恋と友情の境界線
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その瞬間、私の頭の中には
今までの惨事が暴れ出していたーーー。
----------恋と友情の境界線 7
開いた空き教室から出てきたのは
よく朝のSHRで見かける
私のクラスの副担任だった。
「……?!」
後ろでしゃがんでいる
木兎先輩と目を合わす。
でも、教室から
副担任はまだ出てきていない。
だからポルターガイスト現象を怖がってる
ただの先輩だけど。
この状況、どうするべきか。
微かに今までの私の写真や
なんとなく感じる視線。
教室の下駄箱に入っていた
脅迫文書。
頭の中を今までの嫌な記憶が
蘇る。
手が震えるのを感じる。
今はっきりと感じる。
「名無し?」
少し先に赤葦がいた。
「えっなんで赤葦…っ!!!!」
ドン!!
私が赤葦に気を取られている隙に
副担任が教室から勢いよく出てきて
私にぶつかり、走っていく。
「わっ!!!」
身体に力が入らず後ろに倒れそうになるが
「おっと……」
安心する温もり。
「大丈夫か?」
「……ありがとう…ございます」
私の身体の震えを感じてか
肩を回し頭を撫でてくれる。
どうしてこんなに安心するんだろ。
「…うわぁぁぁぁぁ」
何今の声?!?!
さっき副担任が走って行った方って…
「…名無しは見なくていーの!」
そう大きな手で目を隠された。
赤葦、大丈夫かな…。
すぐいってあげたいけど、
まだ身体に力が入りそうにない。
手がどかれ、ふと上を見上げると
バチッと木兎先輩と目が合う。
「…っっ!」
近いっ!気づいてなかったけど
すごい顔が近いことになってる!
それどころじゃないのに、
この状況に顔から火が出そう…。
自分でもか、身体が熱くなっていく…。
「…ん?なんか顔についてる?」
そうニッと笑う先輩に
また心臓が速くなった気がした。
「い、いや…なんでもないです」
「あいつ俺見たことある」
「ん?あの人私のクラスの副担任です」
「あーーだからか」
そんな話をしてると
自分の身体が自然と落ち着いていた。
「木兎さん、名無し。
これから職員室いくから一緒に来てくれますか」
そう副担任の両腕を片手で持って
いつも通りのテンションで言ってた。
「赤葦…」
怖い
「なに?名無し」
「イイエ、なんでもないっす…」
この時ばかりは、赤葦の無表情が
いつも以上に冷徹に見えたのはなんででしょう…。
「じゃあ、ついて来てください。
…あと、名無しは
今までの物全部じゃなくてもいいけど
ちゃんと出して告発するから」
「うん…」
赤葦には全部お見通しなんだね。
「ありがとう…」
そう赤葦に聞こえるか聞こえない位の声で
呟いた。
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その後職員室では
副担任を明け渡し、私は最後の気力で
今までのストーカーと言えるほどの
行為を話せるだけ話した。
すっかり解放された頃には
とっぷりと外が暗くなっていた。
「はー。すっかり外暗くなっちゃったね。
2人ともごめんなさい。」
「ん??おう俺はだいじょぶだ!!
それよか名無しが俺のこと嫌いじゃなくって
まーじよかったわ〜!!!!」
「木兎さん、ここ医務室の前だから
もう少し静かに」
「すまん!」
「…名無しも気づいて挙げられなくで
ごめんね」
赤葦が少し悲しそうな顔で笑う。
「いや、私の方こそ
酷いことたくさん言ってごめんね」
「本当だよ」
ぐっ…。
「まぁでも今日の聴取で、
どうして俺らから離れてたのかわかったから
“赤葦京治、木兎光太郎に関わるな。
2人の身に危険が起こる”」
「……そうだよ」
「名無し。もっと俺らに
言ってくれればよかったのに!」
いつもの調子で木兎先輩が言う。
だけど、その言動が私にとっては
むしろ軽々しく感じてしまって。
「私は2人のことっ…
守りたかったよ!!!だから我慢した!」
今日一番大きな声が出てる。
そして大きな涙の粒も。
「2人がっ………
2人に何かがあったら、っやだったから
だって私に何かあってもいいけど
2人は選手だよ?!
