全力少女
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いつもマメで皆んなに優しい。
そんな彼女は、今日も皆んなに優しさを振りまいてる。
-----全力少女
今日はバレンタインだ。
まぁ、俺(俺たち)バレー部には
そんなに盛り上がるほどの日でもない。
「大地〜」
「お、スガどした」
「いや、さっき机の中に」
そう言って見せてきたのは
可愛い包みの箱。
「もしかして、バレンタイン…か」
そう落ち着いて言いつつも
こいつもモテるだろうし、
そんなこと当たり前だろ、と思い直す。
「いや、でも誰からのかわからなくて…まぁ、でも嬉しいから受け取っておくべ」
といいながら、浮かれ気味だ。
こいつめ!
「よかったな…」
そういうと、教室の端から
ありがとーと言う声が聞こえる。
「え、いいの?さんきゅー」
礼をいいながらチョコを1つ食べるクラスメイト。それを嬉しそうに見る彼女。
「大地〜」
「…………」
「もらえばー???」
「は?!」
ガタッ!と思わず机を立ってしまった。
「いや〜はは」
「なにむきになってんのさ!
この意気地なし!!」
はいはい、そーですよ。
でも、自分からもらいに行くのなんか
ダサいんじゃ…?
なんてぐるぐる考えてると
「スガくんもどーう??」
なんと苗字さんが
スガの側に来ていて、そう聞く。
スガは一瞬俺の方をチラッとみたが
いつもの笑顔でチョコを受け取っていた。
「………」
「大地クーン???
現実世界に帰ってキテーーー」
「俺は現実にいる!」
なんだ、てっきり俺も流れで貰えるものかと思っていた。
そんなのは怠慢だったのか…。
いや、でもクラスメイトの一員「大地!!」
ハッ!!
「もう移動教室だべ、まぁ、元気出せよ!」
そうだな、なんて言って
次の教室へ向かった。
--------
授業は科学で、実験のための
移動教室だが…。
やけにスガ……と苗字さんの視線を感じる気がする。
2人で楽しそうに喋って…
俺への当てつけか?
いや…あの悪そうな顔は
何か吹き込んでやがるな。スガ。
後で部活で覚えてろよ。
しかし、班編成一緒だったんだな。
ちょっと羨ましいな、
なんて思いながら実験に集中した。
---------
「あーー今日もなんとか乗り切ったーー!後半意識飛んでた」
「ああ、俺もだ」
午後の授業なんて特にきつい。
朝練もあるし、ギリギリまで部活も夜遅くまでやっているから仕方ないが…。
俺たちの本業は、学業だ、なんて親には言われるだろうな。
ま、今日というバレンタインという日もいつもと変わらず終わる。
「よしっ!練習試合まで気合いいれっぞ!!」
「……もちろん!!」
「あ、ごめん、教室に弁当箱忘れた。先体育館行っといて!」
「(爆笑)今気合い入れたばっかなのにwはいはーい!先行ってる!」
ったく、なんで大きな弁当忘れるんだかと自分でも落胆するほど物忘れってのがたまにあるんだな、これが。
まぁ、こればかりは仕方ない。
教室のドアを開く。
「あれ?」
そこには苗字さんがいた。
「あれ、苗字さんまだいたの?」
「うん、ちょっと…ね」
と鞄の中をガサガサ探っている。
俺は不思議に思ったが、
今日もチョコの件もあったし、
あまり長居しないでさっさと机の中の弁当を取り、教室を出ようとした。
「あ、澤村くん!」
「……ん?」
まさか呼び止められた。
「ど、どした?」
俺は予想外の事態に、
少し動揺してしまう。
そしたら、苗字さんは自分の席から俺に近づいてきて、少し躊躇いがちにえっと…とか繰り返してる。
「なんか邪魔しちまったか?」
「いや、そんなんじゃなくて…
はい!これ!」
差し出された、ピンク色の紙袋。
「えっと…」
「今日、ちょっとあからさまだったかもしれないけど皆んなの前では渡すの流石に躊躇っちゃって…」
「俺に?」
これって少しは自惚れてもいいのか。
俺にだけ特別だってこと?
