中学生編
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今日は叔父さんが家に帰って来ないらしい。あの人は私に興味はないが、料理を作ることが好きらしくご飯はいつも振舞ってくれている。お世話になっているから料理くらいはすると伝えたのだが、逆に迷惑らしい。だからそれ以外の洗濯と掃除は私が担当していた。まあ前置きは長くなったがいつもご飯を作ってくれている叔父さんが今日は帰ってこないので、自分でご飯を用意しなくてはいけない。さて、どうしよう。食材を無断で使ってしまったら叔父さんの気を悪くしてしまうかもしれない。
よし、コンビニで済まそう!
とりあえず買いたいものがあるので、買いに行ってっから帰りにコンビニでご飯買おう。やることも決まったので私は駅へ向かった。
目当てのものも買えて、新宿に帰る前に喉が乾いたのでコンビニに寄った。お茶を取ってレジに向かおうとして、ふと立ち止まる。うーん帰ってからまた買うのも面倒だし、買ってっちゃおうかな。温めたりするのも手間だし即席麺にしよーっとその陳列棚へと向かう。さてどうしようか悩んで、どれにするか決めた私はそれへと手を伸ばした。
「あ?」
「あっ」
コンビニなのに在庫がないのか最後の1つだったペヤングへ同じように伸びてきた手に、思わず隣の人物へと顔を向ける。髪をぴっちりと1つに束ねた眼鏡の人だった。その見た目とは似つかないドスの効いた声がしたんだけど、気のせいかな。その人は私と目が合うと、吃驚したのかがぱっと口を開けた。白い八重歯が覗いている。めちゃくちゃ見られてるんだけど、もしかしたら譲れよっていう圧をかけているのかもしれない。
「私他のにするんで、それどうぞ」
「い、いや食いてぇんだろ?オマエが持ってけよ」
「そう言う割りにはがっちり手に取ってますけどね」
「あっ」
見た目だけはガリ勉の子の手にはもうペヤングがおさまっていた。からだは正直ってやつね。私から指摘されて自分の手に持たれたペヤングに気付くと、バツの悪そうな顔をして私にペヤングを差し出してきた。
「いや手震えてるじゃないですか。無理しなくていいですよ、私他ので全然いいんで」
「オレが譲るなんて中々ねぇぞ。いーから受け取れって!」
「そ、そんなに言うなら…」
ここまで言われて引くのは失礼だと思って差し出されたペヤングを受け取ろうとする。しかし彼から一向に手が離される気配はない。だから無理すんなって。
「じ、実は色んなコンビニ回ったんだが、どこもかしこもペヤングなくてよ。やっとここで1つ見つけたんだ」
「まじかよ」
そんなペヤング品薄なの?誰かがここら一帯買い占めでもしたのか?有り得ない状況だけど、彼がそう言うならそうなんだろう。大体そんなしょうもない嘘ついても仕方がないし。
「そんな話聞いたら尚更受け取れないですよ。お兄さんが食べて下さい。きっとペヤングもそう思ってますよ」
正直自分でも何言ってるんだろうと思ったけど、彼を認めさせるにはこう言うしかない。私の言葉に衝撃を受けたような顔をすると、ガリ勉君(仮)は眼鏡を軽く上げて涙を拭った。眼鏡をすぐに装着し直して、彼は笑いかけてきた。もう深く考えるのは止めた。
「ありがとな…、けどペヤングだってオマエにも食って欲しいと願ってるはずだ。だから半分コしねぇか?」
「分かりました!一緒に食べましょう!」
深く考えることを止めた私はその場の流れに身を任せることにした。ペヤングを片手ずつ持ってレジに向かった時は死ぬほど恥ずかしかった。もう二度とこのコンビニ寄らない。
会計を終えてコンビニを出る。約束しちゃったけど、これからどうしよう。
「ところでどこで食べます?」
「あ?オレん家すぐそこだから寄ってけよ」
「えっ、流石に会ったばかりの人の家に上がるのはちょっと…」
「…ハ?何言ってんだオマエ」
素っ頓狂な声で言われた。いやそのままの意味なんですけど。もしかしたらさっきのコントでしかない状況を経て、彼からしたら私は他人から厚い友情を誓った親友に繰り上がったのかもしれない。見た目だけはガリ勉君(仮)は「ああ、眼鏡かけてっから分かんねーのか」と小さく呟くと、ヘアゴムを取り髪を手櫛で整えながら眼鏡を外す。肩に少しだけかかるくらいのウェーブのかかった黒髪に見覚えしかなかった。
「ば…、場地君!」
「オウ」
「……何かの罰ゲーム?」
「あ!?ちげーよ!」
罰ゲームじゃなかったら何でそんな格好してるんだ。困惑していると、察した場地君が説明してくれた。中学ダブった→オフクロ泣いた→どうすれば頭良くなるかマイキーに相談→眼鏡かければ頭良くなるよ!→そっかあ!じゃあ髪もそんな風にセットしよ〜!
