恋と友情の境界線
夢小説の世界へ
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この2人の前で
神妙な空気になること
今までなかったのに。
「私、2人のこと嫌いになりました」
この静まり返る空気の中、
微かに私を包む木兎先輩の腕が
緩んだように感じた。
「………嘘バレバレだけど」
そうやって赤葦が言うけど
「……さっき真顔で自分が何言ったか覚えてる?」
さっきの言葉を頭で蘇らせた。
こんな状況に関わらず、口が緩むのを抑える。
「……」
黙ってソッポ向きやがった。
そして木兎先輩が驚くほど、静かだ。
離れていく木兎さんが、
「そぅ」
と言って、スタスタ廊下を歩いていった。
あーー。
これで、本当に終わっちゃうんだ。
心の奥底のどこかで2人には引き留めてほしい、
私との関係がもっと大事なものであってほしい。
そう思っていた。
関係を構築するのには時間がかかる。
だけど、壊そうと思えば一瞬だ。
赤葦の方を怖くて見れない。
「…そういうこと、だから…」
「いつまで離れてればいい?」
「…卒業、までかもね」
と目も合わせず言って、その場を立ち去った。
いても立っても居られない。
私はもうその場で泣いてしまいそうだから。
早く家に帰ろうと、視界が歪む。
本当はわんわん子供のように泣いてしまいたいが
人の目もあるし。
とにかく目から涙が落ちるのを
我慢する。
「ぶっっ」
頭がドンとぶつかった。
ほとんど下を向いていたので
人に当たってしまったのだ。
ほとんど泣いていた私は
「ずみません…」
鼻声でそう伝えると、
「なんで泣いてんの?」
それは聞き覚えのある声、
だけどその調子はいつもとは違っていた。
顔は上げられないけど、
確かに目の前には木兎先輩の胸元。
ただ泣いてばかりの私。
「大丈夫…ですか…?」
「だいじょうぶでず」
そう止めようにも止まらない涙が
廊下に落ちる。
全然自分の手じゃ拭いきれない。
「っ……せん、ぱい」
無言で私の流れる涙を拭ってくれる。
大きく角ばった手で。
「………干からびる…?」
「ん…………え?」
「そんなに泣いたらひから…
乾いた…ひも、ヒモノ?か
なんかになっちまうじゃねぇか!」
そう顔を上げると、
なんか怒ってるのか、
心配してるのかわからない顔をしてる。
「……フッ…なにそれ」
思わず笑ってしまう。
「…やっと笑ったな」
そう言ってギュッと抱きしめられていた。
「ちょっ…やめ」
「嫌い?もーー!嫌いでいいもーん
だったら突き放せーーー!はっはっはっ!!」
いや、そんなの無理に決まってんじゃん…。
この筋肉じゃ。
「ま、正直俺は嫌いなんて
嘘だと思ってたけどなーーーー!!!」
「え?でもなんかテンション下がって
去ってったのに…ですか」
「へ?いや?だって、あかーしが」
赤葦が否定でもしに行ったのかな。
なんでもお見通しか、あの人はもう。
多分この人目逸らしてるから
本当は最初、がっつり信じてたでしょ。
絶対そう。
「嫌いじゃないです」
「おう!!だよなだよな!!」
「ぐっぅじぬ…」
キツく抱きしめたと思った時
近くの教室でガシャん!
と大きな物音がした。
「「…?!?!」」
2人して恐怖で抱き合う。
「今、なんかあの空き教室から
大きな音がしませんでしたか…?」
「…へ????アキキョウシツ?
おう」
いや震えすぎか。
もうなんか、この人といると
本当辛いこととか忘れちゃうんだよな。
「木兎さん、見てきてくださいよ」
「え?!俺!?無理無理!!!!
やだーーー、あかーーーーーしーーー!!!」
「赤子か!!!!」
思わず突っ込んでしまった。
なんなん、本当。あかーしすげぇ。
私たちはその教室のドアを
今か今かと、見つめ続けた。
特に音がするわけじゃない。
「やっぱり私気になるので
行ってみます。物が倒壊してるだけかもしれないし」
そう言いながらも、不安半分
好奇心半分でゆっくり近寄る。
あと数歩というところで
突然、扉が開いた。
目の前には、よく知る人物。
焦りながらも不気味で恍惚とした表情をした
私のクラスの副担任。