悪意の無い無邪気さ
夢小説の世界へ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
---------
「「「木兎せんぱーい!!」」」
黄色い声が飛び交う。
わいわいとある1人のスターを取り囲んでる女子の集団が目の前にある。
「ありがと、ありがと!」
そう言って、小さな小袋や箱を
受け取る先輩。
むぅ…。
こんな物見せられると、
自分のチョコがちっぽけな物に思えて
チョコを渡す勇気もない自分が
とても惨めに思えてくる。
去年もなんとか渡せたけど、
ほぼ、照れ隠しすぎてバッと押し付けてきちゃったし
あれは今思えば自分でも不器用すぎん?
と思うけど。
だって恥ずかしかったし、
いざ目の前にしたらかっこいいー!
背やっぱり高い!とか目おっきいとか!
色々情報過多になって、パンクした…。
やっぱり同じことを繰り返すなら
やめよ。うん、諦める。
そう踵を返したとき
「あれ?渡すんじゃなかったの?」
「………!あ、かあし」
「さっきからずっと木兎さんの方見てたでしょ、渡せばいいのに」
「えっ…いや、
そりゃあんなの見たら…」
「うーん…木兎さん絶対断らないと思うよ」
「なんで絶対とか言えるの」
「ま、直感かな?」
そうフッと彼は笑う。
久しぶりにこの感じだ。
何考えてんの赤葦。
「そんな直感にはだまされませー」
「おう、あかーしどした?」
「え??」
気づいたら木兎先輩が隣にいる?!
「いや、俺はこれから移動教室です。
ほら、木兎さん」
そう言って、私肩をポンと叩く赤葦。
ん?と首を傾げていると
「おっ!!!もしかして、チョコ?
名前ちゃん俺にチョコくれる?」
あれ、私名前教えたっけ…?
それよりなんてこった!!!
チョコを求められている?
……うん、そりゃ今日は
バレンタインだもんね。
冷静になれ自分。
「でもいっぱい貰ってました…よね」
そう手の方を見ると、
さっきまでのチョコの袋や箱がない。
あれ。
「もしかして秒で食べた…?」
あの量を?
「………いや、この一瞬でそれはなっしょ!!!なんかおもしれぇな!!」
そう笑う目の前の憧れの人。
「じゃあ…」
「全部返した」
「え?あんなに嬉しそうに貰ってたのに…」
「んー、だってチョコってやっぱり好きな子から貰いたいじゃん??ね??」
そういつものような眩しい笑顔で
ね??ね??と共感を求めてくる。
「そう…ですけど」
「ちょーだい?その持ってるやつ違うの?」
「うぇ?!えと、え?
だって好きな子から…じゃないとって」
「ん?そうだけど?
だーかーらー好きな子!!」
と指差しされた。
どういうこと?
赤葦よりも思考が読めない気がする…。
だって私にとっては憧れで…
その木兎先輩は私が好きな子なの?
私は何も言う言葉が見つからない。
「あの、これ…」
考え出した末に出した結論。
「私にとって先輩は"憧れ"で、
その…好きな人ではないです。
これは憧れの想いで渡します」
そう言って渡した。
相手の反応を見るのが怖くて
私は顔を上げられない。
てっきり受け取っては貰えるだろうと
思っていた。
「……………」
先輩はなにも喋らず、
受け取ろうともしない。
これはもう受け取ってもらえないやつ?
「ねぇ、俺さ、去年チョコ渡してくれたの覚えてるよ?
それでなんかすぐ行っちゃうから名前も聞けなかったし、ま、あとからあかあしに聞いたけど!!それでさー名前ちゃんって言うのかーって名前も可愛いなぁって思って」
「ちょっ」
「そんでそんでーー!たまにバレー部の試合観にきてくれたりしてたじゃん??おれ終わった後会いに行きたいなーって思ってたのにすぐ帰っちゃうしよーーあれは結構ショックだった、その後の試合でもあかあしに呼び止めといて!って言ったのにそんなの私の出るまく?じゃありません!!とか言って断られたとか言って」
「ぼ、木兎先輩!!」
「ん?」
「な、なんですかさっきっから!」
「え?だから好きな子からは本命がいいから」
「私のこと好きなんですか?」
「おう!!そうそう!
んだから、俺のこと好きになってーー!」
そう言って私を抱きしめてきた。
「へ??え??ちょっ!!!」
その時木兎先輩のポッケから通知の音。
それを仕方なく見ている様子。
身体をビクッとさせて、
目の前に直った。
「ごめん!!!じゅんばんが違うな!!」
「お、おぉ…はい…」
もうなにがなんなのやら。
「ね、じゃあ、連絡先交換しよ?
そんで今日部活オフだから一緒に帰ろ?んでんで…」
「はい!連絡先ですね」
私も押されてばっかりではいかん。
「これは貰ってくれないんですか?」
「えーーーー!!!
俺のこと好きになった?」
いや、この秒で気持ち変わるかい。
赤葦っていっつもどんだけ木兎先輩と一緒にいるんだろ。ちょっと尊敬しちゃった。
「好きと言うか、憧れ…」
「ぶーーフンッ」
え?拗ねた?
たまに試合で見る、しょぼくれモード?
えー、どしよ…
ここは赤葦パワーで冷静に…
「えっと、今は好きにはならないと思いますけど、これから?はどうなるかわからない…」
「おーう!!!じゃあ、今日帰り帰ろ!そんでそんで…」
「はい!わかりました!!」
あっ、やば…。
「え?いいの?やったー!!」
また抱きしめられた。
だめ、それ以上は。
さっきっからわけわからない半分
ドキドキ半分だ。
「木兎せんっぱい」
ぐるじい……。
それを遮るようになるチャイム。
やばい授業が!
「授業が!!」
と言ってばっと離れ
駆け足でクラスに戻った。
「はぁ……
なんとか抜け出せたから
良かったものの…」
どうしてこうなっちゃったの。
思わず心の中でそう思った。
そう冷静になろうとしてる自分と
木兎先輩に確かに触られた場所が
やけに熱く感じる自分がいた。
木兎先輩の無邪気さは
私にとって甘い毒になりつつあった。
-----------
その後、部活オフの日
ミーティング前の木兎と赤葦
「木兎さん。俺からの連絡見なかったんですか?」
「え?みたよ」
「じゃぁ、なんでチョコ持ってないんですか?」
「え??はっ!!!!ほんとだ!」
「どうせ、木兎さんのことだから
順番吹っ飛ばして好きだとか言ったんじゃないんですか?」
「………!!!」
「その顔は図星ですね。
『木兎さん 順番がありますから、いきなり抱きしめたり強引なことをしないことです。
特に急な告白とか。』
って連絡したのに。
何したんですか?」
「え??えーとぉぉぉぉ……
好きになって貰いたかったから、可愛いとか好きなところ喋って…」
「告白して、抱きしめた、ですか」
「…あかーし、えすぱー??」
「今日ミーティング後謝りに行きましょう。ほら帰っちゃう前にさっさと連絡してください。」
「う、うん…」
悪意の無い無邪気さ END
1/1ページ