…………。
「いや、そうはならんでしょ!」
「あ?マイキーが間違ってるって言いてぇのか?」
「………私が間違ってました」
否定するのも面倒だったので折れた。マイキー君に言っても彼も彼で真面目にそう思っていそうなので疲れる未来しか見えないから、場地君には努力して頑張ってもらおう。
「つーかオマエ、オレって気付かずにあんな話したのか?」
「ちょっと待て、何で私が呆れられてるんだ」
「だってそーだろ?普通初めて会うヤツとコンビニであんなやり取りするかぁ?」
「言い返せなくて凄いショックなんだけど…」
確かに場地君の言う通りだった。彼は私だと気付いていたから、いつも通り接していたんだろう。しかし私は初対面だと認識していたにも関わらず、とんでもないコントを繰り広げてしまっていた。えっ?もしかして私の方が変だったの?物凄く心外だが、今更言い訳してもダサいので口を紡いだ。
「じゃあ行くか〜」
「やっぱり私いいよ。さっきはノリでああ言ったけど、わざわざお邪魔するのも悪いし」
「今更何言ってんだよ。約束しただろ?」
「ほ、ほら帰るのも遅くなっちゃうしさ」
「オレの愛機で送ってやるよ」
先に進んでいく場地君を追いかけて断ろうとするも、私を一瞥してからそう言われては、もう断る材料なんてない。まあ彼がいいって言うならいっか。
彼が言った通り思いの他早く着いた。目の前の団地に無性に懐かしくなる。そういえば実母と暮らしてる時は団地だった。「ウチ、ここの5階だから」と言って階段へと向かっていく場地君を追いかける。すると後ろの方でドサッという何かを落としたような音が聞こえて、思わず振り返った。金髪の男の子が私達を見て唖然としていた。えっ誰?
「千冬ぅ、今帰り?」
後ろから場地君の声。どうやら知り合いらしい。しかし千冬君と呼ばれた男の子は何も言わない。「ボサッとしてどーした?」と再度場地君が投げかけたところで、千冬君は頬を朱に染めた。
「ばっ、場地さんの彼女ッスか!?」
「あ?」
「は?」
今この子ヨメって言った?あまりにも予想外な言葉が出てきて、ハモって聞き返してしまう。
「…場地君って嫁いたの?」
「どっからどう見てもオマエのこと言ってんだろ」
「へー、そっかあ」
確かに中学生の男女が片方の家に行こうとしてるのだから、そう勘違いしちゃうのも無理ないか。ダチだよ、と説明された千冬君は勘違いして恥ずかしいのか更に頬を赤く染めた。あたふたしながらも落としてしまっていたビニール袋を拾い上げようとしたところで、袋から買った品物が覗いていることに気付き場地君は身を乗り出した。
「ペヤングじゃねーか!」
誰かこのペヤング星人を何とかしてくれ。
千冬君は場地君の言葉に照れたように頬を掻きながら、ちらりと私の方を見た。
「ば、場地さんと食べようと思って。でも邪魔ッスよね?オレ出直しますよ」
「あん?別に構わねぇだろ。オマエも来いよ」
「私を気遣ってくれてるなら、全然気にしなくていいよ。ていうか私が帰ろうか?男の子の間に女が入るのも野暮じゃない?」
「オマエはオマエで何言ってんだよ。下らねー気ィ使ってねぇで、いーから来い」
場地君はそう言い残すと階段を上がって行ってしまった。置いて行かれた私達は顔を合わせて苦笑を漏らす。
「場地さんのああいうトコ、すげーカッケェッスよね!」
「分かる分かるよ。今まで年相応じゃない子いっぱい見てきたけど、場地君レベルのかっこいい子は中々いないよね」
ドラケン君と対になるくらいかなぁ、と内心思うがそれは言わないでおく。千冬君が場地君を慕っているのは誰が見るより明らかだったので、他の子の名前を出すのは野暮ってもんだろう。場地君の数歩後ろで千冬君と語っていると、場地君は呆れたような、けれどどこか照れくさそうな顔をしていた。
