意地悪な先輩
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お前は、俺の…後輩だ。
いつも冷静、だけどからかうと面白くて
そんな一面もあるのかと興味を惹かれる。
これは人間的なキョーミ
ってやつ?だよなぁ。
なんでこんなにお前のこと
考えてんだよ。
-----------------意地悪な先輩 6
シカマルside
「めんどくせぇ」
俺は気づいたら和定食屋で
そう呟いていた。
そんな俺を
いのとチョウジが見る。
さゆりと木の葉丸の2人は
先に入ったのもあって
もう店を出て行った。
と思ったところ、ようやく飯が来る。
「ねぇ、アンタ。ほんとに今日変よ?
変っていうか…あの2人となんかあったの?」
といのが聞いてくる。
「いや…、別になんでもねーよ」
と言ったものの
完全に俺は今まで感じたことのない感情に
イライラしてる。
なんだこの感情。
もやもやするっつーか…。
ため息をつくと横で飯を食ってる
いのがニヤニヤ見てきた。
「…アンタさぁ、
もしかしてさゆりのこと
気になってんの?」
その瞬間、
味噌汁ちょっと吹きそうになった。
我慢したものの、口の端から少し滴れた。
横で腹を抱えるいの。
チョウジとアスマは
ようやく来た飯に夢中だが…
「だから、なんでも…」
「アタシが、相談のろっか?
珍しいアンタの恋の指南を
してあげようじゃぁないの!!!」
と意気揚々と言うと
「「シカマルが恋?!?!?!?」」
っはーーー。こいつら最っ高に
めんどくせーー。
「ちげっえっすよ」
と聞く耳を持たず食事を進めると
2人は落胆したように肩を落とし
すぐ食事に戻った。
いや、こいつら
どんだけ腹減ってたんだよ。
夢中になって食事を終えると、
店を出る。
「飯も食ったし、解散するか?」
とアスマが言うが
ったくこいつ飯行くかとか
自分から言っときながら
紅さんの話しかしてねーし
これから会うんだろどーせ。
「これから紅さんっすか?」
「…はぁっ?!?!おまっなに言って」
とか顔を真っ赤にしてっから
アスマ、お前の頭の中はお花畑か?
「いやだ、そんなのバレバレよ〜〜」
といのがアスマをどついてる。
「ス、スマンっ!
そのだなぁ…これから夜、飯誘うんだがよぁ
いい店、何か思いつかね?」
「あっぼくこの間いいお店見つけたよっ!」
「ほんとか?!チョウジ!
じゃあ下見してぇから案内頼む」
と言うので
いのがニヤニヤ
「アタシたちはこれから
大事な大事な恋愛…うぐ」
その続きを手で制した。
ったく、どうにでもなれ。
ーー
「でさ〜さゆりのことは
好きなの?」
「…あっ?好き?」
「いやだってシカマルがイラついてたのって
2人でイチャイチャしてたの見て
妬いたってことじゃないの?
それ完全に好きよ」
俺は、一瞬思考停止になる。
俺がさゆりを好き?
なんだそれ…。
「アンタなんでそんなに頭切れんのに
戦闘以外では急にIQ落ちんのよ!!」
「ふざけた悪口言うん…じゃ」
と反論しようとした時
いのが人差し指を唇に押しあて
静かに!と素振りをした。
あっ?
指差した方を見ると
なんとさっき店を出た2人が
アクセサリーショップにいるのが見えた。
俺は無性にさっきの感情が
湧き上がってくる。
いのに強引に腕を引っ張られ
2人に気づかれないように店に入る。
「選ぶフリしながら盗み見るのよ」
とか小声で言いながら、完全に面白がってんな。
正直俺はもう、イラつきたくねぇし
何も考えたくねー…。
横でちゃんと偵察しているいのが
しばらくして口を開き小声で
「シカマル」
「あ?」
「アンタ本気でさゆりのこと
狙ってんの?」
「い、いやだから別にそんなんじゃ」
「本気ならそーとー頑張らないと
もしかしたら…あっさり」
あっさり?なんだ?
