(切甘)もう一度だけ…
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こちらを見てくる朔先輩と、他の人たちの視線も気になってとにかく用を済ませてしまおうと口を開いた。
だけど……。
「え、ええと、あの…平門課長から…」
「用ならあっちで聞いてやるよ、行こう。」
「え!あの……っ」
「つーか喰、仕事中にナンパはよくねーな?」
「はぁ!?ナンパじゃねーよ!ていうかアンタに仕事中の動向について説われたくない!」
「まったくですぅ。」
「ははっ、そうかそうか。んじゃ行くか。」
「えっ…っ…」
「ちょっと聞いてます!?どこ行くんですか朔さん!」
さらに非難を飛ばしてくる二人を適当に流す朔課長に(これもまたすごいけど……)、何故か私は腕を引かれる形で、課長の席までではなく通路を歩かされた。
近くにいた社員たちに何事かという顔で見られたけどそれもお構い無し。
どんどん離れていく壱課、そして掴まれている腕が……っ…本当に、これ以上は無理だってば……っ!
「あ、あの、朔先輩!私、平門先輩から朔先輩に判をもらうように言われていまして…っ…」
「……先輩、か。」
デスクどころか壱課からすら遠ざかるこの状況はあまりよろしくない、のに。
とにかく早く終わらせてしまいたいと慌てて早口でまくし立てると、自販機のある共有休憩スペースまで来てようやく腕は解放された。
「あ……すみません…朔、課長…ですよね…。」
息をついて書類を差し出したけど、何故か本人はそれを受け取らずに私の顔を見つめてきた。
変な顔になっているのかな……と思わず不安になる。
すると、ニッと綺麗な歯を見せて笑われた。
ああ……変わらないな、その笑顔も……見ているとあの頃に戻った気になる。
それくらい、昔の面影そのままだった。
「わざわざサンキューな、平門も自分で来りゃいいのにな。」
「い、いえ……。」
むしろおつかいより、この社内の隅にある休憩スペースに二人きりのほうがよほどつらいです…。
「お前も、いちいち喰のナンパに本気で相手してやらなくてもいいぜ。あいつこの前ツクモにも軽口叩いてイヴァに叩きのめされていたからな。」
「……そうなんですか……。」
「…まぁとにかく、久しぶりだなペコ。高校の時以来、か?」
「……はい……お久しぶり、です……。」
今なら、平門先輩との再会は比にならない……この人との再会の衝撃なんて。
――……朔先輩と私は
高校のときに付き合っていたことがある。
けれどそれはほんのひとときの…短い夢だった、と
あの頃の私はそう整理して終わりにしたはずだったんだ。