(甘)フォーチュン・ラバー
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「うわぁあ、キレイだねぇ!」
「そうだね、潮の香りも新鮮だし!波の音が落ち着くね。」
久しぶりにもらったお休みで、私は與儀に誘われて街に降りた。
海に浮かぶ桟橋をぶらぶらと歩いていると、時折吹く潮風が髪とスカートをなびかせる。
普段は大陸中を飛んで回っているから、こんなに広くて大きな海を間近で見られる機会はあまりない。
だから私と與儀は二人で思い切りはしゃいだ。
特に與儀はすごく嬉しそうで、満面の笑顔を見ていると私も嬉しくなる。
與儀に誘われたこと自体嬉しくて、久しぶりの個人的なお出かけにはかなり浮かれたけど、これなら誘いに乗って良かったって思う。
「買い出しのまえに来てよかったぁ!ね、リイナちゃん!」
「うん!!」
海に沿った広場には海に浮かぶレストランやカフェがあって、家族連れやカップルもたくさん来てる。
そこを二人並んでぶらぶらしていると、まるでこの世界には闘いなんかないような気持ちで心が落ち着いてくる。
たくさんの人たちの笑顔とはしゃぐ声が響く世界。
平和でゆったりとした時間。
ここにいると、まるで自分たちが身を置いている場所のほうが夢の中みたい。
夢だったらいいのにな。そしたら、この人たちの笑顔はずっとずっと先の未来まで約束されるのに。
……私たちが、約束しなきゃね。みんなの笑顔と平和は守るって。
(……それにしても………)
「なんだかここ、カップルが多いね?」
海辺は家族連れもたくさんいるけど、桟橋にはカップルの数も多い。
みんなそれぞれパートナーと手を繋いだり、腕を組んでくっついて歩いたりと、とても仲が良さそう。
ここって有名なデートスポットなのかな?
その様子を、與儀はチラチラと横目で見ながら、なにやらウズウズした表情で落ち着かない。
私はなんとなく察して……思いきって、與儀に手を伸ばした。
「手、繋ごうか?」
「…いいの!?」
「もちろんだよ!」
瞬間、與儀に笑顔が浮かぶ。
やっぱり繋ぎたかったんだね、言ってくれたらいいのに。
でもきっと照れくさかったんだろう與儀の気持ちを考えたら、くすぐったかった。
しっかりと指を絡めて繋げば、私たちも周りのカップルさんたちに自然と溶け込む。
艇ではあまり、人前でこういうことはできないから。
ここにいる人たちは、私たちを輪だとは知らない。
みんなと同じただごく普通のカップルに、見えているんだよね。
きっとただ約束してデートスポットに遊びに来たカップル………そんな人生も、あったんだよね。
「こういうの、ちょっと憧れだったんだぁ。リイナちゃんと手を繋いだりして、普通のデートをするの。」
「デート…そっか、これってデートかぁ…」
「そうだよ!」
デート、そう思うとなんだかくすぐったくて。
幸せな気持ちが、どんどん溢れてくる。
繋いだ手のぬくもりがじんわりと温かい。
「本当は俺から言いたかったんだけど…恥ずかしくて…。」
「そんな、恥ずかしがらなくていいのに。嫌じゃないし…私も、與儀と手を繋げて嬉しいよ…?」
「リイナちゃん…。俺、いま人がいなかったら抱き締めてるかも……。」
「あはは、あとでゆっくりね。」
だって私たちは、こういう普通のカップルデートはなかなかできない身だけど………ずっと一緒にはいられる。
帰る場所だって、一緒なんだから。
……ね?與儀。
「リイナちゃんの髪、風になびいてすごーくキレイだね。」
「そう、かな?」
「うん。でも…スカートは気をつけてね…?」
「あ…うん。」
私は繋いでいないほうの手で乱れた髪を直したあと、風に揺らいだスカートを抑えた。
……髪を褒められるなんて嬉しいけど恥ずかしい。
與儀は時々、こっちが照れるようなことをサラッと言う。
ちょっとは慣れてきたけど、いちいちドキドキしていること、わかっているのかなぁ?
わかっていないんだろうな…。
だから私も、與儀をドキドキさせたくなっちゃうの。
もっとドキッとして、ドキドキして、どうしようもないくらいに、なってくれたらいいのにな。
私がずっとそうなんだから。
手は繋いだはずなのに、與儀はまだ時々チラチラと横を見たりして落ち着かない。
景色を見てるのかな?とも思ったんだけど。
もっとこっちを向いて、私を見てくれないかな…って思いながら、與儀の横顔を見つめてみる。
すると、いきなりギュッと握る手が強くなって、体がくっついちゃうくらいに引き寄せられた。
(……わわ…っ)
ぴたりとくっついてしまい、目の前に伸びたふたつの影が寄り添う。
またドキドキさせられた……悔しいなぁ。
「ここでいいかな?」
「うん。」
だいぶ歩いたから喉が渇いて、ちょっとお茶をしようかと、海がよく見えるカフェのオープンテラスに席をとった。
せっかくだから海に浮かぶレストランもよかったけど、ランチでもお高めで…さすがに、さりげなく遠慮した。
與儀は絶対に自分が出すってきかないだろうし…高いレストランなんて、気が引けちゃうよ。
「席がとれてよかったね。じゃあ俺、飲み物とか買ってくるね。」
「うん、待ってるね。」
時間的に混雑してきたから先に席をとることにしたんだけど、無事に空いていて良かった。
2人席の片方の椅子に座って與儀の背中を見送ってから、海に目を向けて眺めてみる。
水面に光る日差しが眩しかった。
次はいつ、こんな時間がとれるかわからない。
毎日忙しくてお休みを取るのもやっとだし、だから二人揃ってなんてなかなかない。
だから與儀も誘ってくれたのかもしれない。
貴重なお休みを私と過ごそうと思ってくれたのが嬉しい。
だから、めいっぱい楽しみたいんだ。
そう思って楽しい気持ちにひたっていたのに、突然私の前に男の人が二人、立ちはだかった。
見上げてみたら、ニコニコした笑顔を浮かべた二人組が私に愛想よく笑いかけていた。