本当のこと
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----------主人公side
勢いよくドアを開け、自分の部屋に入る。
急いで帰宅したため、肩でする呼吸。
「なにやってんだろ…」
私から話を聞いてもらいたくて
小田さんを誘ったのに。
帰路の寒さで、少し目が覚めて
自分の失態に愕然としていた。
明日から、小田さんに田中さん
同じ部署の2人にどう顔向けすればいいのか
今はもう考えたくない。
「お風呂入ろっかな」
そう自分を奮い立たせる様に
小さく呟いて
明日に備え、寝ることにした。
-------翌日
「はい、書類確認ありがとうございます!」
よし、今日もなんとか重い身体を起こし
職場に来ることが出来た。
今の所、そつなくこなせている…はず。
相変わらず田中さんには
元々は照れ隠しから
話しかけられない様なものだったし
自分が声を掛ければ、きちんと返してくれる。
ま、上司だから当たり前だといえば
そうだけど!
問題は、昨日私が酷い帰り方をしてしまった
小田さんだ。
小田「うーん。はいはい、そうっすね!
ま、それでいいんじゃないですかー??
うちもね〜…(電話対応中)」
いつも通り、な感じはする。
その姿に安心さえすれば
まだ実際自分が謝れていない事や
どのタイミングでいえばいいのかなどと
一気に頭の中に問題が押し寄せてくる。
いかん。仕事中にこれは。
田中「城崎さん?大丈夫?」
「えっあ!はい」
田中「小田が…どうかした?」
「いや…なにもありません…」
明らかに嘘をつける自信のなさが
語尾に出てしまった。
田中「……」
何か田中さんはPC画面を見ながら
考え込んでいる様だった。
その姿を見惚れていたと言っても良い程
見ていたことに気づき
急いで自分の席に戻ろうとした時
田中「今日、ご飯行く?」
思わず驚いて田中さんの方をバッと
振り返る私。う、嬉しい。
しかもそれは2人で、ということ?
田中さんは相変わらず、画面を見ている
その手は全く動いていなかった。
「は、はい!ぜひ」
その瞬間だけは小田さんとの問題を忘れて
嬉しさが心の中に溢れた。
田中「うん、じゃ、帰りちょっと待ってて」
そう言うと自分の仕事に戻った様に
手を動かし始めた。
その時彼の手が少し震えていたことに
気づいたのは横目に2人を見ていた
小田ただ1人だけだっただろう。
---------勤務終了間際
田中「もう終わりそう?」
「あっはい、これだけまとめたら
上がれます」
田中「そうか〜、もう少し待っててくれる?
ちょっとさー微妙な案件があって」
「大丈夫です!
適当に休憩室で暇潰してます」
田中「ごめんね」
「はい…
じゃぁ先にお待ちしてますね」
今日の業務は特に問題はなかった。
自分が些細なミスをした事以外はね…。
身支度をして、事務所から出て
休憩室のソファーに座る。
特にすることもないが、
スマホでも触るかな。
と、スタスタ歩いてくる足音が聞こえる。
彼女はどこかで見かけたことのある
別部署の女性社員だった。
少し気の強そうな印象を持っているので
なんとなく足音が近付く度に
身が縮こまる様な感じがする。
そして嫌な予感は的中した。
彼女は白羽美優というそうだ。
なぜ、知ってるかというと今目の前に
社員証をぶら下げ彼女が立ち止まっているからだ。
「…あ、あの…?」
なにか私を蔑むような目をして
次の瞬間、手に持っていたコーヒーが
私の膝にかかった。
いや、正確に言えばかけられたという方が
当てはまるかな。
じとっとした嫌な感覚が
スカート付近の太ももに広がる。
コーヒーはいい匂いだ。高いドリップコーヒーなのかな。
なんて私がなにも発さずにいると
白羽「かかっちゃったね、ごめんね♡」
そう言って、給湯室の方に走っていった。
私にはその顔に浮かんだほくそ笑んだ横顔を
見逃さなかった。
むむ…それは置いといて
これどうしよ…
「あーあ、派手にやってくれたね〜」
ぎくぅ
と音が出そうなぐらい背筋が伸びた。
そう私が今一番抱えてる問題の
小田さん。
小田「いや〜一部始終見てたけど
あれは、完全に確信犯でしょっ!