机の上に並ぶペヤングを見て場地君は唸っていた。何を悩む必要があるか分からないが、千冬君が買ってきたペヤングは2つだ。私達が買った1つと合わせれば、人数分割り当てられるのでそれでいいんじゃないか。そう噛み砕いて説明しても、場地君は頷いてはくれずその顔はしかめっ面のままだった。
「いや、そいつぁダメだ」
「えっ何で?」
「オレらが買ったこのペヤングは半分コするって約束しただろ。ならこのペヤングはそうしなくちゃならねぇ」
「いやいやそんな面倒なことしなくてもいいんじゃ…」
「よし!3人で半分コだ!」
場地君の言い分はこうだ。私と場地君で買ってきたペヤングは当初の目的通り2人で半分コする。千冬君が買ってきたペヤングの1つは場地君と千冬君で半分コする。もう1つのペヤングは千冬君と私で半分コする。というものだった。意味分かんないだろ?私にも分からん。
私じゃもうどうにもならないから千冬君に助けてもらおうと彼の方を向けば、彼は「決して約束を破らねぇ場地さんカッケェッス!」という尊敬の眼差しで場地君を見ていた。この場にツッコミは私しかいないらしい。
「これでキントーに分けられたな!」
「そうッスね!場地さん!」
「…………」
先程までのしかめっ面は消え去り、満足そうに笑う場地君に私はもう何も言えなかった。そして彼が中学をダブった理由もなんとなく分かってしまった。
よし、コンビニで済まそう!
とりあえず買いたいものがあるので、買いに行ってっから帰りにコンビニでご飯買おう。やることも決まったので私は駅へ向かった。
目当てのものも買えて、新宿に帰る前に喉が乾いたのでコンビニに寄った。お茶を取ってレジに向かおうとして、ふと立ち止まる。うーん帰ってからまた買うのも面倒だし、買ってっちゃおうかな。温めたりするのも手間だし即席麺にしよーっとその陳列棚へと向かう。さてどうしようか悩んで、どれにするか決めた私はそれへと手を伸ばした。
「あ?」
「あっ」
コンビニなのに在庫がないのか最後の1つだったペヤングへ同じように伸びてきた手に、思わず隣の人物へと顔を向ける。髪をぴっちりと1つに束ねた眼鏡の人だった。その見た目とは似つかないドスの効いた声がしたんだけど、気のせいかな。その人は私と目が合うと、吃驚したのかがぱっと口を開けた。白い八重歯が覗いている。めちゃくちゃ見られてるんだけど、もしかしたら譲れよっていう圧をかけているのかもしれない。
「私他のにするんで、それどうぞ」
「い、いや食いてぇんだろ?オマエが持ってけよ」
「そう言う割りにはがっちり手に取ってますけどね」
「あっ」
見た目だけはガリ勉の子の手にはもうペヤングがおさまっていた。からだは正直ってやつね。私から指摘されて自分の手に持たれたペヤングに気付くと、バツの悪そうな顔をして私にペヤングを差し出してきた。
「いや手震えてるじゃないですか。無理しなくていいですよ、私他ので全然いいんで」
「オレが譲るなんて中々ねぇぞ。いーから受け取れって!」
「そ、そんなに言うなら…」
ここまで言われて引くのは失礼だと思って差し出されたペヤングを受け取ろうとする。しかし彼から一向に手が離される気配はない。だから無理すんなって。
「じ、実は色んなコンビニ回ったんだが、どこもかしこもペヤングなくてよ。やっとここで1つ見つけたんだ」
「まじかよ」
そんなペヤング品薄なの?誰かがここら一帯買い占めでもしたのか?有り得ない状況だけど、彼がそう言うならそうなんだろう。大体そんなしょうもない嘘ついても仕方がないし。
