(切甘)同じ空を泳ぐ
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それから、騒ぎを聞き付けてやってきた闘員たちに、床にのびていた男を引き渡した。
うっかり任務中にラブシーンをしてしまった……けど
みんなにバレないよう、こっそりと後ろで手を繋いだ。
頑張ったから、これくらいは許してください!!
リイナちゃんを研案塔で診てもらったあと、一緒に壱組に戻って打ち上げの食事会をして…。
そのまま一晩壱組に部屋を用意してもらったけど
俺はその日初めて、リイナちゃんの部屋に入った。
「はー……。」
「…あんまりじろじろ見ないで。」
「あ、ごめん…ツクモちゃん以外の女の子の部屋に、あまり入ったことがなくて…。」
「…へー。ツクモちゃんの部屋に入ったんだ?」
「え?え、違うよ!?やましいことは何も!!」
「ふふ、わかってるよ。…けど、ちょっと焼きもちだなあ…ふうん…。」
「え、焼きもち…??」
「うん。…妬くでしょ、それは。私も貳組での與儀を知らないんだもの。」
「え!?」
焼きもち…妬いてくれたってこと!?俺に!?
……それは…ごめん、ちょっと嬉しいかも…。
リイナちゃんも、俺の貳組での生活が気になってくれているんだ。
動揺する俺にリイナちゃんは可愛く笑った。
可愛らしいカバーのかかったソファーに慣れた仕草で腰かけて、おろした足首には包帯が巻かれている。
…まだ痛いかな…。俺をかばったせいなんだよね。
俺のそんな視線に気づいたのか、リイナちゃんはまた笑った。
「もう大丈夫だよ。」
「本当に?また無理してない?」
「今度は本当だってば。名誉の負傷だし。」
歩けないわけではないみたいだけど、やっぱり歩くときは少しヒョコヒョコとしている。
無理をさせたくなくて部屋まで運ぶっと言ったけど、それは断固拒否されてしまった。
…ちょっと、やってみたかったな、お姫様抱っこ…。
普通の恋人同士ならいつでもできることが、俺たちはなかなかできないから。
こうして二人きりの時間を過ごすことも…
しかも、部屋で二人きりなんて、今までなかった。
だから、妙に意識しちゃって……けど、うかうか時間が過ぎたらもったいない。
俺はそわそわしながら、ゆっくりソファーに近づいて、リイナちゃんの横に腰を降ろすと、改めて向き合った。
「リイナちゃんは普段、この部屋で生活してるんだね~。」
「うん、そうだよ。」
「俺と電話する時は?」
「だいたいソファーかベッドだね。」
言われて、その様子を想像してみる。
ベッドやソファーに腰かけて、電話で笑ったり驚いたりする姿を。
棚に置いてある小物類が、きちんとしていなくてちょっと雑多に置かれているところとか
すごく彼女を感じる。
実はあまりしっかりしていない、ドジでうっかりな女の子。
……可愛い。
リイナちゃんは、まだ本当の自分を見せるの、ちょっと不安みたいだけど。
俺はしっかりしているから好きになったわけじゃないし。
しっかりしているところも魅力だけど、それだけじゃないし!リイナちゃんの魅力は!