なんで城崎ちゃん
言い返さなかったの〜〜?」
いつも通り話してくれる小田さんに
私は心底安心していた。
いくらチャラい感じだとは言っても
よく仕事では助けられている
仲間だという実感がある。
もちろん先輩だから当然かもしれないけど、
それほど彼は部署内でも安定感のある仕事ぶり。
私は一気に仲間を取り戻したかのような
気持ちになった。
「本当に…ごめんなさい」
そうコーヒーまみれになった
スカートを握りしめ言った。
本当は顔を見て言った方がいいけど
そんなの分かってるけど…
小田「あれ?今それ?
それよりも俺はコーヒーまみれに
なってるそのスカートの方がまずいんじゃ?w」
ちょっと待ってて
と給湯室のある部屋の方へ駆けて行った。
なんで言い返さなかった、か。
それよりも私には小田さんとの関係が
悪化して行ってしまうんじゃないか
ということの方が何倍も、大事なことだった。
こんなこと、正直今に始まったことじゃない。
今の部署は比較的男性多めで、
女性比率が少なめだから助かっていると思う。
前の職場ではどちらかと言えば、女性職場で
その中の男性は1〜2割ぐらいだったから
やはり水面下での睨み合い(?)のようなものが
きっと行われていたんだと思う。多分。
そんなこんなで標的になったのは運悪く、私。
もちろん同じ部署だったし、もちろん飲み会とかも
行くことになるでしょう。
もちろん同部署の上司とも一緒にね。
だけど、なんというか昔から私が
男性と仲良くするのが面白くないのか
少し2人で話していたりすると
次の日には無視されたり、
私のお気に入りの文房具が忽然と消えていたり
かと思えばゴミ箱にそれを発見したり。
直接言わないのを良いことに、
職場を退職する直前には
かなり酷いことになっていた。
それこそ今のようなことだって、
それ以上のこともあったと思う。
この職場に来た時
『あぁ、よかった』と安堵したの。
最初はちょっと関わりづらかった田中さんと
チャラい小田さん。
なんか、色々あったな…。
ふと、思い出して泣けてきた…。
小田「おっまたせー!!
って…?!」
帰ってきた小田さんは手に布巾を持って
驚いた顔をしてる。
私の頬に伝った涙を手で優しく拭ってくれた。
泣いてたんだ。自分でも気づかなかった。
小田「えっ、そんなに嫌だった?
…オレがきたの……???」
すごーく真面目な顔で言った。
「ふっ…ふふふふ」
そんな小田さんが面白くてつい、
泣いているのに笑っちゃった。
「そんなことないです。
ありがとうございます…」
私やっぱりここに来て良かった。
2人に会えて良かった。
小田さんは布巾で椅子を拭いて
私はテッシュでスカートのコーヒーを
吸わせていた。
小田「……やっぱりさ、城崎ちゃん
俺にしない?」
「ん?なにがですか?」
小田「…だから…」
そういうと私がテッシュを持つ手を握る。
田中「…おい、なんかコーヒー臭くね?」
田中さんがこちらに向かいつつそう言うと
小田さんがその手をバッと引く。
田中と小田の視線が交差する。
田中「城崎さん、コーヒー飲んでたの?」
小田「いやぁ〜、これさっき」「そうなんです!!」
私が突然大きな声を出したことに
驚き大きく目を見開いた。
小田さんが私の方を見る。
どうにかして小田さんには言わないでほしい。
迷惑かけたくない。
小田「い、いやぁ、そうだよね〜。
さっき俺が驚かしちゃって!」
私は嘘を本当にするために、
その言葉に力付くで頷いた。
それを見て、田中さんはそっか大丈夫?
といつものように心配してくれた。
小田「じゃぁ、俺はこれで!」
そう言って、割とそそくさと帰っていった。
田中さんに詳しく突っ込まれないようにだけ
したいな。
田中「結構そそっかしいんだな」
そう笑う田中さんが、
なんだか少し遠いように感じる。
じゃぁ行こうか。
と言って休憩室を後にした。
城崎「私スカート…」
田中「俺がチョイスするよ」
城崎「あ、私今日会計できるものないので
もうこれは諦めかな…」
田中「じゃ、そういうことで」
城崎「えっと…?」
店に着くまでの道のりにある
ファションブランドのウィンドウを横目に見ながら
田中「これは、俺からのプレゼントっつーことで!」
そう言って片眉を下げ
私の方を見て首をかしげた。
すぐ逆の方を向いたけれど、
私にはその言葉とその表情が
脳裏にこびり付いて
今日はこの心のときめきが
離れないような気がした。
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