「そんな話聞いたら尚更受け取れないですよ。お兄さんが食べて下さい。きっとペヤングもそう思ってますよ」
正直自分でも何言ってるんだろうと思ったけど、彼を認めさせるにはこう言うしかない。私の言葉に衝撃を受けたような顔をすると、ガリ勉君(仮)は眼鏡を軽く上げて涙を拭った。眼鏡をすぐに装着し直して、彼は笑いかけてきた。もう深く考えるのは止めた。
「ありがとな…、けどペヤングだってオマエにも食って欲しいと願ってるはずだ。だから半分コしねぇか?」
「分かりました!一緒に食べましょう!」
深く考えることを止めた私はその場の流れに身を任せることにした。ペヤングを片手ずつ持ってレジに向かった時は死ぬほど恥ずかしかった。もう二度とこのコンビニ寄らない。
会計を終えてコンビニを出る。約束しちゃったけど、これからどうしよう。
「ところでどこで食べます?」
「あ?オレん家すぐそこだから寄ってけよ」
「えっ、流石に会ったばかりの人の家に上がるのはちょっと…」
「…ハ?何言ってんだオマエ」
素っ頓狂な声で言われた。いやそのままの意味なんですけど。もしかしたらさっきのコントでしかない状況を経て、彼からしたら私は他人から厚い友情を誓った親友に繰り上がったのかもしれない。見た目だけはガリ勉君(仮)は「ああ、眼鏡かけてっから分かんねーのか」と小さく呟くと、ヘアゴムを取り髪を手櫛で整えながら眼鏡を外す。肩に少しだけかかるくらいのウェーブのかかった黒髪に見覚えしかなかった。
「ば…、場地君!」
「オウ」
「……何かの罰ゲーム?」
「あ!?ちげーよ!」
罰ゲームじゃなかったら何でそんな格好してるんだ。困惑していると、察した場地君が説明してくれた。中学ダブった→オフクロ泣いた→どうすれば頭良くなるかマイキーに相談→眼鏡かければ頭良くなるよ!→そっかあ!じゃあ髪もそんな風にセットしよ〜!
…………。
「いや、そうはならんでしょ!」
「あ?マイキーが間違ってるって言いてぇのか?」
「………私が間違ってました」
否定するのも面倒だったので折れた。マイキー君に言っても彼も彼で真面目にそう思っていそうなので疲れる未来しか見えないから、場地君には努力して頑張ってもらおう。
「つーかオマエ、オレって気付かずにあんな話したのか?」
「ちょっと待て、何で私が呆れられてるんだ」
「だってそーだろ?普通初めて会うヤツとコンビニであんなやり取りするかぁ?」
「言い返せなくて凄いショックなんだけど…」
確かに場地君の言う通りだった。彼は私だと気付いていたから、いつも通り接していたんだろう。しかし私は初対面だと認識していたにも関わらず、とんでもないコントを繰り広げてしまっていた。えっ?もしかして私の方が変だったの?物凄く心外だが、今更言い訳してもダサいので口を紡いだ。
「じゃあ行くか〜」
「やっぱり私いいよ。さっきはノリでああ言ったけど、わざわざお邪魔するのも悪いし」
「今更何言ってんだよ。約束しただろ?」
「ほ、ほら帰るのも遅くなっちゃうしさ」
「オレの愛機で送ってやるよ」
先に進んでいく場地君を追いかけて断ろうとするも、私を一瞥してからそう言われては、もう断る材料なんてない。まあ彼がいいって言うならいっか。
彼が言った通り思いの他早く着いた。目の前の団地に無性に懐かしくなる。そういえば実母と暮らしてる時は団地だった。「ウチ、ここの5階だから」と言って階段へと向かっていく場地君を追いかける。すると後ろの方でドサッという何かを落としたような音が聞こえて、思わず振り返った。金髪の男の子が私達を見て唖然としていた。えっ誰?
