(切)愛苦しい
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あの日
リビングルームで携帯を見つめてにやにやしているリイナを見つけて、俺の胸は高鳴った。
俺はそれをひた隠しに隠して、からかうように声をかけた。
「なーに、にやにやしてんだ?」
俺に気づいたリイナは慌てて携帯の画面を閉じて、わかりやすいくらいに笑いを堪えて唇を引き結んだ。
その表情が妙に面白くて、俺はまた笑った。
「別に、にやにやなんてしていませんよー。ていうか、なんで笑ってるんですか?」
「お前がわかりやすいからだよ。」
「な、なんのことですか?」
またわかりやすく動揺の表情を浮かべるリイナを…この時は純粋に…愛しいと思った。
だからこそ、この笑顔を守ってやりたかった。
向かい側のソファーに座って携帯を指差し、
「平門からなんだろ。」
と指摘してやると、お前はカァッと顔を赤くした。
…本当に、わかりやすいやつ。
「お前らのことを知っているのは俺くらいだ。ほれ、吐いちまえよ。」
そう、知っているのは俺くらいだ。
だから、いちいちそんな表情をしていたらすぐに周りにバレるぞ。
促してやれば、リイナは観念したかのように赤らめた顔を俯けた。
「えっと……平門さんが……。」
「ああ。」
「…今度、二人で出かけようって…。」
「良かったな、デートじゃねえか。」
「デート…やっぱりこれって、デートのお誘いですよね!?」
「だろうな。」
「どうしよう…なにを着ていこう……っ」
携帯を両手で大事に抱えながら、嬉しそうな恥ずかしそうなリイナを笑って見ながら……別の感情で見つめていることに、お前は気づかない。
いや、気づかせてはいけない。
この笑顔を、守ってやりたいと俺は確かに思っていたんだから。
そして、その携帯の向こうで忙しい合間を縫ってデートに誘ったんだろう親友の恋路も、純粋に応援していた。
「朔さん……平門さんって、どんな服装が好きだと思います…?」
「いっそおもいっきり露出して誘惑してみたらどうだ?」
「なっ…!!!!真面目に答えてくださいよ!!!!」
真面目も真面目だ。
ただでさえ壱組と貳組で滅多に会えないお前たちだ。
そうでもしないと、なかなか仲が進展しないだろう。
…いっそ、そうなってくれたほうが、こっちは早く諦めがつくんだ。
平門のやつも、しっかりリイナを大事にしてるもんだから、まだ俺にもチャンスが…とつい思っちまう。
本当は平門がリイナに触れる日を恐れているくせに、その気持ちに蓋をして、こうして二人を応援している。
得意の笑顔を張り付けて。
「もう朔さんには相談しませんっ」
「そう怒るなって。あいつのことをよく知っているのは俺だぜ?」
「う……っ」
「泊まりになっても怒らねぇから安心しろ。」
「もう!最低!!!!セクハラ!!!!」
そうだ。
お前はそうやっていればいい。
笑ったり怒ったり照れたり。
そんなお前が、狂おしいほどに好きだったんだ。
そんなお前とこうしている時間が、会話が、たまらなく愛おしかったんだ。
だから例えリイナを見つけたのは俺が先だったとしても、同じくらい大事な親友の恋路を、邪魔するつもりはなかったんだ。
メールや電話のやりとりで順調に恋を育んでいる、そんな二人を黙って見守っていた。