(切)愛苦しい
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…そして幾度かの夜を過ごし
今夜も、一人になったベッドで、シーツに残ったリイナのぬくもりと匂いをかき抱いた。
リイナの心ごとすべてが手に入るなら、他に望むものはなにもない。
なにもいらないのに。
これは親友を裏切った罰なのか。
いつかはバレる。あの聡い平門が気づかないはずがないんだから。
その時、リイナはどれだけ傷つくか…いや、もう毎夜俺に抱かれながら平門を想って傷ついているのかもしれないが。
平門との関係が壊れたとしても、おそらくリイナは俺のもとへは来ないだろう。俺を平門の代わりにしないために。
それくらいわかる。それくらいは俺のことも気にしてくれているのを感じるから。
つけこんだのは俺なのに、自分が悪者になって、俺と平門の関係も壊さないように気にしているくらいだから。
「…平門を愛してる、か。」
俺が一番欲しい言葉を、平門はもらっている。
お前から愛してると言われたら、それだけ想われたらどれだけ幸せだろう。
「…愛してるよ、リイナ。」
その言葉は届くことなく、虚空に消えた。
…平門が壱組に来る日。
なんとなく気が向いてゲートまでいくと、そこには話し込んでいる平門とリイナがいた。
そこには俺の入る余地はなく
平門も平門なりに楽しそうにしていて、リイナを想っているのが見てわかる。
平門のそばで、リイナは本当に幸せそうに笑っていた。
(…ああ、そうか。)
もうずっと俺の前じゃはにかむ笑いなのに
平門の前じゃ、あんなに可愛く笑うんだな。
リイナを一番寂しくさせるのも平門なら、リイナを一番可愛くするのも平門。
その顔は、俺が今まで一度も見たことのないくらい
愛くるしい笑顔だった。
絶対に俺には向けられない最高の笑顔だ。
平門のものであるその笑顔を見て、また惚れ直すなんてな。
どこまでも、二人の邪魔者は俺だ。
「…よっ、平門。久しぶりだな。」
「…ああ、朔か。いたのか。」
「ひっでぇな。親友になんて口だよ。」
「誰が親友だ。」
そして、俺は今日も、親友の仮面を被る。
おそらく今夜は、リイナは俺の部屋には来ないだろう。
それでも俺は、今夜も一人、お前を想い待つ。
張り裂けそうな胸の痛みを隠して。
愛苦しい
おわり
2024.01.21