(切)愛苦しい
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それが狂ったのは、リイナが休みの日…おそらく平門とデートの約束をしていたはずの日だった。
多分泊まりになるだろう…とは、俺も覚悟をしていた。
平門も平門なりにリイナとの関係を深めたがっていることを、平門から聞いて知っていたからだ。
それなのに、この前は幸せそうにしていたリビングルームで、今度は落ち込んでいるリイナを見かけたときは、その表情で察した。
「…リイナ、どうした?」
「…あ、朔さん。」
リイナは俺に気づくと、悲しげに、だが無理に笑顔を作った。
「デート、だめになっちゃいました。」
「…そうか。」
「急な仕事になったんだって。仕方ないですよね。」
平門のために悩んで選んだだろうお洒落な服装、一生懸命に準備をしたんだろうヘアメイクで落ち込むリイナに、胸が痛んだ。
平門もつらいはずだ。
二人とも楽しみにしていたんだろう。
それはよくわかっている。
ただでさえ艇長の仕事が多忙なことも、同じ立場だからよくわかる。
だから、この日のためにどれだけ仕事を調整したかも、にもかかわらず急な仕事が入った大変さも理解している。
だが、目の前で沈んでいるリイナを見ていると、どうにも切なくなる。
そして、その裏で実はデートがなくなったことに安堵している醜い自分がいることにも気づいていた。
少なくとも、今日リイナは完全に平門のものになるわけじゃない、その事実に。
「すみません、だめですよね。お仕事なのに落ち込むなんて。
艇長の恋人失格だな、なんて。」
あくまで笑おうとするリイナが……痛々しくて、愛しい。
「…失格なんかじゃねえって。残念に思うのは当たり前だろ。恋人なんだから。」
「でも……これからも、こういうこと、あると思うし…慣れておかないと……。」
…そう、何度自分に言い聞かせて、なかなか会えない寂しさに言い訳をしたんだ?
(…俺だったら…)
せめて相手が俺だったら、同じ多忙な身でも、毎日艇で顔を合わせることはできるのに。
(だめだ、考えるな。)
なのになんでお前は、毎日会える俺より、なかなか会えない平門を選んだ。
(考えるな。)
そんな思いまでして、なおまだお前は平門の恋人でいることを選ぶのか。