その言葉が気になって思わず
ちらっと振り向いた。
そこには、さゆりの髪の毛を
結んでいる木の葉丸の後ろ姿がある。
「木の葉丸は完全に本気じゃない?
あっさり取られちゃうかもね」
いのの言葉、2人の後ろ姿
一瞬映ったかもしれない鏡
視覚的な情報全てに
俺の心臓がドクドク…と鳴った。
すぐ前に直ったが、
振り向いたことをすぐ後悔した。
治まらない胸の音や、この状況が居た堪れなくて
いのを引っ張り、店を静かに出た。
「ねーシカマル〜
聞いてんの?」
「あぁ…なんだ」
「なんだ?じゃないわよ!!
さっきのみたでしょ?
さゆりだって、可愛いし結構人気あんだからね!
別に木の葉丸じゃなくたって、のろのろしてたら」
「おう、わーった」
といつも通り返事したつもりだが
「ったくアンタも素直になりなさいよねっ」
といのには一喝されてしまった。
「ま、どーせシカマルのことだから任務で一緒になった
それぐらいのところでしょ
恋愛偏差値いくつなのよ〜もぉ〜
ここでこそ男を見せんの…よ…」
といのが怪訝そうに顔を覗き込んできた。
「…アンタのそんな顔初めてみたわ」
「…どんな顔だよ」
「悲しそうな顔」
そんな顔してんのか、俺は。
「よっぽど……ま、いいや。
ひとまずご飯誘いなさいよね!!」
そんなこんなで
いのなか生花店に近づくと
「いのー!ちょうどいい!
手伝って…ってあれシカマルくん!」
「チワッス」
「もう!こんなタイミングで!
じゃシカマルそういうことだから
報告待ってるよ!!!」
といのが店に急いで入って行った。
その後ろ姿を見送って、
特にやることもねぇから帰路に着いた。
飯…ね。
ま、誘ってやるか。
めんどくせぇけど
だけど、心なしか
楽しみにしている自分が居た。
ーー数日後
「ご苦労だった」
今日の任務後、
五代目様への報告を終えようとしていた。
「じゃ、俺はこれで…」
「シカマル、話は変わるが
さゆりはどうだ?」
突然出てきた名前に、
思わず身体が反応する。
「えっ、どうって…」
「この間お前には励ましてやれ
と言ってから後の話だ。
私は、あいつの心に最近変化があるように感じている。
無事この間の中忍試験では合格だった。
お前は一体どんなことをしたのかとおもってな!」
とにやついてやがる。いのといい火影といい…
「えーと、いやいや別に…
しかもその反省の日から何もないっすよ
その日はただ俺なりに
励ましてやっただけです。
しかし、五代目様。
なんだってそんなにさゆりに目をかけてるんですか。
こう言っちゃなんですけど、一忍ですよね」
「…お前は任務で最近のさゆりしか知らないと思うが
あいつは幼い頃、父親を他里の忍びに殺されている。
そこからだ。感情を殺し、任務を詰め始めたのは」
「…」
「お前も思っただろう。
責任感の強さはさゆりのいいところだが
それ以上に失敗した時の自責の念の強さ、
いつまでも自分の感情を押し殺す様…」
「昔はそんなことなかったんですか」
「そうだな…あまり私も
木の葉にいない時期があった。
だから直接的には知らないが
木の葉丸と遊んだり、
もっと感情豊かだったと聞いている」
そこからまた出てきた名前に、
思わず眉がピクっと動いた。
「そこでだ、シカマルお前
さゆりとはなかなか仲がいいだろう。
今度合格祝いとか言って、飯でも誘ってやれ」
は?
「いや、だからそんなんじゃ…」
「お前のあの一件があってからだ。
彼女が明らかに変わったのは。
だから頼むな!!
シカマル、漢だろ!