「そう。本当はあの時一緒に渡したかったんだけど…あまりにも気合い入れすぎたし、他の人に揶揄われたらなとか…………考えちゃって」
そう言いながら少し伏目がちに
ハニカム苗字さん。
え?ますます、勘違いしそうだ。
「あ、ありがとう」
色々今聞き倒したいことがいっぱいあるけど、ひとまず部活もあるし受け取っとこう。
「うん」
そう嬉しそうに笑った。
やっぱりいつも優しそうな笑顔を皆んなに見せてるけど、顔がほんのり赤い照れ笑いは俺だけの顔なのかな。
「澤村くん?」
「あ、あぁ、ごめん」
ついついぼぅっと考えてしまった。
「ううん、最近部活でお疲れな感じだもんね。頑張って!引き止めてごめんね」
「こちらこそありがとう。じゃあ、部活……」
そう扉から出ようとしたけど、
俺はこのチャンス逃したくない。
振り返り
「苗字さん、これってさ
その……俺と少しは仲良くしたいって気持ちがあるって思ってもいい…のかな?」
そう目を見て伝えると
「………そうだね……」
ちょっとした間があったな。
「せっかくだから、連絡先交換しない?嫌かな」
俺のただの勘違いだったらまずいし。
「…………」
「苗字さん?」
「……じゃ……い」
「ん?ごめんちょっと聞こえなかった…」
「仲良く、じゃない…よ!」
「……?!俺ついついごめん!!」
まさか、嫌な予感が的中するなんて。
「いや!私の方こそごめん。そうじゃなくて!」
「えと…?」
俺の頭は完全にネガティブマシーンになりつつあった。
そんな俺の塞がれてない方の手に、
彼女の手が重なった。
俺は少し驚きと共にぴくっと手が動いてしまった。
「私、仲良くじゃなくて、もうずっと澤村くんのこと好きなの」
「………!」
は!?そうなのか…。
そうなのか?!
俺は思いっきりフリーズ。
「あ、あの…澤村くん??」
彼女の手がヒラヒラ俺の前で舞っている……。あぁ、綺麗で華奢な手……
っじゃなくて!!
俺は現実に帰ってこい!というスガの言葉が脳裏に浮かび、思わずあぁ!!と短く叫んだ。
「さ、さわむらくん…大丈夫?」
「あぁ、すまん。なんか驚いちゃって」
どうするべきか。
俺は2年生で、これから本格的に部活に打ち込もうという時期だ。
正直付き合うという言葉は頭に無い。
「……澤村くん、部活一所懸命だし、私思い伝えられただけで充分だよ」
あぁ、苗字さん泣きそうだ。
俺は手を覆ってくれた苗字さんの手から抜け出し、俺が上から手を包んだ。
「ごめんね、苗字さん。俺、すごく気持ち嬉しいよ。確かに部活は俺にとって今打ち込みたいもので、正直気持ちに応えられるか胸をはって言えない」
「うん…」
「……だから、これからもっと苗字さんのこと知りたいし、もっと一緒にいる時間増やしたいと思う」
「でも付き合うことは考えて無いんだもんね」
そういって、
少しむっとする苗字さん。
そんな顔を初めて見たよ。
可愛いもんだな。
「いいですよー!
私、諦めないし、これからガツガツ行くから」
そう言われて、突然抱きつかれた。
「うおっ?!ちょっ」
「皆んなに優しいのも私だけど、
本当に欲しいものには全力疾走なんだからね!」
そう言って、じゃあ、部活頑張って!
と言い残して教室を去っていった。
「………こりゃ、これから大変になりそうだな」
驚きすぎて、
へたへたと床に腰を下ろした。
急いで部活に行って、持ってた袋をみて
部員全員(スガを筆頭に)にいじられたのは言うまでも無い。
全力少女 END
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