のせいもあるが、堰を切ったように笑いが込み上げてきた。一頻り鶴蝶君と笑い合う。ようやく場が静まった後、1つだけお願いしたいことがあったことを思い出した。
「…また遊びに来ていいかな?」
「遠慮しねぇでいつでも来い。…イザナが見つかったら、オレからも連絡する」
ありがとう、と告げれば「礼なんかいらねぇ」とまた言われてしまった。気付いたら背中に回されていた手が、彼の人柄と同じでとても暖かかった。
施設から帰っている途中、降りる駅を間違えた。間違えついでにちょっと散歩していると、向かいの歩道で特攻服を着てる人がいた。隣に制服着てる人を連れている。普段ならガラ悪いとこで降りちゃったなぁ〜、なんて思うだろうが、特攻服を着てる人物があまりにも見覚えがあったので咄嗟に信号を渡ってあとを追い掛ける。
「あの!」
路地に入ったところで、まだ距離はあるがある程度近付けたので声を掛けると、2人ともゆるりと振り返った。人違いだったらどうしようと一瞬過ぎるも、その顔を見て安堵する。彼の火傷の痕に、申し訳ないが半冷半燃のキャラクターをふと思い出してしまった。不謹慎なことだが、彼には是非なりてえもんちゃんと見て欲しい。
向こうも覚えてくれていたのか、私と目が合うと軽く目を見張った。立ち止まってくれたので、2人に近付く。
「オマエは…」
「覚えてくれています、よね?私はイザナ君の友達というか、腐れ縁というか、とにかくイザナ君とは同じ釜の飯を食った仲です!」
そこで頭の中に現れたイザナ君に、下僕の間違いだろ、と嘲笑を浮かべられた。実物もこの場にいたら間違いなく横槍入れてくるだろうなと思いつつ想像のイザナ君を消し去っていると、乾君と呼ばれていた彼は「ああ」と短く頷いた。
「ハナ、だろ」
「…名前知ってたんですか」
「八代目に聞いた。それでオレに何の用だ?」
私はイザナ君から聞いていたので乾君の名前を知っていたが、彼まで私の名前を知っていることに驚いた。イザナ君が言ったらしいけど、普通ちょっと見ただけの女の名前なんか覚えないよね。私は彼のピンヒールのおかげで強烈に印象に残っていたから、覚えていたけど。
用件を促す乾君をじっと見つめる。もしかしたら彼なら知っているかもしれない。
「あの、イザナ君と連絡取れたりしますか?」
わざわざ追いかけてまで、聞きたかったのは勿論イザナ君のこと。少しだけ声が上擦る。取れるって言え!と頭の中で念じながら、手に汗を握る。そんな私に対して乾君は表情を変えることなく、口を開いた。
「…悪ぃけど、あの人とは連絡とれねぇ」
「……そっか」
「コイツはネンショー出たばっかなんだよ。その時点でオマエの言う八代目に連絡したにはしたが、繋がりゃしねぇ。だよな?イヌピー」
イザナ君と連絡が取れないと聞いて気分が沈んでいると、なんか乾君の隣にいた男の子が補足してきた。イヌピーってなんだ。呼び方めっちゃ可愛いな。黒髪の三白眼の子の言葉に乾君は頷くと、彼は携帯を取り出して操作したかと思えば、そのまま私の目の前に画面を突き出してきた。1つの電話番号が羅列している。意図が理解出来なくて画面から乾君へ視線を移すと、すかさず「オレの連絡先だ」と説明された。いや、何で?
「何かあったら連絡しろ」
「えっ」
「…あのあと、オマエを護ってやれって言われた」
「……もしかしてイザナ君に?」
乾君はこくりと頷く。放たれる言葉は簡潔だけど、すぐに分かった。1年前くらいにイザナ君と連絡先を交換した日、あの時彼は何かあったら乾君を頼れと言っていた。私と別れたあと、イザナ君は乾君にも言ってたんだ。失礼なことに側近自慢がしたいのかなって思っていたけど、マジだったらしい。だって話したこともない人に頼りようがないし。
「言い付けは守るつもりだ。だからオマエも何かあったら言え」
「…いや、悪いからいいよ。なにより乾君も暇じゃないでしょ」
イザナ君の気持ちを尊重すべきだろうかと考えたが、それでも乾君に大して知りもしない人間を護らせるのも気が引けた。
「八代目を無下にすることは出来ねぇ。四の五の言わずに連絡しろ」
「あっ…はい、何かあったら連絡します…」
とくに表情を変えることなく言われたけど、なんとなく圧を感じた。コレ頷かないと終わんないやつだと気付いて、とりあえず首を縦に振っておく。すると更に携帯の画面を突き付けられたので、携帯を取り出して手入力で番号を登録する。黒龍関係のイザコザに巻き込まれたら、ありがたく連絡させていただこう。
「私のは登録する?」
「いや、こっちから連絡するつもりはないから要らねぇ」
「…出来ればイザナ君のことが少しでも分かったら連絡くれると嬉しいんだけど…、お願い出来ないかな?」
「…それもそうか」
遠慮がちにお願いすると、乾君は突き付けていた携帯を自分の方へ戻した。OKをくれたと勝手に判断して「ワン切りしようか?」と聞けば、「頼む」と短く返されたので、登録したばかりの番号をワン切りした。
ふと視線を感じて無意識にそちらを見れば、乾君の連れの男の子と目が合う。するとその目はすぐに細められた。邪魔しちゃったから怒ってるのかもと思ったが、笑みを浮かべられたので少し驚く。もしかしたら怒ると笑うタイプなのかもしれない。
「邪魔しちゃってすみません。用はもう済みましたので」
「…いや、オレも捜してやろうか?」
「え!本当ですか!」
怒っていると思い謝ると、まさかの提案をされた。めちゃくちゃ良い人だ!と食いついたら、彼は一層笑みを深くした。
「オマエいくらまで出せる?」
「………ん?」
「成功報酬だよ。これは契約だ。貴重な時間割いてやるんだから、対価をもらうのはトーゼンだろ?」
「………ん?」
「おいおい、まさかタダで捜してやるとでも思ったのか?そんな上手い話があるわけねーだろ。めでてぇアタマしてんな」
「ココ、止めろ」
こいつやべえ。ドン引きしていると、乾君が制止してくれた。もう大分言い切った後なので遅い気がするけど。知った仲だろうから、欲を言えば提案してきた段階で止めて欲しかった。乾君にココと呼ばれたその男の子は舌打ちを漏らすと「イヌピーに免じて、こんくらいで許してやる」と嘲笑った。こいつやべえ。