わかったなら帰れ」
この火影様は…
ったくめんどくせぇ…
小さく返事をして火影室を後にした。
ーー
仕方ねーから誘うか。
なんて考えるものの…
正直、俺はさゆりのいる場所とか
もちろん家もしらねぇ。
はぁ、五代目様も無茶言いやがって。
俺は完全に動揺して、
その手立てを根回しする思考力もなかったってか。
なんか、最近情けね気がすんな。こりゃ。
まぁ、偶然会えた時でもいいか。
と特等席に足を向けた。
しばらく歩くと…人が居る。
あれは、ついさっき誘うことを考えていた
張本人のご登場だ。
思わず向かう足が遅くなる。
しかしまだ、こちらには気づいてない様だ。
頭の中でさっきの
『ひとまずご飯誘いなさいよね!』
『今度合格祝いとか言って、
飯でも誘ってやれ』
と火影といのの顔が浮かぶ。
…ちっ。
小さく舌打ちをして
「おい」
よっぽど気が抜けてたのか
「…?!?!」
こちらを振り返るなり
目を見開いて驚いてる。
うん、確かに表情は豊かになったな。
この変わる表情がなんとも言えない。
守ってやりたくなる…だろうな。
「シ…シカマルせん…ぱい」
「よっ久しぶりだな」
そう、胸の中を悟らせないように
気丈に振る舞った。
「…なんかシカマル先輩いいこと
あったんですか?」
「あ?なんでだ」
「えっだって、なんだか
ご機嫌な感じが…」
俺、そんなにご機嫌か?
ま、まぁ可愛い後輩に会えたのは
正直う、嬉しいだろ…。
「そうか〜?」
と平常心を装っていると
「ほら、やっぱり。
なんか変な感じがします」
いや、変と言わんでもいいやろ。
「いや、そのさ…」
勇気を出した言葉は遮られ
「シカマル先輩は
好きな人っていますか?」
はぁ?
なんか正直、誘うので精一杯すぎて
なんて言った?
スキナヒト?
はーー。
やべーわ。
最近の俺は耳までイカれたんか。
「えっと、今度さ…」
「質問に答えてください!
好きな人いるんですか?」
っと。こいつのわりぃ癖だ。
突然音量でデカくなんの。
だが…同時に俺の頭も覚めた気がする。
「あっいやすみません…」
さっきの音量から、打って変わって
声も体も縮こまっている。
それと正直これからなんの話になるのか。
俺は柄にもなく、緊張してる。
「こっちこそすまん。
好きな人ねぇ〜…なんでだ」
「いや…好きな人いるって
どんな感じなんだろうかって」
なるほど。
俺は少し何かを期待してしまっていた自分が
急に恥ずかしくなった。
「お、おう、そうか。
なんだ、好きなやつでも…いんのか」
やべー、声裏返ってねぇか。俺。
大丈夫かな。
なんでこんなにソワソワ…
「んー。それが、木の葉丸に…」
俺の身体が反射的に
その名前にピクっと反応する。
と言ったまま沈黙になる。
大丈夫か?と俯いている顔を覗き込む。
そしたら、こいつ顔が真っ赤。
その瞬間俺は木の葉丸との間に
何かがあったと嫌でも予想がついた。
俺の胸が締め付けられる。
苦しいな…。なんだ。
俺は興味以上の何かを
さゆりに抱いてるっていうことかよっ。
「告白でもされたか」
その言葉に
ギョッとこちらを向くさゆり。
「図星かよ」
やれやれ。
思った以上に木の葉丸のやつ
手が早いな。
さゆりが恐る恐る口を開いて
「いや、それが…
私だって木の葉丸のこと
大切な存在だし
その…幼馴染的な好きじゃなくて?って…」
その言葉は徐々に震えて
今にも消え入りそうだ。
俺は静かに相槌を打つ。
「そしたら、抱きしめられて
そうじゃなくて本気だって…」
もう口を開くのもやっとだったようだ。
俺はもう話を身体全体が聞くのを拒んでいた。
だが、それよりも目の前にいる大事にしたい存在が
今にも泣いちまうんじゃないかと
横にいて内心ハラハラしてる。
一向にこちらを向かないさゆり。
おい、大丈夫かと痺れを切らし
顔を向かせようと近づいた。
いきなりさゆりの顔が上がる。
しまった。
そう思った時には
2人はキス、しそうな位
近くにいた。
でも、その顔は赤く染まり
すごく苦しそうに見えた。
苦しそうなのに、俺はその顔から
その寂しそうな目から反らせないでいた。
数秒…いやどれくらいか
沈黙を破ったのはさゆりだった。
「あ、あの…すみません
こんな話、突然しちゃって…」
そう小さく言うと、
そそくさと帰ろうと立ち上がる。
俺は無意識に彼女の腕を掴んでいた。
それに驚くさゆり。
いや、俺も自分自身に驚いてる。
「えと…腕が…」
目をキョロキョロして慌てている
ほんと可愛い…な。
「あーえっと悪りぃな。
それがよ、話は変わるが中忍試験合格したんだろ?