「千冬ぅ、今帰り?」
後ろから場地君の声。どうやら知り合いらしい。しかし千冬君と呼ばれた男の子は何も言わない。「ボサッとしてどーした?」と再度場地君が投げかけたところで、千冬君は頬を朱に染めた。
「ばっ、場地さんの彼女ッスか!?」
「あ?」
「は?」
今この子ヨメって言った?あまりにも予想外な言葉が出てきて、ハモって聞き返してしまう。
「…場地君って嫁いたの?」
「どっからどう見てもオマエのこと言ってんだろ」
「へー、そっかあ」
確かに中学生の男女が片方の家に行こうとしてるのだから、そう勘違いしちゃうのも無理ないか。ダチだよ、と説明された千冬君は勘違いして恥ずかしいのか更に頬を赤く染めた。あたふたしながらも落としてしまっていたビニール袋を拾い上げようとしたところで、袋から買った品物が覗いていることに気付き場地君は身を乗り出した。
「ペヤングじゃねーか!」
誰かこのペヤング星人を何とかしてくれ。
千冬君は場地君の言葉に照れたように頬を掻きながら、ちらりと私の方を見た。
「ば、場地さんと食べようと思って。でも邪魔ッスよね?オレ出直しますよ」
「あん?別に構わねぇだろ。オマエも来いよ」
「私を気遣ってくれてるなら、全然気にしなくていいよ。ていうか私が帰ろうか?男の子の間に女が入るのも野暮じゃない?」
「オマエはオマエで何言ってんだよ。下らねー気ィ使ってねぇで、いーから来い」
場地君はそう言い残すと階段を上がって行ってしまった。置いて行かれた私達は顔を合わせて苦笑を漏らす。
「場地さんのああいうトコ、すげーカッケェッスよね!」
「分かる分かるよ。今まで年相応じゃない子いっぱい見てきたけど、場地君レベルのかっこいい子は中々いないよね」
ドラケン君と対になるくらいかなぁ、と内心思うがそれは言わないでおく。千冬君が場地君を慕っているのは誰が見るより明らかだったので、他の子の名前を出すのは野暮ってもんだろう。場地君の数歩後ろで千冬君と語っていると、場地君は呆れたような、けれどどこか照れくさそうな顔をしていた。
机の上に並ぶペヤングを見て場地君は唸っていた。何を悩む必要があるか分からないが、千冬君が買ってきたペヤングは2つだ。私達が買った1つと合わせれば、人数分割り当てられるのでそれでいいんじゃないか。そう噛み砕いて説明しても、場地君は頷いてはくれずその顔はしかめっ面のままだった。
「いや、そいつぁダメだ」
「えっ何で?」
「オレらが買ったこのペヤングは半分コするって約束しただろ。ならこのペヤングはそうしなくちゃならねぇ」
「いやいやそんな面倒なことしなくてもいいんじゃ…」
「よし!3人で半分コだ!」
場地君の言い分はこうだ。私と場地君で買ってきたペヤングは当初の目的通り2人で半分コする。千冬君が買ってきたペヤングの1つは場地君と千冬君で半分コする。もう1つのペヤングは千冬君と私で半分コする。というものだった。意味分かんないだろ?私にも分からん。
私じゃもうどうにもならないから千冬君に助けてもらおうと彼の方を向けば、彼は「決して約束を破らねぇ場地さんカッケェッス!」という尊敬の眼差しで場地君を見ていた。この場にツッコミは私しかいないらしい。
「これでキントーに分けられたな!」
「そうッスね!場地さん!」
「…………」
先程までのしかめっ面は消え去り、満足そうに笑う場地君に私はもう何も言えなかった。そして彼が中学をダブった理由もなんとなく分かってしまった。