(切)愛苦しい
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……すみません。こんなことを言っても、朔さんも迷惑ですよね。」
「いや…。」
「今日は部屋でゆっくりしますね。…聞いてくださってありがとうございます。」
リイナはそう言って、ソファーから立ってリビングルームを出ようとした。
それを、俺はリイナの腕を掴んで引き止めた。
びっくりして俺を見上げたリイナを見つめる。
(今…この気持ちを伝えたら…どうなる…?)
「…どうかしました?」
リイナが俺を見ている。
俺がお前を想っているなんて、考えもしていない目だ。
当たり前だ、今までずっと悟らせないようにしていたんだから。
この目を、平門を、俺は裏切るのか。
「…我慢、しなくていい。」
「え…?」
「言ったろ、お前らのことを知っているのは俺くらいだ。俺にくらいは、吐けよ。吐いちまえ。」
「………」
俺を見つめていた目が見開かれて、やがて苦しげに歪んだ。
その唇から言葉が紡がれるのを、じっと待った。
「…会いたい…。平門さんに…会いたい……会えないの…寂しい…。」
紡がれたのは、やはり平門への溢れる想いだった。
だんだん涙声になっていくのを、受け止める。。
だが、その瞳はなかなか涙を溢さない。
必死に堪えているんだろう。
「…それを、素直に平門に言えばいいさ。」
「言えません…。面倒がられたくない…嫌われたくない……平門さんと…恋人でいたいから……。」
「…そうか。」
その気持ちも痛いほどよくわかった。
俺自身が、嫌われたくなくてこの気持ちを言えないからだ。
そして今、この気持ちは絶対に叶わないんだと身に沁みた。
「…平門は…そんなことで愛想を尽かすような奴じゃないぞ。お前をちゃんと大事に想ってる。」
「…わかってる…わかっています…けど…デートがだめになるの…もう何度目だろ……。」
けど、伝える勇気が出ない…それもわかっている。
「ちょっと…だけ…疲れちゃ…」
最後に溢した本音を、お前は慌てて隠した。
「…なんでも、ないです。聞いてくださってありがとうございます。」
必死に作った笑顔は、痛々しくも…愛くるしかった。
そんな本音すら隠してごまかそうとするんだな。
それでも平門の恋人でいたいと。
あんなに可愛く笑えるリイナにこんな想いをさせる平門を…こんな笑顔をさせる平門を…それでもリイナの心を独り占めする平門を初めて、恨めしく思った。
想いを伝えられないなら、それでも少しでもお前の心に入り込めるなら、どんな形だっていい。
俺は狂ってしまったのかもしれない。それでも。
掴んでいたままの腕を引き寄せ、リイナを抱きしめた。
「!?」
「…なら、俺を利用しろ。」
「り、利用…って…あの、離して……。」
「寂しいなら埋めてやる。いくらでも傍にいてやる。だから、そんな顔をするな。笑っていろ。平門のためにも。」
これはもう、告白も同じだ。
だが決定的な言葉は言わない。
それが俺のズルさだ。
弱っているリイナにつけこんでいるんだから。
このドロドロした気持ちは、決して綺麗なものじゃない。
俺はいま、俺を信用してくれていたリイナも、平門のことも裏切ろうとしている。
抱きしめた体は温かくて柔らかくて、ずっとこうしていたいくらいだ。
だが、身動ぎしたリイナの僅かな抵抗を感じて、いったん体を離すと、その頬に手を添えて熱く見つめた。
リイナも黙って俺を見つめている。
「…俺のせいにすればいい。」
そう言って、俺はリイナに口づけた。
意外にも抵抗はされず、リイナはじっと目を閉じてキスを受け入れた。
俺のせいにすればいいという言葉を、言い訳にしたのかもしれない。
それでいい。
初めて触れたその唇は柔らかくて愛おしくて、このまま時間が止まって欲しかった。
けど時間は無情に過ぎていく。
少しでもリイナの俺を受け入れた気持ちが変わらないうちに、俺はリイナの腕を引いて、半ば強引に部屋へ連れ込んだ。
困惑する彼女をそのままベッドへ引き込み押し倒すと、さすがにリイナは
「冗談なら笑えませんよ…?」
とあくまで冗談で済ませようとしたが、そうはいかない。
「寂しさを埋めてやる」
その言葉に揺れたのか、リイナはそれ以上逃げようとはしなかった。
それが寂しさにつけこまれた気の迷いだったと言われればそれまでだが……
何度も口づけをしながら平門のために決めた服に手をかけて脱がし、平門のためにセットした髪を乱していく。
初めてリイナを抱いた時、リイナは俺を受け入れながら、やっと涙を流した。