意地悪な先輩
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任務の途中、私は何か違和感のある音を感じ取っていた。
しかし、木々や森の中では
多くの摩擦音や反射で音がいつもより一層複雑に聞こえるものだ。
あまり気にせずご子息と花を観に、
坂を登り始めたのだったーー。
------------意地悪な先輩 2
「おっはなー、おっはなー!」
と、楽しそうに歩くこの人は
国の大名のご子息だ。
そして、私さゆりは本日この人の護衛という名の遊び相手をしていたのであった。
「結構歩きますか?」
「うーん…どうだろう?
すぐ着くよ!!」
「そうですか…」
きゃっきゃっと騒ぐご子息をよそに、
私は疲労感が募るばかり。
「………わっ」
急に吹く風、風が吹くと特に
環境音は摩擦が生じる。
少し厄介になってきた。
音が聞き取れるというのも、戦場では気を張っているが、こういう任務だとむしろ、聞こえるが故にストレスになることが多い。
なんて頭を回転させてると、
かなり先を歩いてるご子息に
急いで追いつき
「まだ行きますか?」
「うん、まだ先だよ。
なんかねー、広い場所に行く前に
細い道通るんだ〜」
と言ったのと同時に
ピーーー……と糸が張ったような
そんな音がした。
さゆりにしか聞こえない音だ。
木々や葉の音に紛れて、多くの音が聞こえる。
すごく嫌な予感がする。
「……坊ちゃん、ここは危ないです。
またの機会に、お花は見にきましょう」
「えー、ヤダヤダ!!
僕、今みたいんだもん」
こんなことを言って走って例の細い道へ走っていってしまった。
「………あっ、まって!」
急いで細道の茂みに入る。
目の前に追いついたご子息の肩を掴もうとした瞬間
ガサッ!!
「……え、おねーちゃ…」
その瞬間目の前で確かに細いチャクラ糸が、坊ちゃんを引っ張っていく。
手を伸ばそうとするが、あっけなく空振る手。
「お、おねぇちぁぁぁぁあん!!」
叫ぶ坊ちゃんを背に
足元にあった何かに引っかかり、
身体が前に倒れていく。
それとほぼ同時に後ろから自然の風と思えないものが吹く。
これは……風遁か…?
ガンっ!!!
「……うっっ」
そのまま木に正面からぶつかってズリ落ちる。
私としたことが、罠に引っかかるなんて。
そうかあの音はチャクラが通った細い糸を森中に張り巡らせていたのか。
と気づいたのも束の間
「……坊ちゃん……!」
目の前に3人。
額当てのない…忍びか?
その3人に、囲まれるようにして
ご子息は捕まっていた。
印を結ぼうとした瞬間、
相手からでたであろう
チャクラ糸が身体を縛り付ける。
「……くっ……」
こいつらどこの忍びだかわからないが、
印を結ぶのが早い。
おそらく私よりも、中忍。いや、上忍レベルかもしれない。
身体が動かない。
しかも、この糸……多分チャクラを吸われてる……。
どうするべきか……。
そうすると1人の男がこちらへスタスタやってきて考え込んでた私の顎を持ち上げる。
「………ほぅなかなかの上玉だな」
とニヤニヤする。
その顔にゾッとしたが、
ここは任務だ、自分の失態を取り戻すためにも手段は選ばない。
「……私が生贄になる。
お前達の言いなりになろう」
それを聞いた他2人はひゅーひゅーと、調子良く口笛を吹いた。
「その代わり、その子は解放してもらうのが条件だ」
「……うーん、それじゃぁなぁ…
それでいいかどうか一回ここで味見しねぇと……なぁ?」
と顔が近づく。
「……いいだろう」
まだ、勝算はある。耐えろ自分。
にやけた顔で、ナイフを取り出すと私の忍服を胸元からビリビリと引き裂いていく。
くっ……
屈辱に耐えながら、シカマル先輩のことを頭に浮かべた。
そう、いつだって何通りのパターンが考えられる。こいつのチャクラ糸は…
思いっきりはだけた胸を揉まれる。
「………んっ」
「おぉ、こりゃいいもんだな
身体も絶品だぜ」
と、へらへらしているうちに
先程の張り詰めた糸の音が微かに弱まった。
今だっ!
ゆるんだ糸の隙間から印を結び
「風遁、烈風掌!!!」
勢いよく風が巻き上がり、
目の前の敵は遠くに飛ばされた。
チャクラ糸も、緩くなり
立ち上がる。
胸元を抑えながら
「あなた達何者?
その人を放しなさい」
と言ったものの…
まずい状態には違いない。
…2人と一緒にいる
ご子息に手を出されたら、
こちらも攻撃して、挑発するわけにもいかない。
「へっ、それは聞けねぇなぁ。
俺たちがこいつに手を出さない代わりに、お前も着いてこい」
仕方がない。
……よし、ひとまず着いていこう。
あっさり放してくれないのは
想定の範囲内だ。
その時、前をご子息と歩いていた
2人の動きがピタッと止まる。
「………?なんだ?」
「……ったく、なんでこんな見通しのわりぃところ連れ込まれてんだ」
「シカマル先輩…」
開けた場所から
影真似の術で敵の動きを止めていた。
「ったく…どこにいくかもしらねーで
こんな山奥に…
離れんじゃなかったな、すまん」
そのままこちらに歩いてきて、ご子息を保護し、私の前にきて
「……大丈夫か?」
私は気づきサッと破けた忍服で前を隠せる分だけ、隠す。
それをみた先輩は、自分の羽織をかけてくれた。
「……大丈夫です……」
あれ…でも、なんでだろ急に張り詰めていた糸が切れたような…。
私は膝から崩れて落ちた。
「おっと」
先輩の腕に支えられる。
「まってろ」
そういうと、2人他私の風遁で飛ばした1人もロープで縛り上げ、一応、5代目に報告か…なんて呟きながらこちらへ戻ってくる。
「立ち上がれる…か」
とシカマル先輩の顔がぎょっと私をみる。
「……つっ」
あれだけ、泣かないって決めてたのに
涙が目から溢れてくる。
「………はーーっ。
無理すんなって」
そういうと、ご子息の目も気にせず
崩れ落ちた私を引き寄せ背中を叩いてくれた。
なんだろ…恥ずかしい。
もちろん、自分の失態も
情けない自分の今の姿も、ビリビリに破けた忍服も、なにもかも恥ずかしい。
だけど、なんだろうこの気持ちは。
暖かい。だけど、恥ずかしい。
さっき触れた部分が
火傷したように熱を持つ。
私はまだ、
新しく自覚したこの気持ちに
向き合うことは
難しくてできそうもない。