ドジなところも、うっかりなところも可愛い。
ていうかリイナちゃんなら、なんでも可愛い。
これからもっと、色んなリイナちゃんを知っていくんだ。
今日はサヨナラじゃなくて、明日の朝も一緒にいられるから…
お休み、おはようも言えるんだ。
もしかしたら、明日の朝起きたら寝癖がついていたら…そんなところ見られちゃうかも。…見たいなぁ。
次にいつ二人きりの時間があるかわからないし…今日、いっぱい関係を深めていけたら…。
「…ねぇリイナちゃん。」
「なに?」
「キス、していい?」
「…えっ!?」
リイナちゃんはぶわぁっと赤くなって、すごく動揺した表情をした。
今までにはあまり見たことのなかった、すごく人間味のある女の子らしい反応が可愛い。
本当にしっかりしてるように見せていたんだなあって。
「ちょ、與儀、待っ…」
「…ていうか、もうしちゃう。」
「んっ…」
近づく俺の顔にぎゅっと目蓋を閉じて、力の入っている唇にチュッとキスをした。
俺もあまり慣れていないので、不器用だけど。
温かい…柔らかい唇の感触。
実は俺たち、まだ軽いキスを何回か…しか、したことがないので。
それも会ったときにこっそりと、って感じだから。まだキスのタイミングとか、なかなかわかっていないんだけど。
…もっと、触れたいな。
「…もっとしていい?」
「ぇえ!?」
「もう一回…」
「…う、ん……。」
俺の、あまりスマートとは言えないキスのお誘いをリイナちゃんは赤らめた顔のまま受け入れてくれる。
そっと抱き寄せて身体をくっつけてから、俺はまた可愛い唇にキスをした。
今度はゆっくりと、感触を楽しむように唇を合わせる。
(…幸せだぁ…)
好きな女の子とキスをしてる。
こんな幸せがあるなんてちょっと前だったら想像できなかったな。
いつかこのキスにも慣れて、顔を赤らめることがなくなっても、飽きることはないんだろうなぁ。そう思える。
自分がこんなに積極的だとは思わなかった。
俺も、今まで知らなかった自分と出会った。
リイナちゃんとこうならなかったら、ずっと知らないままだった。
「……は…」
離れたときに、無意識なんだろうけど…リイナちゃんが少し吐息を溢したの…なんていうか、こう…グッときた。
「もう一回する…?」
「え、も、いい…!心臓がもたない…!」
……可愛い。
俺のことを好きでいてくれているんだなぁ…って…うん、幸せ。こんなに可愛い子に想ってもらえて、大事にしないとバチが当たるね。
すごく恋人っぽいことしてる。いや、恋人なんだけど。
じたばた暴れたいくらいに幸せ。
それから、また改めて向き合って、自分の気持ちを伝えた。
「…ごめん。もう離れているのがつらいなんて言わないから。」
「…言っていいよ?寂しいときはおもいっきり寂しいって。私こそごめんなさい、あんなこと…。」
「ううん、リイナちゃんがどれだけ大事かよくわかったから。」
「私も本当は、寂しいときもあったよ。與儀に会いたくて会いたくて…。與儀に好かれたくて、せめて会ったときくらい完璧な私でいたかったの。」
「…そっか。」
寂しい気持ちも同じだったんだね。
なら安心させてあげなきゃ。
好きだから、どうしたって離れている間、寂しい気持ちは湧いてくるだろうけど。
その分、不安にだけはならないで、素直に寂しいよ、って言えるように。
それを、受け止められるように。
俺も、安心させてほしい。これからは不安にならないように。
俺はそっとリイナちゃんの手を握った。
「俺はもうリイナちゃんが大好きだよ!この気持ちは絶対に変わらないよ。」
「私も、與儀が大好き。次は與儀の部屋に遊びに行かせてね。」
「う、うん。」
リイナちゃんが俺の部屋に…か。
それはそれで緊張するなぁ。
というか、今の状況もだけど。
リイナちゃんの部屋で、二人きり。
明日までは俺は壱組で一緒にいられる。
なら…次にいつこんなふうに二人きりになれるのかもわからないし…。
そう思うと、おもいっきりこの後の展開に期待しちゃってる。
誘うのも緊張する……うまい誘いかたがわからないけど。
俺はストレートにしか言えないから。
…お願い、受け止めて?