何かあったらこれから…ぶっ!!」
正面から木兎先輩が抱きしめてきた。
「もーーー!!!!
そんなこと言って…名無し、
いい子すぎ!!
俺たちのこと思ってくれたのは嬉しいけど
嫌いって言われた時の俺の気持ちよ…」
「本当、ま、
俺は嘘だろうなって思ってたけどね。
だって明らかに顔が悲しそうだったからね」
「っ…それは、本当にごめんなさい」
「まぁ?!でもこれで晴れて一件落着!
これからも部活来るよなーーー!!!?」
「………」
涙で目の前がぐちゃぐちゃだ。
「もう、避ける理由ないよね?」
「………うん!!」
そう伝えると、抱きしめられたまま
赤葦が頭をポンポンと撫でてくれた。
「赤葦には…助けられて
ばっかりだね…ふふ」
そう笑うと、一瞬目を見開いて
やっぱりまた切なそうに笑った。
「部活オフの時に2人ともごめんなさい。
もう帰りましょう」
「んーー!!そうすっか〜〜!」
「木兎さん、今日名無しのこと
送ってあげてください」
「んぁ?いいけど…あかーしも
一緒に帰ればいいじゃん!!」
「…俺は教室に用事があるので」
「こんな遅いのに?!
なんだあかーしぃいい!!
同じ方向なのに俺のことも嫌いにっ」
「とにかくよろしくお願いしますよ」
「…あかーし冷たいっ!
おーじゃぁ名無し、いこっか!」
「…はい」
そう赤葦の方をチラッと見ると
どこか私でも木兎先輩でもない、
何かを考えるような瞳をしていた。
やけにあの赤葦の寂しそうな顔が
脳裏に焼き付いて離れない。
「…名無しーー?聞いてる?」
「うわっ!!」
覗き込まれて、
思わず驚いてしまった。
「そんでさーー、
今度どっか行こうよ!!」
「はい……ってエ??」
「あーーー!
もうやっぱり話聞いてなかったんじゃん!!
だーかーら!!名無しの好きな物
食べに行こう!って話してたの!」
「なんでっ」
「…だってそりゃ?好きな人が
あんなことにあってたってなったら
元気づけてあげたいしよーーー!」
「はい…ん?」
「だから、いこっ!今度のオフに!」
すっごいキラキラしてる!!
私は焼肉は行きませんよ!
「は、はい…」
というか好きな人って今いった?
「木兎さん…今…」
「ふんふふーん!!楽しみだなぁ!!!
あれご飯は何がいい??」
「んーとじゃない!!さっき」
「……」
うっ。
目の前にいた木兎先輩が急に止まるから
顔面強打してしまった。
顔を上げると同時に振り返る先輩。
この状況、今日抱きしめられて
目が合ったあの瞬間を思い出させる。
気がついたら手を後ろに回されていて
離れられない状態に。
「ぼ、木兎先輩っ!!」
「ん?なぁーーに??」
「なに?じゃなくてっ…
手っ!!手を離してっ」
「ん〜〜〜?え〜〜〜!
やだ??」
そうニヤっと笑いながら
首を傾げる。
「や、じゃないですケド…」
そう言いながら俯いてしまう。
だって、この状況は完全に恋人が
するものでは…?
「ねぇ名無し」
「…ん?はい…」
しまった恥ずかしいのに
上を向いてしまった。
そっと私の頬を撫でる大きな手。
「好きな子、抱きしめたい」
「!」
「もっとぎゅってしたい…」
「え、えと…」
「ねぇ、もう我慢できない俺」
「………」
突然の告白と、ハグとで
混乱していた頭なのに
どうしても決まりきらない心と
恥ずかしさと共に
うなづいてしまった。