それでお祝いっつーか
メシでも…どうかと思って」
我ながらしどろもどろだった、と思う。
一瞬嬉しそうに口角が上がったかと思えば
少し眉間に皺を寄せるようにして
「ごめんなさい」
俺には断られるなんて正直予想してなかった。
「おまっ…
もしかして彼氏に悪いとかか?」
思わず頭に浮かんだ
悪い想像を口に滑らした。
最高にダセェ。
「えっ別に付き合ってるわけじゃないです」
なおさらなんなんだ?
なんか嫌われるようなこと…
「だって、私じゃなくても…
シカマル先輩には
素敵な人がいるじゃないですか!
こっちが申し訳…ないですよ」
と下を向きながら言う。
より頭にはてなが浮かぶ。
記憶を必死に辿っていると…
「この間見ました…
あの、いのさんと2人で歩いてるところ…」
と無理に張り付いたような笑顔で言う。
バレバレだ、無理してんの。
「いやあれは」
「…いっやすみません!
そういうことなので!」
と勝手には話終わらせて帰ろうとする。
いや、待てよ。
理由が知りてぇ。ほんとにそれだけか?
すぐ印を結び、影真似の術!
「せーいこう」
「…!!!」
無事影真似の術で捉えた。
「ひ、酷すぎる…
だからシカマル先輩
こんなことに体力使うキャラでしたっけ…」
「こんなことじゃなくて
さゆりがなんか勘違いしてっからよ。
言っとくけど俺といのはそんな関係でもない
金輪際そうなることもない」
「いやっそんなのわかんないっ」
「何を言ってんだ?さゆり。
知ってるだろ?
俺らは猪鹿蝶だって。だからねーの。」
「だって…」
だってなんだ?
つっうかなんか断わりたいのに
引き止めてる感じになってる?
「ごめん、行きたくねぇなら
いいよ」
そう言って、ヒュンと術を解いた。
身体が自由になったさゆりは
「本当にすみません…」
と今度こそ泣き出しそうな声で
その場から去っていった。
俺はその姿を後ろからぼうっと
見ていることしかできなかった。
はぁ。なんだ、俺ダッセェ…な。
大事にしたい奴に無理強いしてどーすんだ。
しかし嫌われちまったか…な。
自分の落ちた心が
余計に嫌な方向に思考を進ませる。
寂しそうな目も、赤く染まった頬も
何か、
俺の知っている以上の顔を見せたのか?
抱きしめられた時のこと思い出してんのか?
さっきの出来事を反芻すれば、
もう俺の入る隙間は少しも無いように思えてくる。
こんな時にいのの顔が浮かぶ。
お前、伊達に俺とコンビ組んでねーな。
今回に関しては悔しいけど褒めたいところだ。
空に浮かぶ雲を見ながら
小さくつぶやいた。
「フッ…『あっさり取られる』か…」
ーー