「…リイナちゃん。」
「うん?」
「……今日…ここに、泊まっていい?」
「……え?」
「足首、無理をさせないし……。」
「え…ええ!?」
それは……下手したら無理させる可能性のあること、しよう?って意味で…。
言ってしまった…どうしよう、どうしよう…。
断られたら…って怖いけど。
それはそれで、今はそのタイミングじゃないってことで、強引にはしないけど。
意味はしっかりわかっているのか、半ばパニックになっているリイナちゃんを抱き寄せて、少しでもその気になってほしくてもう一度キス。
今度は力の入っていない柔らかい唇に自分の唇を押し当てて、ドキドキしながら抱き上げてベッドに運んだ。
やってみたかったお姫様抱っこ…やっぱりすごく良い。
腕にかかる重みが、すごく愛おしい。
絶対に力を抜けない、大事にしなくちゃ、って気持ちになる。
リイナちゃんは動揺しながらも、今度は嫌がったりはしなかった。
じっと俺に抱かれてくれてる……ねぇ、期待しちゃうよ…?このまま、今夜もっと深い仲になれるって。
「よ、與儀……。」
「…だいすき。」
真っ赤になりながらも拒まないリイナちゃんを横に寝かせて、受け入れようとしてくれているんだな、ってその姿を愛おしく思いながら
ふたりきりの夜は更けていった。
こうして俺たちは、これからも愛を深めていく。
たまにしか会えないけど、それでも好きでたまらないから。
これ以上は、どうなったかは俺たちだけの秘密。
でも、とても素敵な夜になったよ。
窓の外は綺麗な星空に月が浮かんでいた。
おやすみ、って言って二人で眠った夜
朝起きたら、隣で寝ていたリイナちゃんを、俺はゆっくりその寝顔を目に焼き付けてから、そっと優しく起こした。
リイナちゃんはすごく寝ぼけた顔であくびをしながら、俺に気づいて恥ずかしそうに「おはよう」って笑った。
その顔がまた可愛くて、俺も
「おはよう、リイナちゃん」
て返しながら、朝一番のキスをしたんだ。
おわり
2023.10.06
お読みいただきありがとうございました。
いつも同じ貳組同士での恋愛を書いてきたので、せっかく壱組もあるから壱組ヒロインと遠距離恋愛はどうだろう?と思い、書いてみました。
遠恋といえばやはり切なくなりますよね。
ここでチラリとヒロイン視点を。
與儀のことがずっと好きだったヒロイン。
朔さんに貳組への遣いを頼まれて、密かに與儀くんに会える…とドキドキしながら貳組に行き、與儀くんのミスだから、もしかしたら落ち込んでるかも?と用事が済んですぐ與儀を探して回っていたので、見つけたときはすごく嬉しくて、でもやはり落ち込んでいたので心配で会いたかった気持ちを抑えつつ、どう話しかけるか迷い、勇気を出して話しかけて、でも恥ずかしいので当の與儀には「ついで」だとごまかしています。
與儀と同じく
「隣に座っていいかな?図々しくない?…座っちゃった、恥ずかしい、深読みされたらどうしよう、でもなんか與儀くんの様子がおかしいから心配だし…」
と気持ちがバレることにヒヤヒヤしながら話してるんです(*´∀`)
好きな人には良く見られたくて背伸びしたりしますよね。
恥ずかしい自分の部分は知られたくない、と。
でも與儀はとにかくヒロインが大好きなので、ヒロインの良い部分はもちろん、マイナスな部分すら長所だと受け止めます。
少しづつ素を出していくヒロインが可愛くてしかたないでしょうね。
ヒロインも自分の嫌な部分も愛してくれる與儀に幸せを感じるでしょう。
ちなみにですが、話に出てくる「月」「星」には、同じものを共有したい、の他にとある意味が含まれています。
冒頭の與儀の
「星が綺麗だね」は
「あなたに密かに恋しい想いを抱いています」
という意味があります。
会いたい、会えなくて寂しい、けど言えない
そんな與儀の気持ちが籠もっています。
「好き」は言える仲になったのに、「寂しい」はまだ言ったら相手の負担になる気がするから素直に言えない。
まだ関係が浅い二人ならではの心情です。
ヒロインが月の話を持ち出したのは、自分と與儀が見ている景色(感じているもの…與儀は寂しくても好きだから一緒にいたいけど、ヒロインはつらいなら好きだけど離れたほうがいいのではないかと思ってしまった)が違ってしまっていることを内心感じつつ、空は繋がっていることを確認したかったのもありますが…
有名な
「月が綺麗ですね」
(あなたを愛しています)
の意味になぞらえて、ヒロインは無意識に想いを込めて月の話をしました。
先日與儀が見た星空が自分は見えなかった事を覚えており、星の話の深い意味は気づいていませんが、同じものを共有したかった與儀の気持ち(意味を込めた與儀の恋心)は感じていたので
「私も與儀が好きだよ」
と伝えたかった。
もしも今、與儀も同じく月を見られる状況にあるなら、きっとまだ自分たちは気持ちを繋げていられる、と願いながら。
だけど、もしも見られない状況ならば…お願い、見えていてほしい。
二人が違う景色に生きていることを否定させて。
けれど與儀は月が見えない空を飛んでいたので、やはり同じ空間を共有することはできないと思い知った。
冒頭の星が綺麗(與儀の、好きだけど寂しい、でも一緒にいたい)を、ヒロインは星を見る(気持ちに気づく)ことができずそのまま「見えない」と返した
(気づかなかった)
中盤の月が綺麗(ヒロインの、好きだけど離れるべきか、でも本当は離れたくない)を、與儀は月を見る(気持ちに気づく)ことができずそのまま「見えない」と返してしまった(気づかなかった)
二人はお互いの気持ちの本当の意味に気づけないまますれ違ったわけです。
「つらい」をそのまま受け取ったため、その中の「でも好き」にヒロインは気づかず
「距離を置こう」をそのまま受け取った與儀は、その中の「いやだと言って欲しい」に気づけなかったのは、言われたことをそのままの意味にしかとれなかった恋愛経験が未熟な二人ならではのすれ違いです。
もしお互いに無意識に込めた想いにお互いが気づき、本当は月や星は見えていないけど、「見えているよ」と優しい嘘で相手の気持ちに「気づいているよ」と寄り添えたなら、まだすれ違いは回避できたかも。
與儀の「好きだけどつらい」も、ヒロインの「距離を置くのはいやだと言ってほしい」も、相手を想うがゆえの気持ちでありながら、相手に押し付ける一方的なわがままでもあるので、そのわがままの中の想いに気づき受け止めて寄り添うにはまだ二人は絆が足りない部分がありました。
特にヒロインはまだ本当の自分を見せるのを怖がっていたので、「本当は離れたくないから気づいて」と言葉とは裏腹のわがままを與儀にぶつけられなかったんです。
後々、自分から突き放したことを激しく後悔してずっと泣いていました。
つらいと言われてどうするのがいいのか正解がわからずムキになってしまったのも未熟さゆえです。
また感情的に裏腹なことを言いそうで、自分からは連絡するのが怖かったので、與儀からやり直したいと連絡をくれるのをずっと待っていました。
與儀も怖くて待っていたのでこれもお互い自分から動く勇気がでなかった未熟さがありました。
つらいと言った素直な與儀と、気持ちをぶつけられなかった素直じゃないヒロイン
ただ、ずっと後ろ向きに考えていた與儀に対し、連絡がこないことで不安になりながらもこのままではいけないと思ったヒロインは、本当の姿が見たいと言った與儀の言葉を思い出して、勇気を出して向き合ってみよう…と決意した違い。
ヒロインは本当はドジでちょっとだらしないけど、元々しっかりした部分は持っているので與儀に見せていた部分も偽りの姿ではないのです。
最後に月と星(重なったお互いの恋心)が浮かぶ同じ空を泳げた二人
ひとつ大きな試練を乗り越えた二人は、これから少しづつ自分の想いとわがままをぶつけつつ、素直に寂しいと甘えられるようになっていき、お互い相手の気持ちやわがままを受け止めて、深い絆の恋人同士になっていくと思います。
解説が長くなりましたが、ここまでお読みくださりありがとうございました!
ぜひ二人の心情を想像しながら楽しんでいただけましたら幸いです!!
本編には書いていないヒロインの恋心も!!
雨衣